FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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恐怖と不安
前書き
なんだか一人で勝手に忙しくして作品を進める時間を取れなくしているような気がしてきた今日この頃。
シリルside
大きな爆発音が聞こえたと同時に真上にある蓋を押し開ける。そこから顔を出して外を見るが、予想していた通り敵の姿はない。それを確認してから俺たちのグループは地下道から地上へと登る。
「よし、やっぱり全員出払ってる」
全員が・・・といっても10人ほどの少数部隊ではあるのだが、全員が国王がいる城の敷地の中に入ったにも関わらず敵が誰も襲ってこない。そこを見ると、あの爆弾作戦は功を奏しているといっていいだろう。
「相手を全員倒したってことか?」
「倒してはないと思いますよ。あの爆弾魔水晶の火力じゃ」
ユウキさんたちが持っていた爆弾魔水晶は俺たちがフィオーレで見てきたものよりも魔力が弱い。恐らく一般市民である彼らが集められる魔水晶ではそれが限界だったのだろう。だが、おかげで何の躊躇いもなくそれを使うことができたので、今回はよかった。
「じゃあなんで相手は誰もいないんだ?」
「国王が本当に未来予知をできると仮定した場合、それを逆手に取ってやればいいだけなんですよ」
「つまり・・・どういうこと?」
俺の言いたいことがいまいち伝わらなかったようで皆さん顔を見合わせている。なので、簡潔に説明することにする。
「うちのシャルルも未来予知ができるんですが、ある程度のところまでしかわからないんです。それも見えるのは大きな部分とヒントになりそうなものしか見えない。だから【地下からの爆弾襲撃】っていう大きな部分を作り出して、相手の予知範囲を限定したんです」
爆弾が使われるとなればそちらに予知は集中するはず。そうなれば城の敷地内に敵が入ってくるという些細な予知は打ち消される可能性が高い。その作戦のためにチームを分けて大量の爆弾魔水晶を使ったというわけだ。
「なるほど・・・よくそんなことが思い付いたよな」
「味方に同じ能力を持っている奴がいたからこそですよね」
もしシャルルがいなかったらこんな方法に辿り着くことはできなかった。彼女からよく未来予知の話をされていたからこそ、思い付くに至ったのかもしれない。
「さて、納得してもらえたところで・・・」
城の方へと目を向ける。城はフィオーレにあるようなものとは異なり、東洋で見たことがあるような造りになっていた。そうなると中の様相も変わってくるとは思うけど、特に問題はない。
「さてと・・・王様はどこにいるのかな?」
目を大きく開き中の様子を透視する。すると、予想していたよりも中に人がいないことに驚いてしまった。
「え?まさかほとんど人員をーーー!!」
どこにバリーザウィッチがいるのかを見ようとしたら、突然目に激痛が走り目を押さえる。
「どうした?シリル」
「な・・・なんでもないです」
あの時から目の調子が思わしくない。別に日常生活に支障が出るようなことはないのだが、今までみたいに目を使うとこんな風に激痛が走って動けなくなってしまう。これは迂闊にこの力を使えないな。滅悪魔法といい、俺の魔法制約多すぎないか?
「バリーザウィッチは中にいるはずだから、とにかく進もうか」
「はい、そうしましょう」
目の痛みも引いたところでユウキさんを先頭に城の方へと向かっていく。まだ調子はよくないけど、目の魔水晶を使わなければ問題はない・・・と思う。
「ふぅ・・・」
しかし、先程の中の様子はどうしても違和感がある。いくら爆弾を使われる予知が見えたからといって、城の守りを削って向かわせたのだろうか?もしそうだとしたらよっぽど自分の力に自信を持っているということなんだろうけど
・・・
そう思いながら進んでいくと、突然横から微かな音が聞こえ、そちらに視線を向ける。
「危ない!!」
「「「「「!?」」」」」
俺が声を出すと全員がすぐにその場に立ち止まり、同じ方向を見る。その視線の先から飛んできたものを見て、全員が倒れるようにその場に伏せた。
「矢?」
「伏兵がいたのか」
草むらに隠れているのは弓矢を操る部隊。どうやら全員が出払っていたのではなく、城の敷地内に人を配置してこちらを襲撃しようと考えていたみたいだ。
「どうする?シリル」
「う~ん・・・」
人がそんなに多いわけではないようだけど、どこに敵が隠れているのかは検討もつかない。それに、他にも潜んでいるのだとすると、それを何とかするのが得策ではあるんだけど・・・
「すみません、ここは任せて良いですか?」
「おぉ!!任せてくれ!!」
ウェンディたちを使っての爆弾での襲撃作戦がうまく行っていれば問題ないけど、もし相手が予想外に回避して交戦になっていたりすると、時間がかかりすぎると兵隊が戻ってくる可能性がある。
ここは俺とユウキさんだけでも先に行って、国王を倒してしまうのが最優先だ。
「行きますよ、ユウキさん」
「あぁ、わかった」
この辺にいるであろう伏兵たちは全て任せて、俺とユウキさんで国王を捕らえる。バリーザウィッチさえ捕らえてしまえば相手も戦意を喪失して戦うことはできないだろうし、依頼も無事に完結できるってわけだ。
「シリル!!俺たちだけでバリーザウィッチを倒せるのかよ!!」
依頼の完遂も時間の問題だと思っている俺とは違い、ユウキさんは不安げな表情を浮かべていた。無理もない、だって彼らは今まで散々相手にいいようにされてきたのだから。
「大丈夫ですよ。言ったでしょ?俺結構強いんですよ」
「それはわかるよ。でも、バリーザウィッチの力は俺たちでもわかっていないんだ」
今まで表舞台には出てこなかったバリーザウィッチの魔法などは完全にベールに包まれている。本気になった時の相手がどれだけの力を持っているのかわからない状態で、安心しろと言われても納得できるわけはないよね。
「それでも大丈夫だと思います。いざとなれば、とっておきもありますから」
「とっておき?」
ニヤリと笑みを浮かべながら左腕を押さえる。それを見て彼も何かを察したのだろう、一瞬驚いた顔を見せた後、小さくうなずいてみせた。
ウェンディside
「うわ~・・・これはひどいね~」
地下通路から街の中に出ると、そこには悲惨な光景が広がっていました。いや、私たちがやったことなので、そんな言葉で済ませていいわけはないんですけど・・・
「でも相手の兵隊たちはほとんど倒してるみたいよ」
「うん。それに、誰も死んでる人がいないのはよかった・・・よね?」
相手の部隊と思われる方々は爆弾魔水晶によってボロボロの姿で倒れていたけど、全員一命は取り留めているみたいです。爆弾魔水晶《ラクリマ》の威力がそこまで高かったわけではなかったことが幸いしたみたいですね。
「皆さん、何人かはこの人たちの治療をお願いします!!残った人は私たちに付いてきてください!!」
いくら闇ギルドの人とはいえ殺してしまうのはさすがに妖精の尻尾の一員として許されません。ただ、ミハエルさんとジェリーさんのチームがうまくいっているかを確認しなければならないので、治癒魔法を持っていても私はここに残ることはできません。
なので、数人にここは任せて、残りの半分ほどの人数を引き連れて近くにいるミハエルさんとジェリーさんのチームの様子を見に走り出したところ・・・
「お!!」
「あら」
すぐ先の十字路でお二人のチームと合流することができました。
「ミハエルさん!!ジェリーさん!!」
「あんたたちも来てるってことは?」
「あぁ、うまくいったよ」
どうやらお二人のチームも私たちのチームと同様に相手の殲滅を成功させたようです。ここまで作戦がうまく行っているのはすごいこと・・・なんだけど・・・
(こんなにうまくいくと、本当にシリルはどうしちゃったのって思っちゃうよね)
普段からやっている作戦であれば、うまく行くのは想定できます。でも、今回の相手を殺めてしまうかもしれないような作戦は今までやったことがありませんでした。それなのに、ここまで完璧にことが運んでいくと不安な気持ちが大きくなってしまいます。
「どうした?ウェンディ」
「大丈夫?」
二人が心配そうな顔で私の顔を覗き込みます。たぶん・・・私の顔は不安でいっぱいな表情になっているんでしょうね。
「いえ・・・大丈夫です」
取り繕っているのがわかるほど・・・作っている自分ですらひきつっているのがわかる笑顔で答えると、二人もこれ以上は詮索しませんでした。
「じゃあここからは・・・」
「えぇ。ユウキに合流しましょう」
相手の大きな部隊は倒しました。残るはバリーザウィッチを捕らえることだけ。
(どうか・・・何も起きていませんように・・・)
本来ならいらないような心配をしてしまう私・・・不安でいっぱいになっている胸を抑えながら、私たちはお城目指して走り出しました。
後書き
いかがだったでしょうか。
思ったより一話で進む範囲が多いことに気付いてしまった。
あと五話くらいで完結しそうだけど、Bパターンに入るともう何話か追加されるのでどちらのパターンでいくか迷い中です( ̄▽ ̄;)
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