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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝

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第15話 姉上と正宗

 
前書き
主人公の人材探しまでの旅まで、あと数話位かかると思います。
主人公の姉である劉岱は史実で袁紹とは凄く仲が良かったと言われるので、幼少期に接点を持たせたかったので、書いてしまいました。 

 
仕事に忙殺され、弟の正宗と話をする暇もない。

そんな私が久方振りの休みというのに・・・。

正宗はどこに行ったのかしら。

「おお、燐ではないか。何をうろうろしておるのじゃ?」

背後から声を掛けられたので、振り向くとそこにはお爺々様が立っていた。

「お爺々様、正宗と話でもと思いましたが、姿が見えなくて・・・。正宗が洛陽に来て以来、仕事が忙しく会話らしい会話も出来てないので、今日こそはと意気込んでいたのですが・・・」

結果は、空振りでした。

「正宗か・・・。多分、この時間なら、麗羽と稽古をしていると思うぞ。洛陽郊外の森に行くと言っておったな」

「麗羽とは誰です?初めて聞く名ですが・・・。正宗と仲の良い友達ですか?」

私は洛陽に来て間もない弟が既に友達を作っていたことに驚くとともに、そのことを知らない自分に少し寂しさを感じました。

「袁紹じゃよ。袁成殿の忘れ形見じゃ。それと燐、麗羽は真名じゃから気をつけよ」

「ご注意痛み入ります。袁紹というと、汝南袁氏の者ですね。私塾で仲良くなったのですか?」

袁紹という名を聞いて、私は複雑な気持ちになっていた。

袁紹と言えば、あまり良い噂を聞かない。

叔父の袁逢と袁隗に甘やかされて育ち、この洛陽では暗愚な人物で通っています。

そんな者と私の弟は関わっているのかと思うと、弟のことが不安になってきました。

「お爺々様、何を平然としておいでなのです。袁紹は如何に名門の出とはいえ、暗愚な人物です。そんな者との交流を何故、黙っておいでになったのですか」

私は、お爺々様に不満をぶつけました。

「暗愚だったの間違いではないのか?麗羽は本当に頑張っておると思うぞ。少しでも、正宗に釣り合える人物になりたいと思っての」

お爺々様は私の顔を怪訝な顔で見ていました。

何ですって、あの袁紹が正宗に釣り合えるように頑張っている?

それって・・・。

「も、もしかして、袁紹は正宗と恋仲なのですか?」

私の予想が外れくれればと思いつつ、お爺々様に確認をとりました。

「儂はそう思っておるがの。あの2人は四六時中、一緒だからの。正宗は私塾で麗羽の勉強をみて、放課後は2人で武術の稽古をしておるみたいじゃしの。ちと、早い気もせんこともないが、微笑ましいものじゃ。燐よ麗羽の前で、暗愚などと言うてやるなよ。あれだけ一生懸命なのじゃから過去のことはどうでもよかろうて」

お爺々様は好々爺然として表情で、私に言ってきました。

「な、何ですってぇーーー!それは本当なのですか?お爺々様!」

私はお爺々様に詰め寄って、再度確認しました。

「急に五月蝿いではないか!燐、はしたないぞ」

お爺様は私の声が五月蝿かったのか、愚痴りました。

「それより、袁紹と恋仲というのは本当なのですか?」

私はお爺様の言葉を無視して言いました。

「じゃから、何度も言うておろうが・・・。ああ、正宗と麗羽は恋仲じゃ。それも麗羽の一目惚れのようじゃが。別によいではないか。家柄とて申し分ないじゃろうが」

お爺々様は面倒臭そうに私に応えてきました。

私の預かり知らないところで、こんなことが起こっていたなんて・・・。

衝撃の事実だわ・・・。

お爺様の話では、袁紹は真面目に文武に励んでいるそうなんだけど・・・。

そんなに簡単に人って変われるものなのかしら。

洛陽中で暗愚と言われた人物のことだけに、信じられませんでした。

「燐、そんなに心配なら、2人の稽古を見物にでも行けばよいではないか。面倒じゃが、儂が連れて行ってやる」

お爺々様は私の不信な表情を読み取ったようで、弟と袁紹が居るところに案内してくれるそうです。

しかし、あのお爺々様がこんなに好意的なんて、そんな袁紹は好人物なのかしら。

正直、想像が付かないわ・・・。

私とお爺々様は弟と袁紹の稽古している場所に出向くことになりました。





「もう少し踏み込んで!」

「はい!」

私は今、麗羽と剣術の鍛錬をしています。

もちろん剣は木剣です。

私達は、私塾が終わって直ぐに、馬に乗ってこの鍛錬場に来ました。

最近、猪々子も鍛錬にときどき参加することがあります。

彼女の場合、食い気が勝っているようで、ほぼ不参加です。

今日も、猪々子は良い店を見つけたと斗詩を連れだっていなくなりました。

2人とも主人を置いていくのはどうかなと思ったけど、麗羽は機嫌が良かったです。

「隙ありですわっ!正宗様!」

「うおおぉっと!麗羽危ないじゃないか」

危うく頭に剣が当たるところでした。

「正宗様がボーーーとしていらっしゃるのが悪いのですわ。いつも私に余所見をするなと仰っているじゃありませんか」

「あはははっ、そうだね。麗羽に一本取られたよ」

私は麗羽の言葉に、笑いがこみ上げてしまいました。

「うふふふっ!」

麗羽も私の笑いにつられて、笑いだしました。

「おお、何やら楽しそうじゃの、正宗」

私達の会話に入ってきた人物の声は、お爺々様のものでした。

「わざわざどうしましたのお爺々様。あら、その方はどなたですの?」

麗羽が先にお爺様に話しかけてきた。

「そうですよ、どうしたんですか」

私もそういって、声のする方向に顔を向けるとお爺々様ともう1人女性が立っていました。

何処かで見たことのあるような気がするのですが・・・。

誰でしたっけ?

「あのお爺々様、その方はどなたです」

私はお爺々様に女性のことを聞きました。

「何を言うておる。お前の姉の劉岱じゃろうが。まあ、お前は小さい時以来、一度も会っておらぬ故、仕方ないかの。洛陽に来てからも燐が忙しくて会う暇もなかったしの」

「えーーー、姉上ですか?」

私の目の前の女性は、スレンダーで黒髪のボブカットが似合う大人な魅力を漂わせる凄い美人です。

小さいころの面影が若干ありますが、こんな美人になっていたなんて・・・。

「い、痛いっ!」

私が姉上をじっと見ていると麗羽が頬膨らませて、ご機嫌斜めでした。

「麗羽、痛いじゃないか」

「正宗様を見ていたら、何か無性に腹が立ちましたわ!」

「あなたが袁紹殿かしら。私は劉ヨウの姉の劉岱です」

私が麗羽は宥めようとしていると姉上がこちらに近づいて、麗羽に話かけてきました。

「正宗様のお姉様ですのね。はじめまして、袁紹と申します。正宗様とは懇意にさせていただいております」

本当に、麗羽は変わったなと思いました。

たった、出会ってから数ヶ月しか立っていないけど、以前は、この挨拶すらできない子でした。

『オーーーホホホホ、私が名門の出の袁本初ですことよ!オーーーホホホホ!』

昔ならこういう挨拶をしたと思います。

姉上は麗羽の挨拶に驚いているようでした。





「それで姉上はどうして此処に?」

あの後、私と麗羽は休憩を取ることにしました。

お爺々様と姉上も一緒に、寛げそうな場所に敷物を敷いてのんびりとしています。

「どうしてとは何なの。折角、暇が出来たので、弟と話でもしようと思ったのに・・・。正宗は楽しそうでいいわね」

姉上は機嫌が悪そうでした。

「そう、拗ねるでない。正宗と麗羽は遊んでいたわけではないのじゃから」

「気になったんだけど、袁紹殿は何故、剣術なんてやっているのかしら?」

「それは正宗様の見聞を広めるための旅にお供するためです」

「健気ね。お爺々様に聞いてはいたけど、なんで正宗、あなた旅にでるわけ?この洛陽でも十分に情報は集まると思うわよ」

姉上は麗羽の言葉に、勝手に納得して、私に旅に出る理由を尋ねてきました。

「洛陽に入ってくる情報を見聞きするより、自分の目で見た方が良い経験となると思ったからです」

本当のことは言えなかったので、もっともらしいことを言いました。

「取って付けた様な言い方がちょっと気になるけど・・・。正宗、あなた本当に7歳なの?とても7歳の子供が考えることじゃないわ。普通、あなた位の年頃なら、遊ぶことに一生懸命だもの。お爺々様や父上達にあなたのことを聞かされたときは半信半疑だったけど・・・。こうやって対面すると実感するわね。じゃあ、最後に教えてくれるかしら。正宗は旅で、何を見たいのかしら?」

私の言葉が年相応とは思えないと言った後、私を見据えていいました。

「民の生活と地方での役人の姿を見てみたいと思っています」

「なぜ?」

「民の生活は飢饉や天災などで、窮乏しています。それにも関わらず重税を課し私腹を肥やす汚職役人がいます。私は彼らのことを目に焼き付けて置きたいのです。私は将来必ず、偉くなってみせます。そして、弱い立場の人々が安寧な生活が送れる世を作りたいと思っています」

「ふふっ、英雄願望というやつかしら。正宗、確かにあなたの言う通りよ。漢臣である私が口にしてはいけないことだろうけどね。今の宮中は売官と賄賂がはびこっているわ。それに、宦官の専横は見るに耐えないわ」

私を見つめる姉上は頬を綻ばせて優しい笑みを見せていました。

「頭は良いと思っていたけど、想いは子供なのね。少し安心したわ。そうね、正宗は一度旅にでるのも良いと思うわ」

姉上は自分の中で、納得したようでした。

「それにしても袁紹殿には驚いたわね。袁紹殿、気を悪くされないでね。噂であなたが暗愚な人物と耳にしていたので、そんな人物と関わっている弟のことが心配だったの。でも、実際、袁紹殿に会ってそんな印象が全くなかったわ。本当にごめんなさい」

姉上は麗羽の方を見やると、頭を下げて謝っていました。

「正宗様のお姉様っ!頭をお上げくださいまし。以前の私は暗愚と言われても仕方なかったと思っていますもの」

麗羽は姉上が頭を下げてきたことに恐縮しているようでした。

「それでは私の気が済まないわ。あまり高い物は無理だけど、何か欲しいものはない?」

姉上は麗羽の家が金持ちなので、金銭感覚がズレていると思って、値段の高い物は無理と予防線を引いていました。

「できれば、真名の交換をお願いできませんでしょうか?正宗様のお姉様と仲良くなりたいと思っています。よろしいでしょうか?」

「真名の交換?そうね。正宗とも仲が良いみたいだし・・・、それに袁紹殿は噂とは全然違っていたようだし。良いわよ。私は劉岱、字は公山、真名は燐よ」

姉上は麗羽との真名交換

「私は袁紹、字は本初、真名は麗羽です。それと正宗様のお姉様には、殿ではなく呼び捨てで呼んでいただきたいです。私は燐お姉様と呼ばせていただいてもよろしいですか?」

「燐お姉様・・・。何か妹ができた気分ね。いいわよ、じゃあ麗羽、これからよろしくね」

「はい、燐お姉様、こちらこそよろしくですわ」

姉上と麗羽は和んでいました。

「まあ、一件落着じゃな。よかった、よかった」

お爺々様は姉上と麗羽が仲良くなったのを喜んでいました。

「正宗、旅に行くこと自体に文句はないわ。でも、ちゃんと麗羽のことを守って上げるのよ。麗羽は女の子なんだから、分かっているの?」

姉上は急に思いついたのか私にそう言ってきました。

「言われないでも分かっています。危なくなれば守ります。ですが、旅先では何が起こるかわからないのです。麗羽自身にも力をつけてもらわないと、もしもということがあります」

私は真剣な顔で姉上に言葉を返しました。

「燐お姉様、麗羽は正宗様の足手まといには成りたくはないですわ。だから、正宗様の指導を受けていますの」

麗羽は燐お姉様に抗議していました。

「何よ~、私は麗羽のことを思って、言って上げたのに。それに麗羽は気負い過ぎよ。足手まといに成りたくないという気持ちは分かるけど、正宗に頼るときは頼りなさいね。そんなだと余計に危ない目に遭いかねないわ」

姉上は私と麗羽に不満を言うと、麗羽に対して助言をしていました。

「姉上にしては、いいことを言いますね」

「それはどういう意味かしらね。正宗!」

「ふふっ、2人とも仲が良いですのね。姉上様にはご助言感謝いたしますわ。そのこと、心に留めおいておきますわ」

その後は、鍛錬を早めに切り上げ、姉上の奢りで4人で食事に行くことになりました。
 
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