イベリス
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第二十五話 アルバイトもしてその二
「とても元気でお散歩大好きです」
「犬も同じです」
「犬にお散歩は必要ですよね」
「絶対に。以前神戸で小山さんと同じ様にトイプードルを飼いまして」
「女の子ですか?」
「はい」
このことも同じだというのだ。
「毛は茶色で」
「それも同じですね」
「足が短く」
即ちドワーフタイプでというのだ。
「そしてマズルもです」
「目とお鼻の間ですね」
「それも短く大きさはタイニーの小さいかティーカップの大きい位ですね」
「うちの娘そっくりですね」
モコにとだ、咲は話を聞いて思った。
「それだと」
「そうですか」
「その娘がどうしたんですか?」
「飼い主達はペットショップでその娘を見まして」
そしてというのだ。
「一目惚れして買って」
「そうして飼ったんですね」
「最初は可愛い可愛いと毎日可愛がっていましたが」
「あっ、そのお話知ってます」
咲は速水に眉を曇らせて答えた。
「自分達の赤ちゃんが出来たら」
「一日中ケージに入れまして」
「お散歩どころかですよね」
「見向きもしなくなりました」
速水は表情を消していた、彼は怒った顔は見せないがそれでも怒りの感情は持っているのだ。それで今彼は怒っていたのだ。
「そうなれば犬はどうするか」
「呼びますよね」
「人間でもそうしますね」
「急に無視されたら」
「自分の居場所を言って呼びます」
「そうですよね」
こう言うのだった、咲に。
「やっぱり」
「すると五月蠅いと言って」
「捨てたんですよね」
「この前まで可愛がっていた娘を」
「それも保健所に」
「新しい飼い主なぞ探さず」
そうしたこともせずにだ。
「性格が変わって朝から晩まで鳴くと」
「自分達が面倒見なかったとは考えなかったんですよね」
「それでもういらない、です」
「保健所にポイ、ですね」
「殺処分されるかも知れない場所に」
「私そんな人達大嫌いです」
咲はあからさまな嫌悪を見せて答えた。
「絶対に好きになれません」
「幸いこのトイプードルの娘はすぐに新しい飼い主が見付かってです」
「助かりましたね」
「ですがこの飼い主達は」
咲が露骨な嫌悪を見せた彼等の話もした。
「二人目が産まれると一人目の子を今度は」
「可愛がっていた犬もそうしたんなら」
「おわかりですね」
「今度は一人目の子をですね」
「育児放棄しました、そしてそれが明らかになり」
速水はここでだった。
タロットのカードを一枚出した、そのカードは塔の正だった。
「こうなりました」
「破滅ですか」
「因果応報です」
これ以上はないまでに冷たい声で述べた。
「悪事の報いを受けたのです」
「ワンちゃんは助かったのは聞いてましたけれど」
「飼い主達はそうなり子供達の親権もです」
これもというのだ。
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