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Fate/WizarDragonknight

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革命レボリューション

 セイバー……真名、煉獄杏寿郎。
 彼が美炎のもとに来てから、数日が経過した。
 美炎、清香、コヒメ、そして煉獄杏寿郎。聖杯戦争の参加者、およびその関係者が一気に四人も増えたが、彼らの居場所をまずは確保することが急務となる。
 結果、ラビットハウスのオーナー、香風タカヒロの知り合いが経営するアパートに入ることになった。
 そして、その家賃を稼ぐために。

「よく来てくれた!」

 と、杏寿郎がラビットハウスのホールに立つことになった。
 美炎、清香、そしてコヒメは、それぞれコヒメの今後について探るため、色々なところへ調べものをしているようで、当面の生活費は、煉獄頼りになっている。
 その分、ハルトと可奈美のシフトは減り、結果ラビットハウスに入れる家賃以外、手元に残る金額も少なくなってしまった。

「なるほど。そんなことが……」

 ハルトの言葉に相槌を打ったのは、背の高い少女。
 クールな色合いの和服を着こなす、長い髪を後頭部でまとめた少女は、胸に盆を抱えながら頷いた。

「今でもご苦労されているんですね」

 なけなしの現金を使ってでもハルトが訪れた甘味処。
 ココアの友人の一家が経営する、甘兎庵(あまうさあん)
 おおよそハルトにとって縁がない場所に足を踏み入れた理由は、この少女にあった。

「少しは労ってほしいよ……」

 そう言って、ハルトはぐるりと甘兎庵を見渡した。
 以前来た時と同じ、和風の老舗。檜の匂いがするが、今時のトレンドとしては合わないのか、客は年配の人が多い。

「随分と馴染んだね。紗夜さん」
「おかげさまでどうにか」
「良かった。……日菜ちゃんとはどう?」

 氷川紗夜(ひかわさよ)。そして、日菜。
 聖杯戦争の参加者になってしまった紗夜。彼女は以前、コンプレックスに負け、フェイカークラスのサーヴァントに利用されたことがある。
 そして先月、ハルト、そしてココアに憑りついていた光の使者の協力により助け出し、結果聖杯戦争から降りることができた。
 紗夜は微笑し、

「今はまだ……ただ、前よりもちゃんと、日菜を見て話すことはできています」
「それって、大きな一歩だよ」
「ありがとうございます。全部、松菜さんの……あと、保登さんのおかげです」

 どことなく、彼女の顔が赤くなったようにも見える。
 その時。

「紗夜ちゃん、紗夜ちゃん」

 別席に座る年配の女性が、紗夜を呼ぶ。すぐに応対した紗夜だったが、彼女は「いいのよそこで」と止めた。

「若いっていいわねえ。眩しいわ」
「ち、違いますよ」

 紗夜が照れた表情で否定した。
 だが、女性は「おほほほ」とマダムらしい笑い方をして、向かい席に座っている同姓の友人らしき人物との話に戻った。

「な……何だったんだろう」
「知りません」

 紗夜がきっぱりと言い切った。

「あと、時々日菜も来てくれるんです。何でも、私のことが心配らしくて。心配なのはこっちのほうなのに」
「いいじゃん。前も言ったけど、こっちに何かを向けてくれる家族がいるって、本当に素晴らしいことだからね。……さてと」

 ハルトは頭を掻いて、メニューを見下ろす。
 相変わらず、看板娘の少女が作り上げた独特なメニュー名で、見るだけでも頭が痛くなってくる。

「やっぱり、ここのメニュー凄まじいな。何だよ、千夜月って……あの子の名前そのまま使ってるじゃん……」

 そのほかにも、無数の漢字が所せましと並んでいる。中には、常用漢字には属していないものもある。

「漢字多すぎる……これ、漢語の教科書じゃないの?」

 そうして、目を泳がせていくと、下のほうに目立つメニュー名があった。
 それは。

 革命レボリューション

「えっと……紗夜さん? これ、何?」
「私が考えた、新しいメニューです。当然、宇治松さんにもおばあさんにも許可は頂いています」

 紗夜が悪びれることもなくふんすと鼻を鳴らした。

「それは……つまり、これを名付けたのも紗夜さんということで……」
「当然です!」

 と、紗夜は胸を張る。

「このお店で働かせていただいて早数週間。新たなお客様を呼ぶために、この店には革命が必要だと思いました」
「うん。そこまではまだ分かる」
「革命……つまりレボリューション!」
「訳しただけじゃん」
「だから、次のメニュー名を革命レボリューションにしました」
「だからどうしてそうなる!?」

 改めて目を凝らして見れば、メニューにも少しずつ変化があった。
 看板娘の千夜が作った和風単語が並ぶ独特なメニュー。だが、それを追いかけるように、洋風の技名のようなメニュー名もまた追いつけ追い越せとばかりに並んでいる。

「えっと……『漆黒の叫び(シャウト)』『新たな側面(アスペクト)』『火の(バード)』……何で半分英語なんだよ……」
「いいでしょう?」

 紗夜の鼻息が荒い。

「これからのグローバル化の時代。老舗の和菓子と言っても、和洋折衷は必定。これがなければ、時代に取り残されてしまいます」
「和洋折衷すればいいってものじゃ……これは雰囲気ぶち壊しって言う奴じゃ……」

 だが、紗夜の暴走はもう止まることはなかった。

「松菜さん!」
「は、はい!」

 思わず直立して返事をしてしまった。
 紗夜は続ける。

「是非! 食べてみてください!」

 そう言って紗夜がハルトの机に置いたのは、巨大な甘味。
 どんぶりのお椀に、あんこや大福、団子などがギチギチに敷き詰められている。見るだけでげんなりしてくる勢いのそれは、ハルトの顔を青く染めるのに十分な威力を誇っていた。

「な、何これ?」
「さっき説明しました、革命レボリューションです」
「お、おう……」
「旧態依然とした和菓子を脱するべく、洋菓子の材料も一部使っています。これこそ、革命の味です!」
「この子、こんなキャラだったか……?」

 その豹変ぶりに困惑していると、店の呼び鈴が鳴る。

「あ、ごめんなさい松菜さん。また後で。いらっしゃいませ」

 紗夜はそう言って、新しい客への対応に向かう。
 そんな彼女の後姿を眺めながら、ハルトは紗夜の力作へスプーンを立てる。

「やっぱ……食べなきゃだめだよね……?」

 そう言いながら、ハルトは一口、噛みしめる。
 味を感じないものの、その量と雰囲気だけで、ハルトの勢いを殺すのには十分だった。

「軽く紗夜さんの様子を見に来ただけのつもりだったんだけどなあ……まあ、元気そうで良かったけど。それより、これどうしようか……」
「お? 久しぶりの顔だ!」

 そんな声が、悪戦苦闘を重ねるハルトにかかって来た。
 見上げれば、そこには青い髪の中学生くらいの少女がいた。
 ボブカットで活発そうな顔つきの少女は、にいっとした笑顔でハルトを見下ろしている。

「よっ! 大道芸人さん」
「さやかちゃん……!」

 思わず口から出てきた、少女の名前。
 美樹さやか。見滝原において、ハルトが最も忘れることができない名前の一つだった。

「松菜さん、お知り合いですか?」

 さやかを奥の席へ案内しようとした紗夜が、こちらに気付く。
 ハルトの返答よりも先に、さやかが答えた。

「知り合いも知り合い! 大知り合いだよ! ね? ハルさん!」
「は、ハルさん?」

 さやかがハルトの肩に寄りかかる。
 一瞬紗夜が「ハルさん?」と不機嫌そうな顔を見せたが、すぐに平静を装う。

「相席にされますか? 松……ハルト(・・・)さん」
「あれ? 紗夜さん、俺のこと名前で呼んでたっけ?」
「はいはいはーい! いいよね? ハルさん!」

 さやかがハルトの言葉を取った。
 そのまま「どうぞ」と通した紗夜は、他の客のオーダーを取りにそそくさとその場を離れる。

「さやかちゃん……」
「久しぶりだね、ハルさん。いや、ここはウィザードって呼んだ方がいいのかな?」

 さやかがハルトの向かい席に座りながら挑発する。
 肘を付きながら、彼女はハルトの顔、そしてその手元にある革命レボリューションを見下ろす。

「うわっ! 何これスゴイ! アンタ、もしかしてすっごい甘党?」
「いや、そうじゃないんだけど」

 ハルトはそう言いながら言葉に迷う。紗夜は、オーダーを処理するために一時的にホールを離れているものの、なんと言えばいいのか分からなかった。

「あ! 分かった! あの店員にもらったはいいけど、思ったよりボリュームがあって困ってるんだ!」
「大体あってるけど声がでかい!」

 ハルトは慌ててさやかの口を封じる。
 幸い、紗夜には聞こえていないようで、心底安心した。

「えへへ……ごめんごめん」

 さやかは笑いながら、革命レボリューションを再び見下ろした。

「ねえ、アンタこれ食べきれないんでしょ? だったらもらっていい?」
「え? いいけど君は……」
「うっしゃあ! んじゃ、遠慮なくいただきます! アンタの奢りってことでいいよね!」

 さやかは言うが速いが、早速ハルトの前の大山を自らの手元に寄せる。

「お、これ美味しい美味しい! ねえハルトさん、これ結構イケるよ!」

 さやかはスプーンでバクバクと食べながら、そう断言した。
 ハルトはそんな彼女を見て、やがて少し体の重心をさやかから引き離した。

「……ねえ。本当に、美味しい?」
「ん? 何言ってんの? 当然じゃん」

 さやかはそう答える。

「うん、この絶妙なクリーミーさとか、このラムネっぽいのの刺激とか、もう夢中になるよ!」
「……そう。……そっか」

 ハルトはほほ笑みながら、さやかがどんどん食べていくのを眺める。
 やがて、その膨大な容量の半分以上が彼女の腹に収まっていったところで、ハルトは口を開いた。

「さやかちゃん。その……聞いてもいい?」
「ん?」

 スプーンを口に咥えたまま、さやかが疑問符を上げる。

「その……大丈夫? 生活とか」
「あっははは! 何それ? アンタ、あたしのお父さんか!」

 さやかは腹を抱えて大爆笑に陥る。
 ハルトは少し気まずくなりながらも続ける。

「いや、本気で聞いてる。なんか……不便とか、ない?」
「前も聞いてたよね。うーん、そういえばさあ、やっと期末試験終わったと思ったら、今度はおこづかいが足りないんだよねえ。ちょっと貸してよお父さん」
「誰がお父さんか」

 ハルトは思わず、さやかの頭にチョップする。

「痛っ」
「あっ」

 思わずノリツッコミをしてしまったハルト。
 周りの目が厳しいものになる前に、誤魔化しもかねて勢いよく話を続ける。

「そうじゃなくて……その……」
「やめてよ。そういうの」

 さやかの声が、一転して冷たくなる。

「アンタ、あたしに引け目でも感じてるの?」
「……」

 ハルトは目をさやかから下げる。
 彼女の手元にあるお茶。茶色の液体だが、その内側に、やがて魚の形をした水の塊が泳いでいた。

「……」
「上達したでしょ?」

 一方、さやかはつまらなさそうに鼻を鳴らした。

「まあ、どうでもいいけどね。アンタ、あたしのことがあった後もファントム倒してるんでしょ?」
「……」
「それとも、やっぱりあたしが言ったこと、信用できない?」

 その言葉とともに、さやかの顔に妖しい紋様が現れた。
 ラッパの顔をした人魚の顔。
 だが、ハルトが息を呑むと同時にすぐにそれは消滅し、妖艶な笑みを浮かべたさやかだけが残った。



「……う……そんなに食べてないはずなのに、腹が重い……」

 ハルトは小声で呟きながら、帰路を歩いていた。
 二月の太陽は沈む速度も速く、すでに青空は夕焼け色に染まっている。冷えた空気は、いまだに安い防寒具を貫通してハルトの体を冷やしていった。

「……で」

 ハルトは大きくため息をついた。

「なんで付いてきてるの?」
「え? いいじゃん別に」

 ハルトの後ろに付いてきている少女、美樹さやかは当然のように笑いながら言った。

「期末試験終わってクタクタなんだ。なんか奢ってよ」
「……たかりに来たの?」
「ダメ?」
「……」

 ハルトは少し考えながら、再び歩きだす。

「今、俺結構金欠だからね。少しだけならだよ」
「ラッキー! 言ってみるもんだね」

 さやかはピースサインをしながら言った。
 結局ハルトは、甘兎庵に続いて、ラビットハウスでの出費を考えて、財布の中を確認しなければならなかった。 
 

 
後書き
コウスケ「ギブミーチョコオオオオオオオ!」
響「うわっ! どうしたのコウスケさんいきなり!?」
コウスケ「生まれてこの方二十年、親からしかもらったことがないんだよ!」
響「チョコ?」
コウスケ「バレンタインのな!}
響「あ、ああ……そういえば今日バレンタインだったっけ?」
コウスケ「ちくしょおおおおおおおおッ! 大学じゃ誰もオレにそんなイベント持ち込んでくれねえし! やってられるか!」
響「そもそもこの前のでコウスケさん春休みに入ったんじゃ……」
コウスケ「こうなりゃヤケだ! 今回のアニメ紹介はオレが全部やってやる!」



___大嫌いから(大嫌いから) 大好きへと(大好きへと) 変わる心についていけないよ___



コウスケ「ゴフッ」
響「コウスケさんが吐血して倒れた!」
コウスケ「羨ましすぎて……死にそう……」
響「コウスケさーん! カンペ! 紹介してってカンペがッ!」
コウスケ「あとは……頼んだ……ガク」
響「コウスケさーんッ! コウスケさんをやっつけちゃったのは、五等分の花嫁!」
響「貧乏学生の上杉風太郎君が、落第寸前の五つ子の家庭教師をやっていくお話だよ!」
響「あれ? コウスケさんまだ起きない……五つ子は、みんな可愛い女の子! でも別にコウスケさんが死んじゃうほどいい目ばっかり見てる訳じゃないんだけどなあ……」
響「放送期間は2019年の1月から3月。二期が2021年の1月から3月だよ! コウスケさん、もう終わったから起きて! 私が……私が……」
響「ラビットハウスで、なんか作って来るからあああああああッ!」猛ダッシュ
コウスケ「ひ、響……待て……ガク」 
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