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歪んだ世界の中で

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第十七話 冬の入り口その十二

 だからだ。真人はこう言うのだった。
「やっぱり距離はありますね」
「そうだね。けれど移動の間もね」
「デートですね」
「それになるからね」
 それ故にだというのだ。
「どうかなって思うけれど」
「そうですね。ダブルデートになりますよね」
「うん、そうだよ」
「面白いですね」
 真面目に考える顔になってだ。真人は答えた。
「それもまた」
「じゃあやっぱり」
「はい、では」
 真人はここで頷いた。
「そうしましょう」
「よし、じゃあ決まりだね」
「はい。それにしても住吉ですか」
「あそこも行ったことがあったし」
「確かにいい神社ですね」
 真人も住吉のことは知っていた。その神社のことを。
「様々なものがありますし」
「正月だから人は多いけれどね」
「何、それもまたいいですよ」
 その人も多さも楽しむとだ。真人は希望に笑顔で答えた。
「お正月ですから」
「風物詩だからなんだ」
「人が多いのもです」
「風物詩になるんだね」
「はい、正月の神社は特に」
 こう言うのだった。
「だからいいと思いますよ」
「そうなんだね。だからこそ」
「後は」
「後は?」
「出店も楽しみましょう」
 真人はにこにことして話すのだった。店のこともだ。
「住吉ですからかなりの出店が揃ってますよ」
「そうだね。だからそこね」
「楽しみです。たい焼きも」
「たい焼きだね」
「あとたこ焼きもです」
 出店の定番だった。どちらも。
「それにお好み焼きやソーセージも」
「フランクフルトだね」
「そうでした。あれはフランクフルトでした」
 笑って話す真人だった。その屈託のない笑顔で訂正したのである。
「そのフランクフルトにケチャップをたっぷりとかけて」
「マスタードも」
「それが美味しいですよね」
「そうだよね。あと他には」
「焼きそばにりんご飴もありますよ」
「りんご飴か。あれいいね」
 実は希望の好物の一つだ。祭りに出ればいつも食べるものだ。
「甘くてね」
「そうですよね。他には綿菓子もあって」
「何でもあるね。住吉には」
「はい、では四人で楽しみましょう」
「その時はね。ただね」
「ただ?」
「友井君はクリスマスはどうするのかな」
 クリスマスはどうするかとだ。希望は笑顔から少し真顔を入れて真人に尋ねた。
「その時はどうするのかな」
「駅に出ます」
「駅に?」
「はい、駅にです」
 そこにだとだ。真人は希望に答えたのである。
「そこに行きます」
「駅っていうと」
「JRの新大阪駅です」
「新幹線の駅だよね」
「はい、あそこに行きます」
 そこにだというのだ。新幹線のその駅にだというのだ。
「クリスマスは」
「やっぱり一人じゃないよね」
「それは部活です」
「部活でクリスマスに駅に」
 希望はこのことがよくわからずだ。首を捻って述べた。 
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