レーヴァティン
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第二百二十二話 採られない戦術その九
「そうさせてもらうな、しかしな」
「自治はですか」
「認める」
それはというのだ。
「それで文化や信仰は認めてだ」
「統治の仕組みも」
「認める、軍もな」
「同じですか」
「他の地域にそうしてるしな」
「スコットランドもですか」
「同じだ、あんたは王でだ」
それでというのだ。
「文化と信仰も認めてだ」
「そのうえで」
「ああ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「帝国に入ってもらう」
「そうですか」
「それで返答は。今すぐでなくてもいいが」
即断しろとは言わなかった、これは久志の戦略だった。若し王が戸惑うなら考える時間を与えるつもりだったのだ。
「どうだ?」
「そのお話受け入れさせて頂きます」
これが王の返事だった。
「でしたら」
「帝国に入ってくれるか」
「私の首一つでと思っていましたが」
「あんたの首?俺が欲しいのはこの国とだ」
久志は王に笑って答えた。
「あんたもだよ」
「私もですか」
「あんたが王として相応しいからな」
そう思うからだというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「あんた自身は欲しくてもな」
「私の首はですか」
「いらないぜ」
こう王自身に告げた。
「本当にな」
「そうですか、それと引き換えに」
「民と国土はか」
「安泰にと思って」
「ここに来たか」
「若しそれが受け入れられないなら」
民と国土の安泰をというのだ。
「その時はです」
「戦をするつもりだったな」
「覚悟を決めてです」
「来たか」
「そうでしたが」
「手強い敵は心強い味方にもなるだろ」
久志はこうも告げた。
「だからな」
「それで、ですか」
「ああ、だからな」
「私をですか」
「是非な」
「帝国にですか」
「来て欲しいんだ」
王自身もというのだ。
「いいか、俺は欲張りだ」
「そうなのですか」
「だからあんたもあんたの家臣も兵も民も国土もな」
その全てをというのだ。
「帝国に入れたいんだ」
「だからですか」
「あんたも誰も命は求めない」
「求めるのは我等の全てですか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
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