魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Saga33彼女たちの今~Side Midchilda~
†††Sideはやて†††
ルシル君が故郷アースガルドに戻ったあの日からおよそ1年。私はあれからも変わらず管理局員として仕事に勤しんでる。そんな当たり前を過ごしてる日々の中、珍しくチーム海鳴メンバーの休暇が揃ったことで、2泊3日の小旅行を催すことになった。
行き先はすっかりチーム海鳴やチームナカジマの合宿先となってるカルナージのホテルアルピーノ。今や無人世界やなくて行楽世界とも呼ばれるようになるほどの人や物資の往来がある。さらに言えば私たちチーム海鳴、ナカジマジムのメンバーであるヴィヴィオ達が利用するってゆうことで、格闘技選手やファンの人たちが多く利用するようになった。
「あー、もうずっと休んでいたい~。仕事行きたくないな~」
私やシグナム、アインスと同じようにビーチチェアに横になって、湖に入って遊んでるなのはちゃん達を眺めるシャルちゃんが嘆息した。温暖な気候のカルナージの今の季節は夏。水着に着替えて湖で水遊びの最中で、私はヴィータやリイン、アギトに付き合って遊んでたんやけど、今はちょう休憩中。
「やはり教会騎士団の方も忙しいのか?」
「そうなんだよシグナム。そっちもそうだろうけど、管理世界は相も変わらず犯罪者で大騒ぎ。T.C.の壊滅が報道されたらすぐに犯罪件数が上がったよまったく」
シャルちゃんはルシル君が帰ったその日の内に局に辞表を出した。数週間かけて仕事の引継ぎから特務零課の解散をサクサクッと行うと、構成メンバーで聖王教会騎士団にも籍を置いてたルミナ、セレス、クラリスも同時に局を辞めて、シャルちゃんと一緒に聖王教会騎士団へ再入団。さらにミヤビも局を辞めて教会騎士団に入団したことで、管理局の主力が一気に喪失した。
「お前が騎士団内に新設した騎士隊、白金桜騎士隊は、特騎隊と同じ即応遊撃部隊だったな」
「そっ。特騎隊の本籍を管理局から騎士団に移したようなものね。基本的に教会依頼の仕事を遂行するけど、局から要請があれば受けて出張する。設立から半年だけど、もう4回も出張食らってる。ま、その仕事を選んだんだから文句なんて言えない立場だけど、こうしてみんなと遊んでいるとやっぱり愚痴がね・・・」
ビーチチェアの合間に置かれてる丸テーブルから自分のトロピカルジュースを取ると、「仕事の話になっちゃうところだった、やめやめ。泳いで頭を冷やしてくるよ」って言いながら飲み切って、シャルちゃんはパレオを取って湖の方へ駆けて行った。
「なのはとフェイトにドーン!」
「待っ――シャルちゃん! にゃあああ!」
「ちょっ、シャル!? 急に突撃とかされると水着が脱げるから! 脱げちゃうからーーーー!」
シャマルやすずかちゃん、アリサちゃんやアリシアちゃんと一緒にビーチボールをしてた2人に突撃をかましたシャルちゃん。派手に水飛沫を上げて3人はすっ転んだ。
「母さーん! シグナム姉! アインス姉! まだ休憩中~?」
そんななのはちゃん達から少し離れたところで、トレーニングと遊びを兼ねての水泳をしてる子ども達、ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルト、イクス、ミウラ、ファビアと、そんな女の子ばかりの中で遊んでる唯一の男の子、八神家長男のフォルセティが、私たちに笑顔を向けて手を振ってくれた。
「そろそろ戻るな~♪」
St.ヒルデ魔法学院での義務過程を卒業後、そのまま高等部に進学したヴィヴィオ達とは離れて(イクスは一緒やけどなぁ)聖王教会系列の医学部の在る別の学院へ進学したフォルセティも、この1年でぐんぐんと身長が伸びて今やシグナムよりも高い。
女の子ばかりのチームの中に男の子ひとり。その構図は今でも変わらずに昔のチーム海鳴を思い起こさせる。ま、私たちとの違いは、フォルセティとヴィヴィオとコロナの恋愛戦はもうきっちり決着してるってことやな~。
(インターミドル男子の部の世界代表戦で勝利したことで世界最強の男子となったフォルセティがまさかの・・・優勝インタビューでヴィヴィオに公開告白とは・・・)
――優勝おめでとうございます、フォルセティ選手! 短い間で構わないので、今のお気持ちを教えてください!――
――優勝できたことが今でも夢みたいで、とても嬉しいです! この日のために鍛錬を積んできたので、結果を残せたことが誇らしいです!――
――ありがとうございます。やはりその気持ちを真っ先に伝えたいのは、ご家族の方ですか?――
――そうですね。・・・僕を支え続けてくれた家族、仲間たち。世界最強の10代男子の座に僕が今立てているのは、そんな大切な人たちが居てくれたからです。僕独りでは決して立てなかったです。家族に仲間たち、それに亡くなっている父にも伝えたいです。父とは違う形だけど最強になったよ、と伝えたいです――
――ルシリオン・セインテスト調査官ですね。とても立派な方でした。きっと天国の御父上に届くと思いますよ――
――はい! ありがとうございます! あの、最後に僕からもう1つ、ある人に伝えたいことがあるんですけど、いいですか?――
――ええぜひ!――
――ありがとうございます。では・・・すぅ・・・はぁ・・・。ヴィヴィオーーーー! 好きだぁぁぁぁぁーーーー! 僕の恋人になってくれぇぇぇぇぇーーーー!――
息子のあまりに突然なヴィヴィオへの愛の告白に、観客席に居った母さんを始めとした一同はホンマにビックリした。そうゆう関係になるまで秒読み段階やなって、なのはちゃんやフェイトちゃんとも話してたから、2人が付き合うことに関しては暗黙の了解やった。さらに驚いたのは、カメラを向けられたヴィヴィオがその場で受けたことや。
――はいっ! わたしからもお願いしまーーーーす!!――
(ルシル君の事情は解ってるけど、ルシル君もフォルセティくらいに気持ちええ告白をしてほしかったな~)
フォルセティとヴィヴィオが公式に結ばれたことで、コロナは自動的に失恋したわけやけど、あの子たちの付き合い方は全然変わらへんかったから、コロナも納得してくれたんやろうな~。そんなことを思い返しながら私の分のトロピカルジュースのグラスが空になってることを確認。そんで「イプシロン。ごちそうさまや!」と、ホテルアルピーノの従業員の1人、元“スキュラ”姉妹の五女イプシロン・アルピーノに声を掛けた。
「はい。はやて、お代わりは要りますか?」
「ううん、もう結構やよ。おおきにな」
「イプシロンは自分の仕事をしてるだけです」
イプシロンを始めとした“スキュラ”姉妹もこの世界に留まって1年やな。ホテルアルピーノの従業員が板についた働き者や。私のグラスだけやなくて、同じようにお代わりを断ったシグナムとアインスのグラスもトレイの上に載せて、「ごゆっくりです」と、新しく建てられた湖岸食堂(日本の海の家みたいな木造店やね)に戻ってく。外からでも見える厨房には“スキュラ”の長姉アルファと末妹ゼータが、私たちの昼食の下拵えをしてくれてる。
「よーし! 私もシャルちゃんにドーン!」
「ちょっ、はやて!? 抱き付きならいいけど、水着の状態で胸を揉むのはダメーーー!」
「む、うーん・・・?」
2年ほど前にチームナカジマ合宿に付き合った時、こうしてシャルちゃんだけやなくてなのはちゃん達のも堪能させてもらったんやけど・・・。なんや「シャルちゃん、ちょうしぼんだ?」って感想がポロッと口から零れてしまう感触が伝わってきた。
「んなっ!? バストサイズはずっと維持してるんですけど!? そういうはやてはどうなわけ!?」
背後から抱き着いてる私の両腕を掴み取ったシャルちゃんは勢いよく腰を曲げて、そのまま私を背負い投げ。背中から湖面に叩き付けられた私は大慌てで体勢を立て直して、「ぷはっ!」と足を付いて立ち上がった。
「けほっ、けほっ! シャ、シャルちゃん! さすがに水の上での背負い投げはアカン! 受け身の効果が全然あらへん!」
「ごめんごめん。んじゃ、今度はわたしが測ってあげよう!」
「うひゃい!?」
私の背後からシャルちゃんが両手を伸ばしてきて、あろうことかビキニトップスの中に手を差し込んで来て、じかに揉んできた。顔がカッと熱くなって、「ふむふむ、なるほど~」と遠慮なく揉みしだいてくるシャルちゃんに「降参! 降参や!」って、シャルちゃんの手を私の胸から離そうとするんやけど、完全に力負けしてるから上手くいかへん。
「な? シャルちゃん! ホンマごめん!」
「むむ? はやて、ちょっと大きくなった? まさか! フォルセティがルシルみたいに成長したから、ルシルに代わってあの子に揉ませ――」
「るかぁぁぁーーーー! 母親が息子にそんなことをさせるわけあるかい!」
シャルちゃんに全力でツッコみを入れつつ、私はシャルちゃんに向かって体重をかけて、一緒に仰向けに倒れ込んだ。足腰もシャルちゃんに比べればよわよわな私やけど、足を掬われやすい水の中なら体重をかけてしまえば一緒に倒れることくらいは可能って判断や。
「「ぷはっ!」」
同時に立ち上がって、お互いにズレた水着を直してからレスリングポーズで対峙する。と、そこで「やめなさい」とゆう呆れ声と一緒に私とシャルちゃんの頭が叩かれた。私の頭を優しく叩いたのは「アリサちゃん」で、シャルちゃんの頭を割と強い力で叩いたのは「アリシア」ちゃんやった。
「あんたらね、遊びだろうがマジだろうがアホなことやってんじゃないわよ」
「そうそう♪ 胸が大きくなっただの小さくなっただのくだらないよ。どうせ私に比べればみんな小さいんだし、そんなつまらない話なんてしてないでさ、もっと遊ぶべき!」
チーム海鳴で一番のバストサイズを誇るアリシアちゃんが腕を組んでそう言うた。両腕の上に乗っかってるその大きな胸に視線がいく。シャルちゃんと目配せをして、頷き合うと同時に2人でアリシアちゃんの胸に手を伸ばしてこれでもかってくらいに揉みしだく。
「な、なんでぇぇぇぇーーーー!?」
「この生意気おっぱいめ!」
「アリシアちゃんの胸は変わらへんな! 大きくて形もええままや!」
「なんでキレ気味!? やああああああ!」
私とシャルちゃんに滅茶苦茶にされるアリシアちゃんを見たアリサちゃんが逃げようとして、それに気づいたシャルちゃんが「わたしが揉んで、アリサの胸を大きくしてあげるよ~?」ってアリサちゃんをロックオンした。
「大きなお世話よ! それにこれ以上大きくなっても邪魔なだけよ!」
私より大きな胸を持つアリサちゃん。確かに騎士のような戦い方をするアリサちゃんにとって大きな胸は邪魔になるんやろうけども・・・。モヤモヤッとする心を落ち着かせるために私は「こうなったらみんなの胸を揉まへんと」って考えに至る。まずは、目が合った「すずかちゃん」からやな。
「え? ちょっ、はやてちゃん? 落ち着こう?」
シグナム、シャマル、アインスを除いたチーム海鳴のバストサイズランキングは、アリシアちゃん、すずかちゃん、フェイトちゃん、シャルちゃん、アリサちゃん、なのはちゃん、私となる。2位のすずかちゃんの胸を揉めばご利益があるかもしれへん。
「落ち着いてるよ? 以前みたいにちょーっと揉むだけや」
「え~と・・・逃げちゃダメ?」
「うん、アカン♪」
身体能力で圧倒的に勝ってるすずかちゃんが本気を出せば、私から逃げ切るのは簡単なはずなんやけど、すずかちゃんは苦笑いしながらスッとその豊満な胸を私に向けて差し出した。それで頭の冷えた私は手を合わせて拝んでから、すずかちゃんの胸を揉んだ。それからなのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんと続けて揉ませてもらった。
「次は・・・」
馬鹿なことをやってる私たちから距離を取って遊んでるフォルセティ・・・とゆうより、ヴィヴィオ達に目を向けた。ヴィヴィオもアインハルトも徐々に大人モード時に近い体型に成長してるから揉み応えのあるサイズやし、コロナ達ももちろんええサイズや。
「よーし! そんじゃあヴィヴィオ達に行ってみようか!」
「ちょう待って、シャルちゃん」
さすがにこれ以上の馬鹿な真似は出来ひんと自制した私はストップを掛けるんやけど、シャルちゃんは「コンプするのがわたし流」なんて言い出して、ビクッと肩を震わすヴィヴィオ達に向かって歩き出した。そんなシャルちゃんの前に立ちはだかるのは・・・
「シャルさん、母さん」
「「フォルセティ・・・!」」
「シャルさんも母さんも恥ずかしいことしないでくれる? ヴィヴィオは僕の彼女で、アインハルトさん達は大切な友達なんだ。手は出させないよ。それでも無理にでも来ようものなら、僕が相手になる」
インターミドル男子の部世界チャンプのフォルセティ。見て、あれが私の自慢の愛息子や。ヴィヴィオ達を護るように堂々と立つフォルセティの勇姿にドキドキする私なんやけど、シャルちゃんは「めっちゃ複雑な気分」ってガックリ肩を落とした。
「フォルセティ、格好いいんだけどさ。見た目がルシルにそっくり過ぎてこう・・・ヴィヴィオに寝取られた感があってさ・・・。それにルシルがロリコンっぽく見えてもいるんだよね・・・」
「そ、それは・・・」
うん、まぁ気持ちは理解できる。フォルセティもこの1年で心身ともに大きく成長して、シャルちゃんの言うようにルシル君を幻視させる。一緒に過ごしててドキッとするときも何度もあるし、ヴィヴィオ達が遊びに来たときには“好きだ”って想いを目いっぱい視線に載せてヴィヴィオを見たりするから、ジェラッと来るのは内緒や。
「母さん。母さんは当然やらないよね?」
「う゛っ・・・も、もちろんや!」
「しかしわたしは止まらない。むしろフォルセティと組んず解れつは望むところ。お姉さんと楽しい事をしよっか? フォルセティ」
チロっと舌を出して笑うシャルちゃんの姿にフォルセティは腰が引けた。私やと止められへんから応援要請しようかとしたとき、「ちょっと待ってください!」とヴィヴィオがフォルセティの隣に並んだ。
「わたしだって黙っていないですよ。フォルセティはわたしの・・・その、か、彼氏だから!!」
顔を真っ赤にしてそう言い切ったヴィヴィオの姿にシャルちゃんは「ぐはっ!」と、胸を銃で撃たれたようなリアクションをしてから湖に沈んでった。そんでプカァっと仰向けで浮いて来て、「独り身が辛い・・・」ポツリと漏らした。そんなシャルちゃんを私とすずかちゃんで砂浜に戻して、「何をやっているのだか」と呆れてる“スキュラ”の次女ベータに預けた。
「さて、そろそろ戻るか」
「ああ」
ビーチチェアから降りたシグナムとアインスが軽くストレッチをしてると、「暇ならこっち手伝えー」って砂浜ですごく立派な出来のミッド地上本部の砂像を造ってるヴィータ、リイン、アギトが2人に声を掛けた。泳ぐ気満々やった2人はちょう困ったような顔になった。
「あ、じゃあ私とザフィーラが行くわ。シグナムとアインスは泳いできていいわよ」
シャマルがそう言うて浜に上がろうとしたその時、管理世界にて緊急事態が発生したことを知らせる特殊コール音が、浜に設けられた丸テーブルの上に置かれたデバイスからけたたましく鳴り響いた。意識が日常から仕事モードへと切り替わる。みんなそれぞれキーモニターを展開して、通信を繋げてきた相手と顔を合わせた。
私たち局員組に通信を繋げて来たのは同一人物で、「クロノ君!」やった。基本的にチーム海鳴への緊急連絡は、クロノ君かリンディ統括官かレティ総部長の3人から来ることになってるから、今回も例に漏れずやな。
「何かあった? アイリ」
シャルちゃんに通信を繋げてきたのはアイリやった。ルシル君と一緒に公式に死亡となったアイリやけど、今はシャルちゃん達に付いて騎士団に入団して、藍木春菊騎士隊インディゴ・マルガレーテってゆう、再教育された元最後の大隊の融合騎をメンバーとした隊のリーダーになってる。
(アイリ・・・)
ルシル君と違くて私たちのところへ帰ってきてくれたアイリの今後の処遇をどうするかって話になったことで、私たちはある嘘を世間に吐くことにした。“T.C.”との戦いで運よく生き残りはしたんやけど、瀕死の重傷を負ったことで密かに静養してたとか、死亡扱いにしてたのは“T.C.”の追撃を避けるためとかな。深く詮索されたら怪しまれるやろうけど、マスコミや世間はそれを受け入れてくれた。
そんなアイリが局に入り直さずに騎士団に入ったのはまだええけど、八神の家を出て騎士団員の寮に入ってしまったのは寂しいわ。
――はやてのお家に居ると、どうしてもマイスターのことを思い出しちゃうの。留まっちゃうとアイリ自身がダメになっちゃいそうだし、出て行こうと思うのね。・・・ごめんね。お世話になりました――
そうゆう理由で八神家を出てったアイリやけど、交流が無くなったわけやない。今日は休暇が合わんかったから居らんけど、魔導師ランク昇級試験で合流が遅れるスバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ルールー、リヴィと一緒に、明日合流する予定やった。
そんなアイリやクロノ君から私たちに伝えられたのは、ミッドの北から西にかけての5ヵ所で正体不明の巨大生物が複数出現して派手に暴れ回って、そやけど人に危害は与えようとはせず、その生物同士が争って被害を拡大させてるとのこと。
『問題は並の武装隊の攻撃ではビクともしないというところだ。今は第零技術部が開発してくれた動物型戦闘デバイス・ファイティングビーストや、現場近くに偶然居合わせた高ランク魔導師たちが対応してくれているが、それでは足りないのが現状だ』
『局から応援要請を受けた教会騎士団も似たような感じだね。だからフィレスの銀薔薇とシャルの白金桜、アイリの藍木春菊にも出撃命令が出たの』
『そういうわけで、君たち高位ランク魔導師・騎士にも出撃してもらうことになった。こちらで勝手にチーム分けをさせてもらったが、何か意見があれば反映するつもりだ』
八神家、なのはちゃんとフェイトちゃんとアリシアちゃんとアリサちゃん、すずかちゃんはシスターズと合流、シャルちゃんは自分の隊と合流とゆう形や。みんなはその組み分けに納得してるし、そのままで出撃することになった。
「ウーノ。こちらすずか。直通トランスポートで、私たちをミッドのある4つのポイントへ転送してほしいんだけど・・・」
『事情や転送先座標はクロノ提督らから伺っています。こちらもすでにフル装備させたトーレ、セッテおよび追加の予備戦力としてファイティングビーストのタイプウルフ、イーグルをそれぞれ20機、計40機を待機させています』
「了解。じゃあ早速、転送をお願い」
今すぐにも出撃とゆうことでフォルセティ達と軽く挨拶を交わし、防護服に変身した私たちはそれぞれのポイントへと転送された。私ら八神家が転送されたんはミッド北部はアーレンス地区。ベルカ自治領ザンクト・オルフェンに近い隣のフリートヘルム地区にはシャルちゃんとアイリの部隊が向った。
「状況は切羽詰まってる! みんな、行くよ!」
アーレンス地区に転送された直後から耳に入るのは、近場の陸士隊や警ら隊の指示に従って避難してる民間人の悲鳴やった。武装隊が展開してる結界からは衝撃波が零れ出て、周囲の建物に甚大な被害をもたらしてる。そんで結界が破壊されると、交代要員が新しく再展開とゆう切迫した状況や。すぐにでも大暴れしてる正体不明の生物を制圧するべく、私たちは空へと上がった。
『こちらチーム八神! お待たせしました! これより正体不明の生物たちの鎮圧に入ります!』
『了解です! ご武運を!』
武装隊の展開してる結界には進入可・脱出不可の一方通行効果があるから、私たちは苦労せずに結界の中に入ることが出来た。そんで、ここアーレンス地区に混乱を招いた存在を目視。
全身の至る所にいろんな種類の生物の頭蓋骨を付けたイグアナのような真っ黒な巨大生物と、額やお腹や背中にダビデ像の顔のような石像を付けたティラノサウルスのような真っ白な巨大生物が、突進や噛み付き、尻尾での打撃などの攻撃を繰り返し、その影響で周囲の建物を破壊してるって感じやな。
「でっけぇ・・・」
『昔観た特撮にあった怪獣大決戦みたいです』
『やべぇな。ゴ〇ラとかキングコ〇グとか思い出す』
リインとアギトがそんな感想を漏らした。サイズは違うけどジュラ〇ックパークシリーズを私は思い出しなぁ・・・って、そんな悠長なことをしてる暇はあらへん。すぐに私たちは2頭の巨大生物の鎮圧に動き出す。まずはあの2頭を引き剥がすところからや。私とシャマルとザフィーラ、ヴィータとシグナムの二手に分かれて、私とシャマルとザフィーラはイグアナを、シグナムとヴィータはティラノに向かった。
『主はやて。やはり力ずくでいきますか?』
「『そうやね・・・。言葉が通じるとは思えへんし、全力で行くよ!』ザフィーラは私に付いて来て!」
「承知!」
「シャマルはリンカーコアの摘出準備!」
「判りました!」
“夜天の書”を開き、「『爆ぜよ。夜天彩る極光!』」と、私が持ちうる魔法の中でも最強クラスの呪文を詠唱。直感とゆうか本能とゆうか、今目の前で激突してる2頭の巨大生物は普通の魔力保有生物とは生物としての格が違うと告げてるから、手加減無用の一撃を選択した。
「貴様は・・・!」
「こっちだ!」
――火龍一閃――
――ギガントシュラーク――
シグナムが大きく伸長させた炎の剣を振るってティラノを後退させると、ヴィータが超巨大化させた“アイゼン”を振り下ろした。ヴィータの一撃は見事に頭部を捉えて、ティラノを地面に叩き伏せた。私も負けてられへんとイグアナに向かって“シュベルトクロイツ”を向ける。対するイグアナは私を気に掛けることなく、ググっと立ち上がろうとしてるティラノにのみ意識を向けてる。
「(クロノ君の報告通りやな。人には危害を加えようとせえへん)ポラールリヒト・ノーヴァ!」
そんなイグアナに向けて魔法を放った。イグアナを中心に夜天結界が発生して、結界内に発生する無数の強大な雷撃が一斉に襲撃。そのまま結界を野球ボールサイズにまで圧縮して、イグアナをもっと広い場所へと移動させるためにその場から離れる。
『主はやて! イグアナの抵抗が激しく、もうもちません!』
『もうか!? もうちょい維持できひ――』
私の側に浮いて追従してた魔力スフィアからバキバキ!とヒビ割れる音がして、そのヒビから雷撃が漏れ出た。さすがにもうアカンと判断して、割と広い公園へと射出する。そんでイグアナが自力で魔力スフィアを破壊するより早く、威力を最大限に発揮させるためにこちらから魔力スフィアを爆破した。
強烈な放電と魔力爆破に呑まれながらイグアナは公園の芝生の上に落下して、背中から激突した。仰向けからうつ伏せに戻ろうともがくイグアナに「旅の鏡!」を発動したシャマル。こうゆう巨大生物には転送魔法によるリンカーコア摘出が一番ええ手や。
“クラールヴィント”の転送鏡に手を突っ込んでイグアナのリンカーコアを探すシャマルやったけど・・・
「きゃうん!?」
「「『シャマル!?』」」
転送鏡からブワッと溢れ出た黒い靄を全身に受けたシャマルは、まるで感電したかのように硬直して、気を失ったのか墜落し始めた。すぐにザフィーラが助けに入ってくれたおかげでシャマルは助かった。そやけどザフィーラらしくない「様子がおかしい!」と切羽詰まった声を上げた。
「AHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH‼‼‼」
「今度はなんや!?」
イグアナの叫びが空気を震わせると、頭蓋骨の目や口から黒い靄を発生させた。それが雷雲やと判るのに時間は掛からへんかった。紫色の稲光が雷雲の中で光り続けてる。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼‼‼」
今度はティラノが咆哮を上げた。シグナムとヴィータの攻撃をこれでもかと食らいながらもイグアナに向かって突進してくる様は恐怖以外の何物でもあらへん。雷雲を拡大してその姿を覆い隠そうとするイグアナへ、ティラノは大きく口を開いて純白の砲撃を発射。砲撃と雷雲が衝突すると、雷撃と閃光が拡散して周囲に破壊をもたらした。そっからは雷雲からの雷撃と砲撃の応酬や。互いに一歩も引かず、避けもせずに攻撃し続ける。
「我が主! シャマルに治癒魔法を!」
「う、うんっ!『シグナム、ヴィータ! 一時退却や! 巻き込まれる!』」
『『了解!』』
イグアナとティラノの攻撃は掠めるだけでも危険なもの。そやから悔しいけど今は離脱して、シャマルの治療を最優先や。シグナム達と合流して、外の武装隊に鎮圧が遅れることを伝え、私たちは少し離れたビルの屋上に降り立った。ここなら肉眼でイグアナとティラノの戦闘を確認できる。
――静かなる癒し――
屋上に横たえさせたシャマルの肌は、バグったテクスチャを貼られたような妙なものに変色してて、それが体を蝕んでるのかずっと苦痛に呻いてる。そんなシャマルを治すために治癒魔法を発動させるんやけど、全くと言っていいほどに効果が見られへん。
「なんでや!」
『主はやて。私も手伝いますので、いったんユニゾンを解除させてください』
アインスからの提案を受け入れてユニゾン・アウト。そんで2人でシャマルに治癒魔法を掛ける。それでもシャマルの容態は一向に良くならへん。焦りだけが募る中、アインスが「やはりこれは・・・」と、何か知ってるようなことを口にした。
「おいアインス! お前はこの呪いみてぇなもんが何か知ってんのか!?」
「呪い・・・。ああ、まさしく呪いだ。あのイグアナのような生物、信じがたいことだがおそらくは――」
アインスがそこまで言いかけた時、どこからともなく教会で聞くような綺麗な鐘の音が響いてきた。空から光の柱が降ってきたかと思えば、そこからティラノと同じ真っ白な体、体の両側面に無数の人面像、2つの頭部を持つ、全長数㎞はあろう「龍・・・!?」が出現した。長大な胴に比べて小さな両前脚には、ルシル君の神器“グングニル”のような、クリスタルの剣身を持つ長剣が握られてる。
「ここで新手かよ!」
「いや! アレだけではないぞ! あちらの地面からも何かが来る!」
シグナムの視線の先、地面から氷の柱が勢いよく何十本と突き出してきて、その表面からイグアナと同じように真っ黒な体、骸骨や氷の尖塔を体表面から生やした、巨大な二足歩行の巨大な翼竜(こっちは西洋風や)が這い出てきた。そんでイグアナとティラノに加勢するかのように龍と竜も戦闘を開始。建物の破壊は一気に進み、さらに結界も容易く破壊されるほどの魔力流が発生。結界が消失して元の世界に戻っても4頭の巨大生物は暴れ続ける。
『あ、あんなの、どうやって止めればいいです・・・?』
『無理だぜ・・・』
「しかし、この災害級の戦闘をこのまま見過ごすわけにはいかへん!」
「そういうこった! 気合を入れろ、リイン、アギト!」
『は、はいです!』『お、おう!』
結界の再発動までの時間稼ぎとしてシグナムとヴィータが巨大生物たちに向かおうとした矢先、空で一際強烈な閃光が発生した。また新手か?と絶望する中、収まった閃光の中から現れたものを見て、私だけやなくてみんなが「え・・・?」と漏らした。
光の中から現れたのは人で、男性2人に女性1人。男性の1人は王政ローマ時代の男性が着てたようなトゥニカとトガを身に纏い、太陽の仮面を付けてる。女性はクロスホルタービキニ、腰にパレオを巻いた格好なんやけど腰から下はなんと魚で、人魚ってことが判る。澄んだ青色の長い髪は風に靡いてて、ホンマに綺麗や。
私たちが目を見張ったのは残りの男性の姿や。銀色の髪、黒衣を身に纏い、蒼く輝く菱翼10枚、剣翼12枚の翼を背負い、左手にはクリスタルの穂を2つ有する大槍を携えてる。
「うそやろ・・・? これは夢なんか?」
早鐘を打つ心臓、浅く速くなる呼吸に、自然と私は自分の胸に手を添えた。顔は見えへんから断定は出来ひんけど、どうか本人であってほしいと願いを込めて私は全力で叫んだ。
「ルシルくぅぅーーーーーん!!!!」
私の声にその男性がピクッと反応して、私たちの方を見た。私たちがここに居ることにビックリしてるのが遠目でも判る。
「はやてぇぇぇーーーーー!!」
そんで私の名前を叫びながら、私の元まで文字通りの飛んで来てくれた。こんな状況やとゆうのに私とルシル君は互いに両腕を広げ、そのまま抱きしめ合った。
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