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歪んだ世界の中で

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第十七話 冬の入り口その八

「友井君が幸せになってくれれば」
「希望も幸せなのね」
「幸せって一人だけのものじゃない」
「うん、そうだよね」
「千春ちゃんもそう思うよね」
「そうだよ。幸せって独り占めするものじゃなくて」
 千春はまた話していく。
「それでね。限られたものじゃないから」
「幸せには限りがないよね」
「何処までも広く。大きくなるものだよ」
「そして一人だけのものじゃなくて」
「皆で分け合うものだよ」 
 幸せというものについてだ。千春は希望ににこにことして話していく。その笑顔にはまさにそれがあった。幸せ、それそのものがあったのだ。
「だからね」
「僕の幸せは」
「そう。その人ともね」
「一緒にだよね」
「幸せを拡げて分け合おう」
 千春はこう希望に言うのだった。そうしてだ。
 二人でテスト勉強もしてテストに挑む。それからだった。
 希望はそのテストの結果を全て見てだ。教室、もうすぐ終業式を迎えるそこで笑顔になっていた。そのうえで自分の前にいる千春に述べた。
「成績。よかったよ」
「満足してるのね。希望も」
「前よりもよかったよ」
 彼が今の家に入る後押しになった中間テストの時よりもだというのだ。
「クラスで七番だってさ」
「七番なのね。千春はね」
「うん、何番だったの?」
「六番だったよ」 
 満面の笑みでだ。千春は希望に自分のテストの結果を話した。
「希望が教えてくれた古典の成績が凄くよかったの」
「僕もだよ。千春ちゃんがグラマー教えてくれたから」
「グラマーよかったの?」
「うん、それが一番いい点だったんだ」
「それで七番だったんだ」
「千春ちゃんのお陰だよ」
 にこりとしてだ。希望は千春に話した。
「全部ね。本当に有り難うね」
「千春もだよ。千春だって希望が源氏物語教えてくれたから」
「だから」
「だから二人共だよね」
「そうなるね。二人共ね」
「教え合ったからこれだけの成績になったんだね」
 クラスで六番と七番になれたというのだ。一学期の希望からは考えることすらおこがましい成績だった。
「そうだね」
「そうだよね。本当にね」
「よかったよ」 
 また笑顔で言う千春だった。
「千春だけでも希望だけでもね」
「ここまでできなかったから」
「うん。だから」
「イルミネーション行けるね」
 希望はクリスマスのことを話した。
「これで何の心の曇りもなくね」
「そうだよね。テストの成績も満足できたし」
「それだとね」
 こんなことを二人で話してだ。そしてだった。
 二人でクリスマスのこと、そして新年のことも話した。二人は今幸せの中にいた。
 その二人を見てだ。今度は野田と永田がだ。教室の野田の席からだ。忌々しげに言っていた。
「何よあいつあんなににやにやして」
「あの娘もね」
「本当にね。もう幸せの絶頂にいますって感じで」
「むかつくわよね」
「全くよ」
 野田は苦みきった口で永田に述べた。
「何だっていうのよ。テストの成績もよかったって?」
「みたいね。何か七番とか言ってるわよ」
「私三十番だったわよ」
「私二十五番だったわよ」 
 とりわけだ。永田は忌々しげな口調だった。その口調と共に口が歪む。
「一学期の中間テスト六番だったのに」
「それが今はなのね」
「そう。二十五番よ」
「また随分下がったわね」
「ええ、本当にね」
 永田の口がさらに歪む。 
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