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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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046話 学園祭編 幸せの権利

 
前書き
更新します。 

 

シホはなにやらエヴァとネギの会話に耳を傾けながら、

「(ネギ先生、エヴァとデートの約束もしていたのか……これはいよいよ以て大物かもね)」

負けたらデートという約束事。
だが、エヴァはもう満足したとかいうが、それでも一度シホの方へと向き、

「しかし、私はまだこの大会を最後まで見ないといけない理由が出来たのでな」
「理由、ですか……?師匠(マスター)……」
「ああ。ぼーやもこのままだとシホとも決勝戦で戦う事になるだろう。もしかしたら面白い手品が見れるかもしれんぞ?」
「それって……」
「エヴァ。いまはここまでで……」
「むっ。そうか」

シホが間に入ってそう説得する。
それでネギは怪訝な顔をしながらも、

「シホさん……シホさんはなにかすることでもあるんですか……?」
「うーん……そうですね。それではネギ先生、エヴァと刹那の試合が終わったら紹介したい人がいるので一度落ち合いましょうか」
「紹介したい人、ですか……?」
「はい」

それ以上はシホは語らず、そのままエヴァ達は舞台へと上がっていく。
シホは思った。
きっとエヴァは刹那に対して幸せとはとか言う問答でもするんだろうと……。
エヴァは先ほど自然とネギ達と笑いあっている刹那の横顔を見てイライラしていた。
何か事を起こすのだろうと……。


そして試合が始まってからはそれがより顕著になった。

『最近、幸せそうじゃないか刹那?』

そのエヴァの一言とともに刹那は困惑しながらも試合を始まって、即座にエヴァの糸による操糸術にはまって何度も舞台で転がされていた。

「もともとエヴァは本気を出せば300体以上は人形を操れるって聞いたからあれくらい容易いかもね……それより」
「刹那さん……ッ!」

隣を見たシホは思わずため息を吐いた。
隣ではアスナが怒りを爆発させそうになっている。
問題は舞台の上で一方的にエヴァが刹那にある事を語りかけている。

『幸せになれると思っているのか?私と同じ人外の身の上で……』
『ッ……!』

刹那の顔は歪む。
それでもエヴァは語りをやめない。
そしてとうとう物理的に『ブチッ!』という音が聞こえるほどにはキレたアスナが叫んでいた。






「くおらぁ!!こぉのバカエヴァちゃん!!」





と。
それはすさまじいものでアスナはもう周りの目など気にせずに怒鳴り散らしていた。
それを感じてかエヴァは呆れた顔をしながらも、刹那にあることを促した。
次の瞬間にはまるでエヴァと刹那の時間だけが停止したかの如くその場から一切動かなくなった。

「あー……あれは幻想空間に引きずり込まれたかな?」
「え、シホ。なにかわかったの?」
「ええ。おそらくはパクティオーカードに夢見の魔法でも使えば見に行けると思うわ。それで、ネギ先生は見に行きますか?」
「はい!いきます!」
「わかりました。それでは私は私でエヴァとは契約していますので独自に行きますので遅れませんように。チャチャゼロも一緒に行く?」
「タノムゼ」

シホはそれでエヴァから教わってなんとか形にはなっていて使える夢見の魔法で幻想空間へとダイブしていった。
パクティオーカードを額につけたまま動かなくなったシホと一緒に行ったのであろうチャチャゼロを見て、

「兄貴!」
「僕達もいきましょう!」
「ええ!」

遅れてネギ、アスナ、カモミールの三人も幻想世界へとダイブした。





………………



そこではすでに戦場のような景色が映し出されていた。
別荘はもう爆撃にでもあったかのようにズタボロになっていて、あちこちで噴煙が上がっている。
そこでは特別な衣装で戦っている刹那がそれでもエヴァに圧倒されていた。

「選べ、剣か幸福か。剣を捨て、人間として生きるのも悪くはないぞ?」
「それは……!」
「選べんか?…………そうだな。それでは貴様はシホを見てどう思う?」
「どう、とは……?」

そこでなぜか自身の話になってシホは困惑の顔になる。

「なんでそこで私の話題を出すかなぁ……」

思わずつぶやくシホ。
しかし、ネギ達はそんなシホとは対照的に真剣な顔のままだった。

「ヒトとして生き、ヒトとして死んでいく運命だったシホは……その運命を無理やり捻じ曲げられた。吸血鬼となり果て永遠の時を生きる羽目になった。
シホはお前達に心を開いているように一見見えるだろう? しかし、私から見させてもらえばシホはある一定の距離感を貴様達と開けている。それはなぜか分かるか?」
「それは……」
「分からんか?ならば言わせてもらう。もうシホは普通に生きる道をとうに諦めているんだよ」
「そんな!!」

思わず刹那は叫ぶ。
人外でもやろうと思えば共存は出来る。
そう叫ぼうとして、

「貴様は知らんだろう。はるか昔から不死の者達は世界から蔑み怖れられ除け者にされてきた罪深い歴史を……」

そう話すエヴァ。
それに呼応してシホは独り言のように話す。

「…………そうね。私はもう諦めているのかもしれない」
「シホさん!?」
「シホ! ダメよ!そんなこと言わないで!」
「気遣ってくれてありがとう、二人とも。でもね……私はとうの昔に一回あの惨劇の中であらゆる凌辱をされて心を、身体を壊された……もう人間にも戻れない。だから……」
「そんなの関係ない!そりゃ辛い事もあったと思う。わたし達には到底共感も理解もできないと思う……それでも私は、シホとこれからも友達でいたい!」
「僕もです!」
「アスナ……ネギ先生」

そんな二人の説得に呼応するように、刹那もエヴァに向かって答える。

「剣も、幸福も……どちらも選んではいけないでしょうか? そしてシホさんの幸福も一緒に探してあげたいんです。ですから、私は剣も幸福もどちらも諦めません!」
「どちらもだと……?」
「はい!」






「ほざけガキが!!シホのような絶望も味わった事もない甘ったれの貴様にそれができるのか!!」





エヴァの渾身の叫び。
それは幻想世界を震わすほどであった。
それでも刹那は怯まずにただ一言「はい!」と答え切った。
それからはもう問答など不要とばかりに二人は今出せる最大奥義をぶつけた。
次の瞬間には幻想世界は砕けて、現実に引き戻される一同。

舞台の上では爆発が起こった後に刹那の渾身の振り抜きでデッキブラシはエヴァの腹に命中しそのままダウン。
カウントの後に刹那の勝利が決定した。

それから刹那はエヴァの事を褒めているようで、エヴァも「歳か…」と呟くほどだった。
アスナ達も駆けつけて刹那の過去の事について聞かされていると話す。
それを含めて、



「凛、ゴメン……。私は……もう幸せなんて掴めないのかもしれない」



そんなアスナ達の姿を眩しそうに感じながら一歩引いたところでシホは過去の友人に話すかのようにそう呟いた。








◆◇―――――――――◇◆





それから救護室に運ばれたエヴァはアスナと刹那に話したいことがあると言い、ネギを追い出した。
ついでにシホはエヴァの過去は聞かされているために、

「それじゃ私も少し席を外すわ。エヴァもそんなに私の話題は二人には話さないでよ?」
「あー、あー。わかってるよ」

そう言ってシホは救護室を出ていった。
それを合図にアスナ達にエヴァは自身の過去の事を話していく。

中世の時代、まだ人間だったが秘術で吸血鬼にされた事を……。

「それって……シホと同じ」
「そうだ。私とシホとではやり方は違うがおそらく根元は一緒の秘術で吸血鬼にされたのだろうな」
「そんな……」

そして魔女狩りも流行っていた時代、一回本気で火刑もされかけたこともあったが、実力で逃げて、倒してを繰り返して、ここでは話さなかったが他にも不死の仲間と一緒に世界へと挑んでいき、気づけば『闇の福音(ダーク・エヴァンジェル)』『不死の魔法使い(マガ・ノスフェラトエ)』として恐れられていた事。


そこまで話し終わって、



「わかるか。私はもう人並の幸せを得るには殺しすぎた。そして長く生き過ぎた……」

そう話すエヴァだったが、どう判断をしたのか知らないがアスナと刹那からはなぜか同情にも似た感情を抱かれて、

「大丈夫。今からでも幸せにはなれるって!」
「馬鹿か貴様!」
「うん。バカでもいいよ。でも、その権利はまだエヴァちゃんも持っているんだから」
「それは、シホにも同じことを言えるか……?」
「当然でしょ?」
「はい。きっとシホさんも……!」
「どうだろうな……」

アスナと刹那がそう自身を以て頷くが、エヴァは難しい顔になって、

「ここまで首を突っ込んだんだ。貴様等にはシホのある重要な事を話してやる。それを聞いた後でもそんな戯言を話せるかどうか、見ものだな」
「シホの事……?」
「それは……?」
「シホにはな…………―――――…………」


エヴァが二人に教えた内容はあまりにも残酷なものであった。
二人は言葉を失い、涙を流しながら嘔吐感に苛まれるほどの内容。
そんな二人の姿など目に入れずにエヴァはなお語る。

「いずれシホの運命は動き出す……それを貴様らは果たして心折れずに支えられるかな……?」

それはエヴァが二人に下す挑戦状のようなもの。
これを支えられなければシホの幸せを願うなど到底叶いもしない事だからだ。

それを黙って聞いていたチャチャゼロは、

「(御主人モ甘ェナ……。ソレヲ今教エチマッタラ後ノ愉悦ノ光景ガ半減スルゼ?)」

そういう思いに耽っていた。
もし、この内容をたとえば言峰綺礼やギルガメッシュが知ったら大笑いをして愉悦を感じていた事だろうか?
いま判明している事だけでも愉悦を感じるには十分ではあるのだが……。






◆◇―――――――――◇◆





エヴァ達と別れたネギとシホは、とある場所に向かっていた。
それはあまり人が集まっていないところ。

「シホさん? その、僕に会わせたい人って」
「よおよお、シホの姉さん。それってさっきの奴か?」
「まぁね。あ、いたわ」

シホが見つけた場所には寛いでいるアル……クウネル・サンダースの姿があった。

「おや……。シホと、それにネギ君」
「あなたは、クウネルさん」
「はい。あなたとはこうして話してみたかったんですよ。ですが、シホに破れてしまい私の計画も崩されてしまったわけですが……」
「計画って……」

ネギが少し身構える。
もしかしていけないことでもするのかという思いで。
しかし、アルは笑みを浮かべながらも、

「大丈夫です。悪い事など一切考えていませんから。それよりネギ君は私の能力を知りたいのではないですか?」
「ッ!はい、ほんの一瞬で煙にも隠されて見れませんでしたがなにか本のような能力なんですよね?」
「はい。私のパクティオーカードの能力は『特定人物の身体能力と外見的特徴の再生』です」
「ッ!?」

ネギはそれで驚愕の顔をする。
だが、アルは続ける。

「他にもあるのですが、再生できる時間も少ないですからあまり戦闘向きではありませんね。ですが、ある能力があります」
「そ、それは……?」

ネギは動揺しながらもその能力を聞く。
もしかして、もしかして……という思いに駆られながらも。

「もう一つは『全人格の完全再生』……効果は10分しかないですからこれも使える物ではないです。しいていうなら『歩く遺言』です」
「まさか!?」
「はい。私はとある人物の遺言を預かっています。『自分にもし何かあった時、まだ見ぬ息子になにか言葉を残したい……』と」
「…………ッッッッ!!」

ここまで言えば聡明なネギの頭脳はとある答えに辿り着く。
同時にそれはこの大会ではもう叶わないという事も……。

「ですが、シホは私の気持ちを汲むことができます」
「し、シホさんが……?」

そこで今まで黙っていたシホが口を開く。

「はい。私の『贋作の王』はカードに蓄積された想いもすべてコピーできるんです」
「そんな!?そんな事も出来るんですか!?」
「シホの姉さん!それじゃもしかして兄貴と決勝で!?」
「それも含めて……ネギ先生にはとある事実を教えておきたいんです。最後は選択するのはネギ先生の意思ですから」

シホはそう言って懐から剣の柄……しかしその先にはまるで棒状の宝石のような不格好なものが生えているものを取り出した。
それをネギの額に向ける。

「シホさん……な、なにを……?」
「今からネギ先生に万華鏡のように連なる世界の一つ……私という異世界人がこの世界に介入しなかった世界のとある光景を見せます。そして決めてください。ネギ先生の判断に私は従います」

そして有無を言わさずに宝石状の剣……宝石剣ゼルレッチから七色の光が漏れ出した。
ネギは見る事になる。
それを見たことによって“判断”を決めた。





…………こうして麻帆良武闘会は佳境へと迫っていく事になる。



 
 

 
後書き
ネギにはとある光景しか見せません。
それがどうなるかは、あまり変わらないのかもしれませんね…。

それと、シホが使ったことによって『トリガァッ!』が成されています。分かりますね? 
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