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イベリス

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第二十三話 愛と二人でその十一

「もう完全に破滅していて」
「どうしようもなかったから」
「だからね」
 その為にというのだ。
「ああした独裁者が出て」
「それでなの」
「ドイツを何としてもね」
 それこそ極端な独裁を行ってだ。
「救おうとしたかもね」
「そうなのね」
「ヒトラーが出なくても」
 それでもというのだ。
「独裁者は出たかも知れないわ」
「ドイツ国民が欲しがって」
「ヒトラーは救世主だったのよ」
「ヒトラーが!?」
「そうよ、当時のドイツ国民にとってはね」
 敗戦と賠償金と世界恐慌で破滅していた彼等にとってというのだ、インフレは一億倍に達し経済は完全に破綻していたのだ。
「まさにね」
「ヒトラーは救世主だったの」
「どうしようもない自分達を救ってくれる」
 そうしたというのだ。
「救世主だったのよ」
「それでヒトラーが総統になったの」
「実際救ったしね」  
 その政策によってだ。
「インフレは収まって雇用も確保されて生活も向上して治安もよくなって」
「いいこと尽くめだったの」
「誇りも何もなくなってたけれど」
「その誇りもなの」
「ゲルマン人第一主義を掲げてね」 
 このことも歴史にある通りだ。
「強い軍隊も復活させて」
「ドイツをよくしたから」
「実際に一度はね」
「ドイツを救ったの」
「あんまりにも酷かったから」
「救世主を欲しがっていたの」
「だからヒトラーが画家になっても」
 そしてナチスが政権に就かずともというのだ。
「当時のドイツ共産党が凄い勢いだったから」
「共産党?」
「そう、共産党が政権握って」  
 この可能性も充分にあったのだ、当時のドイツでは。
「それでソ連と一緒になってね」
「当時のソ連ってスターリンよね」
「あの独裁者と組んで」
「それも怖いわね」
「そうなっていたかもね」
「何か色々難しいのね」
「そうね、ヒトラーは私人としてそうで」
 その生活態度から批判される謂れはない人物だったのだ。
「弱い者いじめなんてこともね」
「私人としてはしなかったの」
「ユダヤ人やロマニの人達や障害者の人達を迫害したけれど」
「個人としてはなのね」
「そうしたことはね」
 いじめ等はというのだ。
「しなかったのよ」
「そうした人だったのね」
「偏見の塊だったけれど」
 それでもというのだ。
「そうした人で能力もね」
「物凄く高かったわね」
「だから一度はドイツを救えたのよ」
「そうなのね」
「そのことは覚えておいてね」
「ヒトラーのことも」
「そう、それとね」
 愛はさらに言った。
「煙草のお話だけれど」
「それね」
「やっぱり吸わないならね」
「それが一番ね」
「無駄にお金も使わないしね」
「そのことも大きいのね」
「お酒と違って完全に身体に悪いから」
 そのことがわかっているからだというのだ。
「しないならね」
「それに尽きるわね」
「そうよ、それじゃあね」
「ええ、今から」
「原宿歩いて」
 歩行者天国をというのだ。
「それからスパゲティも食べて」
「カラオケも行って」
「楽しみましょう」
 笑顔で言ってだった。
 二人で原宿を楽しみに入った、歩行者天国の店やパフォーマンスを見るのもかなり楽しいものだった。


第二十三話   完


                  2021・7・15 
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