先輩の為に

「あの娘いつも来てるけれど」
「やばくない？」
「悠ちゃんの周りのこと何でもしてるけれど」
「髪の毛のお手入れまで」
「あの娘ストーカーよね」
「そうよね」
「もうどう見ても」
　その綾音を見て言うのだった。
「怖いものがあるわよね」
「あそこまでいったらね」
「大丈夫かな、あの娘」
「何時か悠ちゃんを襲うとかね」
「思い詰めて」
「何かの弾みで」
　危惧する者すらいた、だが綾音は止まらなかった、それでだった。
　常に悠を見て彼女の世話を焼いていた、そしてその中で。
　悠のクラスメイト達彼女と親しい者達のところに来てこう囁いた。
「あの、先輩のボディーガードですが」
「一人危ない娘がいるからね」
「気をつけてるわよ」
「もう充分以上にね」
「その人も気になりますが」
　自分のことだとは露程に思わずに述べた。
「今大変なことになりかねないです」
「っていうと？」
「その娘が何かするんじゃないの」
「そうなの」
「あの、役座高校の桝添っていますね」
　綾江はこの輩の名前を出した。
「あいつのことは」
「ああ、桝添ね」
「あの最底辺で県内でも選りすぐりの屑が集まる高校でも特に屑で」
「卑劣でケチで姑息で器が小さくて」
「しかも物凄い女好きでモラルもなくて」
「その癖口が上手くて取り巻きだけ多いのよね」
「あの最低野郎がどうしたの？」
「その最低野郎がですよ」　
　その桝添がとだ、綾音はさらに話した。
「先輩に目をつけたらしくて」
「それでボディーガードね」
「そのことをっていうの」
「はい、皆さんにもお願いしたいです。先輩に何かあれば」
　綾音は真剣そのものの顔で言った。
「取り返しがつかないですから」
「それで私達にもなのね」
「悠ちゃんのことを守って欲しいのね」
「あの桝添から」
「はい、私も何とかしますが万全を期して」
　それでというのだ。