イベリス
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第二十二話 ゴールデンウィークに入りその十一
「とてもね」
「いつも食べられないわね」
「そんないつもそうしたもの食べられるなんてね」
「フォアグラとかを」
「もう大金持ちよ」
やはり笑って言った。
「私達なんかより遥かにね」
「そうよね」
「私達は庶民だから」
「普通のもの食べるのね」
「内臓もね。それで普通の内臓の方がね」
「ずっと健康的よね」
「あんたもフォアグラ食べたことあるでしょ」
「キャビアもトリュフもね」
咲はすぐに答えた。
「お父さんとお母さんが私が中学校に入学した時に」
「お祝いにレストランに連れて行った時に食べたでしょ」
「その時に食べたわよ」
「それでどうだったかしら」
「確かに美味しいけれど」
それは事実でもとだ、咲は母に答えた。
「私はお寿司の方がね」
「いいのね」
「流石に回転寿司よりはいいと思うけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりね」
「そんなに美味しいと思わないでしょ」
「珍味だとか大層に言う位はね」
そこまではというのだ。
「本当にね」
「お母さんもそう思うわ」
「そうなのね、お母さんも」
「だからね」
「あまり食べないのね」
「安くても」
例え値段の問題がなくともというのだ。
「それでもね」
「出来るまでの経緯がそうで」
「それで栄養的にもだから」
問題があるからだというのだ。
「それでよ」
「フォアグラは食べないわね」
「そうしていくわ、それに最近問題になってるし」
「ああ、動物虐待よね」
何故問題になっているか、咲もすぐに察した。
「首から下埋めて無理矢理食べさせるって」
「そうして作るからね」
「だから問題になってるのね」
「あんな酷いやり方ないからね」
「ただ食べるよりも酷いわね」
「だから問題になってるのよ」
こう娘に話した。
「最近はね」
「それも当然ね」
「そう、まあ兎に角生きものの内臓を食べること自体はいいけれど」
それでもというのだ。
「フォアグラはね」
「高い、食べものとして健康的かどうか」
「そして作る過程が酷過ぎるからね」
「止めるべきね」
「それに咲も好きじゃないなら」
「余計にね」
「食べる必要ないわ、鶏のレバーの方がいいわよ」
こちらの方がというのだ。
「ずっとね」
「そうね、それじゃあね」
「そっちを食べるのよ」
「そうするわ」
母に笑顔で応えた、そうしてだった。
咲はこの日の夕食も楽しんだ、そうしてゴールデンウィークの最初の一日を楽しく終えたのだった。
第二十二話 完
2021・7・8
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