おっちょこちょいのかよちゃん
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163 失踪の呵責
前書き
《前回》
かよ子達がいない学校でたまえやとし子は寒さに耐えながらマラソン大会の練習に励んでいた。そして清水に到着したフローレンスは奏子から聞いた藤木が好きになっていたという笹山かず子との接触にせいこうするのだった!!
かよ子達藤木救出班は先に進む。
「こちら椎名歌巌。馬子に稲目という奴等を撃破した。これより先に進む」
椎名が本部に連絡を入れた。対してイマヌエルが返答する。
『了解。それから山田かよ子君の羽根に玄奘の能力が流し込まれたのではないだろうか?』
かよ子は気づくのが早いと思った。
「は、はい、そうです!」
「了解。君の羽根はさらに強力になっている事は事実だ。但し、過信しないように」
「はい、了解です!」
かよ子は目的達成の為に更に先へ進むのであった。
笹山は家に入ると、宿題を済ませた。その後、おやつも用意した。その時、あのクリスマスの日に届いた手紙も出す。そこには「もう君の事は忘れるようにする」という旨が書かれた藤木からの手紙だった。
(この手紙を見せれば解ってくれるかしら・・・?)
笹山はとりあえずフローレンスを呼ぶ事にした。
「フ、フローレンスさん・・・!!」
笹山は窓から呼んだ。約束通りフローレンスが現れた。
「お待ちしておりました」
フローレンスは飛行して入って来た。
「あの、これどうぞ」
笹山はおやつとして持って来た手作りのクッキーをフローレンスに差し出した。
「これはこれは・・・。では手を清めさせていただきます」
フローレンスは手を出すと水の塊が出現し、手を潤させた。
「この水の塊で手を消毒させますことができますのです」
「凄い・・・」
フローレンスはクッキーを貰い、ゆっくり味わいながら食べた。
「手作りですか?」
「はい、お母さんと作りました」
「そうですか。とても美味しいですね」
「ありがとうございます」
笹山は自分の手作り料理を美味しいと評価されてとても嬉しく思った。
「さて、本題に入らせていただきますが・・・」
笹山はごくりと唾を呑んだ。
「藤木茂君とは確か同じ学校に通っていると聞きました」
「はい、前に私が藤木君と山田かよ子さんって女の子と一緒に学校から帰る途中の事でした。その時、野良犬が出てきたんです。藤木君は私を連れて逃げたんですが、山田さんの事は見捨てて逃げたんです。私は藤木君が山田さんを見捨てた事に怒ったんです」
「山田かよ子ちゃんはその野良犬に襲われます事なく無事でしたのですか?」
「はい」
「確かに藤木茂君の行いました事は正しいとは言えませんわね。それで愛想を尽かしましたのですね?」
「はい、その通りです・・・」
笹山は力なく答えた。
「それで、クリスマス・イブの夕方にこんな手紙が届いたんです」
笹山は藤木からの手紙をフローレンスに見せた。フローレンスは手紙を読む。「今、自分がいる世界」では通用しない言葉だったので、脳内で翻訳機能をしてその手紙を読んだ。
「そうでしたか・・・。しかし、藤木茂君は貴女と山田かよ子ちゃんに謝りませんでしたか?」
「一応謝りました。次の日に・・・、でも私も山田さんも今更謝っても遅いってその時は許しませんでした」
「『その時は』ですね・・・。今はどうしたいと思っていますか?」
「今は・・・。藤木君を・・・」
笹山は昔の事を思い出しながら涙がこぼれる。こぼれながらも答え続けようとする。
「許してあげたいです・・・」
フローレンスは笹山の思い出し泣きを見てある事をしてあげたいと考えた。
「・・・そうですか。今、『私がいます世界』では山田かよ子ちゃん達が藤木茂君の救出に向かっています。今、『私がいます世界』では『敵対します世界』と戦っています。今、私は日本各地で選ばれし者達に頼みまして『私がいます世界』に招き入れまして戦ってくれています。貴女の学校でも幾人かその異世界へ向かっています事はお気づきになっていますでしょう?貴女の近所に住みます徳林奏子ちゃんもその一人です」
「はい・・・」
(今、お姉さんや山田さん達は戦って動いてくれている・・・。藤木君を取り返す為に動いてくれている・・・)
笹山は近所に住む女子高生が戦っている。そして自分のクラスメイト達も戦っている。なのに自分は無力だ。そのままただ皆が帰ってくるのを待ち続ける事しかできていない。それでいいのか。
「私が招聘しました人は皆何かしらの能力を宿します人。ですが、厳しい事を言いまして申し訳ございませんが、笹山かず子ちゃんにはその能力を持っていませんね。しかし、藤木茂君が戻ってきて欲しいとそれでも願いますならば・・・」
笹山は改めて顔を上げた。
「私は貴女を私が住む『平和を正義とします世界』にお連れ致しましょう。藤木茂君を連れ戻しにですね」
「私が、行っていいんですか?」
笹山は自分も行っていいのかと思い、半信半疑になった。
「はい、急な話で驚かれましたか?」
「は、はい・・・」
「今すぐ来なさいとは言いません。行きますか行きませんかは貴女のご判断次第でお任せしております。私達の方もできます限りの事は手をお貸ししますが、危険な冒険になります事は確かです。それでも藤木茂君に戻ってきて欲しいと願いますならば私はお連れ致します。それでは・・・」
フローレンスは笹山にある物を差し出した。それはボールペンのような白い物だった。
「私はこれで失礼致します。時間を与えますので決意が決まりましたらこの道具の上の蓋を押してください。いつでも私は参ります。それでは」
フローレンスはその場で姿を消した。
「あの人は一体・・・?」
笹山は天使のような人物にどこかしらの不思議さを感じた。そしてフローレンスから渡された道具を確認する。
(行くか、行かないか・・・)
笹山は改めて考え直す。自身もまた、欠席しているクラスメイト達や近所の女子高生がいる異世界に向かうか、それとも、そのまま皆に任せてその場で藤木が戻ってくるのを待つか・・・。
フローレンスは三保神社に移動していた。
「御穂津姫」
「如何なされましたか?」
「私を『あの世界』にお戻し下さい」
「了解しました」
「それから一つ、貴女にお伝えしたい事がございます」
「お伝えしたい事?」
「一人の女の子を私がいます世界にお通しします可能性がありますかもしれません。その為に世界を繋ぐ道を常時お開けしていただけますでしょうか?その子の名は笹山かず子ちゃんと申します」
「了解しました」
フローレンスは自分が今統括する世界に戻るのだった。笹山の答えを待ちながら。
(きっと笹山かず子ちゃんはすぐに答えを出しますでしょう・・・。そして『杖の所有者』山田かよ子ちゃん達にとって大きな力にもなります・・・)
後書き
次回は・・・
「異世界の夕刻時」
藤木の救出に向かうかよ子達は異世界で夕暮れを向かう事になる。夕食の時間が訪れる、休息時とするのだったが、かよ子はこの休み時を敵が襲ってくるのではないかと心配になっており・・・。
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