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それだけは苦手

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第二章

「御免なさい、迷惑かけて」
「かけてないわよ」
「別にね」
「確かに驚いたけれど」
「大事じゃないし」
「ただムカデ怖いみたいだけれど」
「そうなの、昔からね」
 どうしてもとだ、友香は山の中にある岩の上に腰掛けて周りで気遣ってくれているクラスメイト達に話した。
「ムカデだけはね」
「苦手なの」
「そうなの」
「だからなの」
「ムカデを見たらなの」
「もうそれだけで」
 まさにムカデを見るだけでというのだ。
「気絶してしまうの」
「そうなのね」
「原っちそこまでムカデが嫌いなのね」
「そうだったの」
「だから」
 それでというのだ。
「さっきはね」
「そのムカデを見て」
「それで気絶したのね」
「そうだったのね」
「そうだったの、本当にムカデだけは」
 項垂れた顔のまま述べた。
「駄目なの」
「そういうことね」
「もうムカデはいないから安心して」
「もう何処か行ったから」
「大丈夫よ」
「それならいいわ、よかったわ」
 ムカデがいなくなってとだ、友香はほっとした顔になって述べた。
「それじゃあ」
「また歩きましょう」
「あと少しね」
「もう少し集合時間だし」
「それじゃあね」
 友香は微笑んだ、そして腰を上げて。
 クラスメイト達と共に山の中を歩くことを再開した、そのうえでオリエンテーションを最後まで楽しんだが。 
 その後でだ、クラスメイト達は話した。
「人間味少ないと思っていたけれど」
「原っちもああした一面あるのね」
「ムカデが物凄く苦手で見ただけで気絶する」
「そんな一面もあるのね」
「意外な一面だけれど」
「人間ね」
 こう話した。
「怖いものちゃんとあるのね」
「それでいつも冷静だって思っていたら」
「ちゃんと驚く時もあって」
「絶叫して気絶したりもするのね」
「見た私達も驚いたけれど」
 それでもと言うのだった。
「原っちも人間ね」
「ちゃんとああしたところあるのね」
「人間でね」
「人間味もちゃんとあるのね」
 笑顔で話した、そしてだった。
 以後友香を人間味がないと言うことはなくなった、しかし彼女にムカデの話をすることはなかった。彼女があまりにも怖がっているのでそれはしなかった。そこはクラスメイトの彼女への気遣いだった。


それだけは苦手   完


                  2021・9・22 
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