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最期の祈り(Fate/Zero)

作者:歪んだ光
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拾う者 (失った何か)

「……い、おい、起きろ」
……声がする。眠い。一体だれが僕(死人)の名を呼ぶんだ?しかし、僕の意志とは無関係に瞼は開いた。
「……なぜ?」
思わず呟いてしまった。もう、この眼は開かないと思っていたのに……
瞬間、体が引き起こされた。いつの間にか、目の前にはずぶ濡れになった女性がいた。
「なぜ……とは、どういうことだ?まさか、自殺未遂か?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!?状況が理解できない!」
思わず悲鳴をあげてしまった。一体、自分の預かり知らぬところで「なに」がおきた?
「状況?そこの海で溺れていたお前を助けた。それだけだ!」
いまいち、事態が把握出来ない。が、よく見ると僕も、目の前にいる女性もずぶ濡れだ。
……察するに、何らかの理由で海に投げ出されたのだろう。そこを、この人に助けて貰った、というところか……
(何があった……!)
思わず頭を抱えてしまう。僕が死んでいる間に何があったんだ……
だが、考えるのは後だ。目の前で首を締め上げている女性を説得する方がさきだ。この人は恐らく、僕が自殺を企てたのではないかと疑っている。つまり、勘違いだが、僕が自殺をしたことに怒っているのか。

「……別に、自殺未遂じゃないですよ」


そこから、色々な言い訳をしてどうにか疑いを晴らした。何で見ず知らずの相手に言い訳しているのかと、気が滅入りかけたが、不思議と嫌な感じは無かった。





「それにしても酷いなぁ。いきなり自殺未遂者扱いだなんて」
「しょ、しょうがないだろう。そんな死んだ目をした男が海で発見されたのだ。当然の扱いだろう?」
「まぁ、それもそうか……」
この女性と話しているうちに、どうも奇妙な異変に気付き始めた。どうも、話しが噛み合わなかったりする。それに、
(……魔術基盤が、あやふやだ……)
説明は省くが、この世界で魔術が使われた痕跡が一切感知出来ない。明らかにおかしい。少なくとも、ここが冬木なら絶対に何らかの痕跡が発見される筈なのに……
不味いことに、ここは本当に僕が知る世界なのか、という事にも確信が持てない。
「……どうしたものか」
「どうかしたのか?」
「ん?ああ、いや、何でもないですよ」
「言え。二度は言わん」
なぜだ?急に嫌な汗が流れ始めた。いつの日か、アイリに舞弥を紹介したときの感覚に酷似している……!
「えーと、じゃあ、一つ。○○県の冬木、という町をご存知ですか?」
「冬木……ああ、それなら……」
頭の中で考える。
(もし、冬木の町が無いならここは別世界だと考えた方がいい。しかし、仮にあったとしても……)
しかし、現実とはいつも都合よくは進まない。
「冬木の町なら10年前に無くなった」


「は?」
図らずも間抜けな声を出してしまった。今……なんと
「確か、2001年に、隣町と合併して冬木の町は消えた」
……事態は思ったより複雑だ。まず、少なくともここは僕のいた時間軸ではない。加えて、町の統廃合。冬木に遠坂があるように、他の町にもセカンドオーナーがいる。そう簡単に町の統廃合が進む筈か無い。
「どうした?顔色がおかしいぞ」
「あ、ああ」
まともに返事が出来ない。今の自分に起こった可能性は2つ。1つは時間移動。これだけならまだいい。しかし、もう1つ。ここが平行世界だという可能性。こちらは見過ごせない。仮にここが件の世界だとしたら生きていくだけで様々な問題が出てくるだろう。想像するだけで目眩がする。
「……お前、名前は?」
思索の海から救いあげてくれたのは、またしても彼女だった。
「名、前?」
「そうだ、さっきからなんと呼べばいいか解らなくてな。良ければ教えてくれないか」
そういうと、最初、僕に対して怒ったのとは正反対の、優しい笑みを浮かべた。


……悩むのは後にしよう。もし仮にここが平行世界だとしても、偶然拾ったような命だ。そこまで神経質になる必要はない。今は、



「衛宮……切嗣。それが僕の名前だ」
少し、潮を含んだ風が前髪を撫でた。
「衛宮、か。私の名前は織斑、織斑千冬だ」



目の前の優しい女性に答えよう

ここに、新たなストーリーが始まった。彼が、この世界で救われるのかは解らない。しかし、それでも、何かを拾えるかも知れない一歩でもある。





その後のこと。
「さて、こんなところにお前のような子供がいた理由を訊かせて貰おうか」
「子供?これでも、大人の筈なんですが……」
「これを見てもか」⊃鏡
「ん゛?」
鏡の中の切嗣(但し16歳バージョン)「やあ、俺だよ。おれおれ」
海辺に、かつて正義の味方に憧れた者の慟哭が響いた。

……まぁ、拾うものも有りそうだけど、失うモノもありそうだね…… 
 

 
後書き
何とか、2話も書けました。サブタイの()はアレです(笑)
個人的に切嗣は25歳くらいがベストだと思うのですが、あまりにも絡ませづらいので縮めましたorz
さて、第三話ですが、少し途中経過経過を省こうかと思います。あまり、経過をダラダラ書きすぎるのもどうかな、と思うので。次回は、普通に自己紹介のくだりから。
続け
追伸
第三話は明日になりま〜す。  
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