Fate/WizarDragonknight
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無双龍
『ウォーター プリーズ』
土から水へ。
さらにウィザードは、ソードガンをの手を開いて、魔法も追加する。
『コピー プリーズ』
魔法により複製した、合計二本のウィザーソードガン。ウィザードはそれで、敵へ立ち向かう。
ファウストの両腕の間に、赤黒い雷光が行き交う。
それを圧縮するように向けることで、それは放たれる。
ウィザードと龍騎はそれぞれジャンプでそれを避ける。座席を吹き飛ばしながら炸裂するその風を受けて、ウィザードはトレギアへ突っ込む。
「おいおい……まさか無策じゃないだろうな? 何をするつもりなのかな?」
「さあ? 俺の大道芸はいつも、最後までお楽しみなんだよね」
軽口を叩きながら、ウィザードは攻め入る。
鼻を鳴らしたトレギアは、その攻撃をいなす。やがて、ウィザードとトレギアは、龍騎と二体の闇のヒューマノイドからどんどん離れていく。
「一度は心が折れたのに、君もよく頑張るねえ」
トレギアの手は、適当に振るわれているように見えて、的確な防御。そして、回り込んでからの足蹴りで、ウィザードのバランスも崩される。
「だったら……!」
水のウィザードの特徴である、膨大な魔力量。それは、他の形態では不可能な発動魔法の不一致も可能とする。
『『キャモナスラッシュシェイクハンド キャモナスラッシュシェイクハンド』』
二つのウィザーソードガンに、二つの宝石を読み込ませた。
『ウォーター スラッシュストライク』
『ハリケーン スラッシュストライク』
水と風が、二本のウィザーソードガンの間で入り混じる。やがて暴風となったそれを、トレギアへ放つ。
「いい手品だ。だが、そんなもの通じはしないよ」
トレギアは冷笑とともに、黒い雷を放つ。
ウィザードが二つの属性を混ぜ合わせて作った攻撃は、闇の一撃の前にあっさりと消滅した。
「ほら? もうネタ切れかい?」
「まだ分からないよ……! 真司! ドラグレッダーを!」
『アドベント』
ウィザードの声に、真司はカードで返した。
召喚されたドラグレッダーは、トレギアへ向かって突進する。
「邪魔だな」
トレギアは飛び退くことで、烈火龍の攻撃を回避。
そのまま流れるように動くドラグレッダーは、ウィザードの前を通り過ぎていく。
「よし!」
『エクステンド プリーズ』
ウィザードは、ドラグレッダーが通過する進路上に、魔法陣を発生させる。
伸縮の魔法により、ドラグレッダーの体がより柔軟なものになる。
さらに、ウィザードは続ける。
「ドラグレッダー! 少しの間だけ、俺に従ってくれ!」
「_____________________」
だが、ドラグレッダーの返答は拒否。それを証明するかのごとく、ドラグレッダーはその尾の刃で、ウィザードを斬りつけた。
「うわっ!」
切り払われる客席を見て、ウィザードは冷や汗をかく。
「おっかないなこれ……ドラグレッダー!」
「____________!」
「頼むよ! 一緒にドラゴンライダーキックした仲でしょ!?」
「____________!」
だが、ドラグレッダーは吠える。明らかにウィザードへの友好関係は築けていない。
「うわっ! もしかして、今の俺が火属性じゃなくて水属性だから嫌がられてるの!?」
ドラゴンの言葉など分かるわけなどない。
ドラグレッダーは、ウィザードに対して敵意の眼差しを向けている。
「あっはははは! 傑作じゃないか」
その様子を見て、トレギアが肩を震わせた。
「まさか、サーヴァントの飼い慣らしが出来ていないのかい? それでよく氷川紗夜を助けると大見得を切ったものだ」
「ドラグレッダー!」
「_____________!」
ウィザードの声に、ドラグレッダーは従わない。
むしろ火炎を吐き、ウィザードをトレギアごと攻撃してくる。
「っ!」
ドラグレッダーがいるかいないかで、ウィザードの考えの成功率が大きく変わってくる。
どうすればいいのかと思案する中で、声が聞こえてきた。
「ドラグレッダー!」
それは、龍騎の声。
ファウスト、メフィストと戦いながらも、ドラグレッダーの主は、必死にドラグレッダーへ懇願した。
「頼む! ハルトに従ってくれ! 俺は人を守るために戦いたいんだ! ハルトも、俺と気持ちは同じだ!」
すると、ドラグレッダーは吠えない。
悩むかのように、顔を下ろした。
「ドラグレッダー?」
「ドラグレッダー! 俺たちは、前の世界で、世界を救えなかった!」
メフィストの爪をドラグセイバーで受け流し、返しにドラグクローで殴りつける。その攻防を繰り広げながら、龍騎は叫んだ。
「お前がそれを望んでいたのか、俺には分かんねえ! お前はただ俺に従っていただけなのかもしれねえし、お前が心の底だったら嫌だったのかもしれねえ!」
ファウストが、背後から回り、龍騎の首を絞めつける。苦しみ、そこから全身へダメージを受けながらも、真司は叫ぶ。
「お前が望むなら、この戦いが終わったら俺を喰ってもいい! だから、今だけはハルトに協力してくれ! 俺は人を守るためにライダーになったんだ! お前も、今だけはその気持ちを持って欲しいんだ!」
ドラグレッダーは、龍騎を、そしてウィザードを見比べる。
しばらく顔を落とした後、吠えた。
そして。
「ありがとう……! ドラグレッダー!」
ドラグレッダーは、ウィザードと並び立つ。
『シャバドゥビダッチヘンシーン シャバドゥビダッチヘンシーン』
「ドラグレッダー……行くよ!」
『フレイム プリーズ』
ウィザードは息巻いて、サファイアの指輪をルビーと入れ替える。ドラグレッダーと同じく、火のエレメントを持つ魔法陣が、水のウィザードを火に書き換えていく。
「そんな中途半端な姿で、一体何をする気だい?」
「決まってるだろ……紗夜さんを助けるんだよ!」
結局何がドラグレッダーの心を変えたのかは分からない。
だが、その代償が何であろうと___例え命だったとしてもかまわない。
今だけは協力してくれるなら。
ドラグレッダーは、その長い胴体を駆使して、トレギアへ攻撃しようとする。
「小賢しい!」
トレギアは爪で空間を引き裂き、その衝撃波でドラグレッダーを攻撃する。胴体から火花を散らしながらも、ドラグレッダーは再び宙へ躍り出て、トレギアへ挑む。
しかも今度は、ウィザードもいる。
対となるウィザーソードガンが、トレギアへ牙をむく。
「だが、君では私には遠く及ばない。自分でも分かっているんじゃないのか?」
「どうかな? まだ分からないよ!」
『ルパッチマジックタッチ ゴー』
ウィザードライバーを待機状態にし、さらに魔法を発動。
『ビッグ プリーズ』
会場の地面を払いのけるように、ウィザードの手が那ぐ。
当然トレギアは上空へ避けるが、そこにはドラグレッダーが待ち受けていた。
咆哮とともに頭突きをするドラグレッダー。だが、大したダメージもなく、トレギアは電撃で炎の龍を迎え撃つ。
だが。
『ディフェンド プリーズ』
炎の龍の前に、火でできた壁が現れる。
ドラグレッダーを守り、また壁を突き抜けたドラグレッダーへ炎の力を追加する。
「何!?」
トレギアが驚く間もなく、ドラグレッダーの肉体がトレギアへ激突した。
さすがのトレギアも、ミラーモンスター屈指の強さを誇るドラグレッダーには無傷ではいられない。
一瞬の機動力の低下。そして、それこそがウィザードが狙っていたものだった。
「ドラグレッダー! トレギアの動きを止めてくれ!」
「_________!」
ウィザードの合図とともに、ドラグレッダーが動く。
伸縮の魔法を受けているドラグレッダーの胴体は、普段以上に長く、そしてしなやか。
トレギアの体を拘束し、動けなくする。
「何!?」
そして、この状況こそが、ウィザードが待ち望んでいたもの。
わずかに拘束されていないトレギアの右手を掴み、中指に切り札の指輪を嵌め込む。
「何を……?」
トレギアが疑問を抱くよりも先に、ウィザードはトレギアの中指に付けた指輪を読み込ませた。
トレギアに魔法を使うための指輪。
それは、これまで聖杯戦争で一度も使ったことがない魔法。
『エンゲージ プリーズ』
「これは……ッ!」
「よし! 成功だ!」
トレギアの体に、魔法陣が発生する。
それは、相手の精神___心の世界に入り込むための魔法。
本来は、絶望したゲートと呼ばれる人間を助けるための魔法だが、今回はトレギア……正確には、その体である紗夜の心に入るための魔法となっている。
「紗夜さん……! 今助ける!」
ウィザードはそう言って、魔法陣へ駆け込む。
だが。
「させるか!」
寸前で、トレギアが叫ぶ。
初めて聞いた、トレギアの尖った声。それは、黒い雷として帰って来た。
トレギア自身ごと、黒い雷の洗礼を浴びる。ドラグレッダーの拘束を解きながら、ウィザードの接近も妨害したのだ。
「ぐあっ!」
まさか、抵抗できるとは思わなかった。
ウィザードの上に振って来た無数の客席。それは、ウィザードを動かさまいと、下半身を完全に固めてしまった。
「まずい……!」
魔力が安定しない。
トレギアにかけたエンゲージの魔法が解かれつつある。
このままでは、紗夜の心に入れなくなる。
その時。
「これ……ッ!」
ウィザードにも聞き覚えのある声。
何で逃げなかった。そう、思ってしまう。
ココアが、ウィザードが倒れている客席の山の、ほんの反対側にいる。
戦っている内に、逆にココアに近づいてしまったようだ。
「ココアちゃん……!? なんで……」
「あれって……紗夜ちゃん……!?」
瓦礫の山のせいで、ココアからウィザードは見えていないようだ。彼女はただ、トレギアの顔に浮かび上がる紗夜の幻影を凝視している。
『保登……さん……!』
トレギアの顔に、紗夜の姿が浮かび上がっては消える。
「もしかして、紗夜ちゃん、あの悪い人に囚われているの?」
「理解力高いな……じゃなくて、ココアちゃん! 行かないで!」
「紗夜ちゃん!」
「ダメだ! 危ない!」
飛び出そうとするココアを、ウィザードは抑えようとする。
だがココアに、動けないウィザードの手が届くはずもない。
ウィザードが止める間もなく、ココアの体は、エンゲージの魔法陣へ突っ込んでいった。
やがて、魔法陣の消滅とともに、ココアの姿は、トレギアの中へ消えていった。
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