物語の交差点
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とっておきの夏(スケッチブック×のんのんびより)
水車小屋にて
ー水車小屋ー
れんげ「ここ、ウチのおすすめスポットなん!」
次にれんげが案内したのは水車小屋だった。
およそ80年前に造られた歴史あるもので現在も修理を繰り返しながら大切に使われている。
なっつん「おおー、水車か!」
れんげ「これ、80年ぐらい使われてるん」
朝霞「貫禄がありますねえ」
蛍「私、水車は初めて見ましたよ」
空「」ウンウン
れんげ「ほたるんたちも初めてなん?ほのかちんも同じこと言ってたのん」
空:ほのかちん?
れんげ「ここで知り合った子なん。そのときはーーー」
?「れんげちゃーん!」
れんげが説明しようとしたとき、れんげと同年代ぐらいの少女が駆け寄ってきた。
れんげ「ほのかちん!」
この少女こそ、れんげが説明しようとしていた石川ほのかである。
父方の祖母の家へ帰省した折に偶然れんげと知り合い、それ以降彼女と親しくしていた。
れんげ「ほのかちん、いつ来たん?」
ほのか「今日、それもついさっきだよ!また水車を撮りに行こうと思って来てみたられんげちゃんがいるんだもん。驚いちゃった」
れんげ「そうなんなー。いま、お客さんにウチのおすすめスポットを案内してるところなん」
ほのか「そうなんだー!」
ひかげ「れんげの話しによく出てくる“ほのかちん”ってこの子のことかー」
ほのか「こんにちは!私は石川ほのかっていいます。よろしくお願いします!」
ひかげの独り言に気づいたほのかが挨拶した。
なっちゃん「こんにちは、ほのかちゃん!あたしは麻生夏海。同じ部活の仲間たちと旭丘ば旅行しようとよ」
ほのか「そうなんですね!夏海さんたちはどこから来たんですか?」
渚「福岡だよ。知ってる?」
ほのか「はい、ラーメンが美味しいところですよね!」
渚「ピンポーン!いやー、それにしてもなかなか旭丘も面白いところだねえ」
ほのか「皆さんはどうやってれんげちゃんたちと知り合ったんですか?」
れんげ「かくかくしかじかなん」
ほのか「へー、面白い出会いだね!」キラキラ
ほのかは目を輝かせながら興味深そうにれんげの話しを聴いている。
ほのか「さて、写真撮ろうっと」ピピッ パシャッ
ほのかは手にぶら下げていた借り物のデジタルカメラを構え、何枚か水車の写真を撮った。
朝霞「デジタルカメラを持った子を見るとみなもちゃんを思い出しますねえ」
葉月「みなもちゃんもよく写真を撮っていますもんね」
その光景を見ながら朝霞と葉月が話しをしている。
『みなも』とは2年生の美術部員、根岸大地(今回不参加)の妹、根岸みなものことだ。写真撮影が趣味でほのか同様、いろいろな場所の写真を撮って回っている。
ほのか「いい写真撮れたー!」
一穂「良かったねえ」
ほのかは写真撮影を存分に楽しんだようですっかり満足気である。
ほのか「そうだ、よかったら皆で写真撮りませんか?」
ケイト「ハーイ、キネン撮影デスね!誰にナニをおいのりしましょーか?」
蛍「そっちの祈念じゃないような…。あ、でもそれでもいいのかもしれませんね」
なっつん「そうなると写真を撮るための台が必要だね」
一穂「高さ的に軽トラの荷台がちょうどいいんじゃないかねえ。ちょっと動かしてくるよ」
一穂は少し離れたところに停めている軽トラを一行の前まで動かして停め、その荷台の上にほのかのカメラを置いた。
一穂「どんな感じ?」
ほのか「いいと思います」
デジカメの画面を確認しながらほのかが言った。
一穂「それじゃあ撮るよー。ほのかちん、タイマー設定ってどうやるのん?」
ほのか「えーと、こうやってこうして…はい、10秒で設定しました」ピッピッ
ほのかは慣れた手つきでタイマーを設定した。
一穂「ありがとう。じゃあみんなのところへ行くかー」スタスタ
小鞠「かず姉、早く!」チョイチョイ
一穂「分かってるってー」
鷹揚に構えてゆっくり歩き出した一穂を急かすように小鞠が手招きしている。残り時間が5秒をきったところで一穂とほのかがようやく合流した。
そしてシャッターが切れる瞬間ーーー
ケイト「バター!!」
パシャッ
ケイトがチーズではなくなぜか「バター」と言葉を発し、伸ばし棒の部分を言い終わる直前でシャッターが切れた。
ほのかが写真を確認すると特にケイトがいい笑顔で写っていた。
ほのか「ケイトさん、いい笑顔ですね!」
ケイト「ありがとうございマース!」
ひかげ「ケイト、それってもしかして『男はつらいよ』の?」
ケイト「ハーイ、御前様の台詞デース。チーズではナク『バター』!イカにもニッポン人らしいジャないですか!」
一穂「ケイトって本当にカナダ生まれなん?なんか日本の知識がえらい偏ってる気がするなあ」
葉月「ここだけの話し、ケイトは福岡の金田町出身だって噂があるんですよ」
ケイト「ワハハー、ナニ言っテンノー?ワタシは正真正銘カナダ人デスよ?」
なっちゃん「そうやね、福岡にもカナダはあるけんケイトは立派な“カナダ人”やね」
ケイト「オーウ、最近ナツミのツッコミが鋭くなってキタ気がシマース!コレはワタシのアイデンティティの危機デース!」
ひかげ「アイデンティティ?」
ケイトが意味深な発言をしたそのとき。
ほのか「れんげちゃん、足元に虫がいるよ!」
れんげ「おー!」
ほのかがれんげの足元に小さな虫が止まっていることに気づいた。
ひかげ「おお、ハンミョウだ。栗ちゃん、たしかこいつの別名は『ミチオシエ(道教え)』だったよね?」
ひかげが虫を検分しながら渚に尋ねた。
渚「ご名答。ハンミョウ科の昆虫は人が近づくとその進行方向に移動する習性があってね、その姿が道案内をしているように見えることから『ミチオシエ』とも呼ばれているんだ」
一穂「そうなんだ。栗ちゃん本当によく虫のこと知ってるね」
渚「いやいや、私が知ってるのは図鑑に載ってる範囲内だけですよ」
なっつん「でもそれって図鑑の内容を全部覚えているってことでしょ? すごいじゃん!」
渚「そ、そうかなあ…?」
しばらくするとハンミョウが動きだした。
なっつん「このハンミョウ、どこまで行くんだろ?」
蛍「気になりますね」
一穂「せっかくだし後を追ってみる?」
小鞠「いいかも!」
ほのか「面白そう!」
のんのん勢の中ではハンミョウを追うことがすっかり決まったようだ。
葉月(あれ?この感じ…。)
樹々「栗ちゃん。この光景、懐かしい気がしない?」
渚「うん、前にこんなことあったよね」
空「」ウン
一方のスケブ勢は奇妙な既視感に囚われていた。
渚「だけど楽しみだよね。このハンミョウが次はどんな場所に私たちを連れて行ってくれるのか…」
木陰「栗ちゃんって案外ロマンチストよね」
渚「そう?17年生きてきて初めて『ロマンチスト』って言われた気がするんだけど」
なっつん『おーい!』
れんげ『早く来るーん!』
渚「お?」
れんげたちの呼び声でスケブ勢は我に返った。まっすぐに延びた道の先でなっつんとれんげが手を振っている。
ケイト「ミンナ先に行っテましたねー」
なっちゃん「栗原センパイ、あたしたちも行きましょう!」
空「」ウンウン
渚「そうだね。……れんげ君ごめんね。今行くよー!」タタッ
少し遅れてスケブ勢もようやく移動を開始した。
ミチオシエこと冒険の案内人「ハンミョウ」。
ーーー果たしてどんな世界へ一行を誘うのだろうか。
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