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歪んだ世界の中で

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第十九話 初詣その四

「ではそれで」
「ただね。人が多いからね」
 新年は何処も同じだ。神社に参拝するからだ。それは希望達も同じだ。
「はぐれない様にしてね」
「そうしましょう」
「千春絶対に離れないよ」
 横からだ。千春は希望の左手を抱き締めて言ってきた。
「何があってもね」
「うん、僕もだよ」 
 希望もその千春に笑顔を向けて答える。
「ずっとね」
「そうして住吉まで行こうね」
 こう話すのだった。そして。
 鈴もだった。真人の左手を千春と同じ様に抱き締めてから言ったのである。
「私達もね」
「はい、離れないでいましょう」
「それで四人で住吉までね」
「行きましょう。ただ」
「ただ?」
「本当に人が多いですから」
 だからだとだ。真人は少し真面目な顔になって鈴に話した。その話すことは。
「すりや痴漢にも注意して」
「そうよね。いろいろな人がいるからね」
「はい、ですから」
「わかったわ。そうしたことはね」
 注意するとだ。鈴も答えた。そうしたやり取りを経て。
 四人で駅に入る。それからだった。
 電車に乗る。やはり電車の中は満員だ。その電車の中でだった。 
 真人からこう希望に言ってきた。その言葉は。
「僕達がまず、ですよね」
「そうだね。離れない様にしようね」
 満員電車の中でそれぞれ鈴、千春と一緒にいながらだ。二人は話した。  
 電車の中はとにかく人でごった返して入る。その中でのやり取りだった。
「さもないとね」
「はい、はぐれたら後が厄介ですから」
「特に乗換えで梅田に出た時に」
「その時ですね」
「はぐれないようにしようね」
「そうですね。途中の駅でドアが開く時も」
 その時もだった。今彼等が乗っている電車は急行なのでドアが開く時は少ない。だがそれでもだ。そのドアが開く時にはだというのだ。
「注意しましょう」
「うん、そうしよう」
「住吉までちょっと気が抜けませんね」
 少し苦笑いになって。真人は希望にこうも言った。
「はぐれないようにしないと」
「僕達も。それに」
「はい、北野さんと」
「千春ちゃんとね」
 今度は明るい笑顔になってだ。二人は言えた。
「誰からもはぐれない様にしようね」
「そうしましょう。大体住吉までは」
「結構時間がかかるよ」
「一時間以上ありますよね」
「一時間半かな」
 行きでだ。それだけ時間がかかるというのだ。
「それ位かな」
「一時間半ですか」
「長いね。こう考えると」
「はい、ですが」
「住吉大社はいい神社だからね」
 ただ大きく歴史があるだけではない。そこには文化もあるのだ。
 だからだ。希望もこう言うのだった。
「新年にはあそこに行かないとね」
「そうですね。ただ僕は新年にあの神社に行くのは」
「久し振りだよね」
「それは遠井君もですね」
「距離があるからね」
 神戸と大阪、それも端と端だ。それならだった。 
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