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歪んだ世界の中で

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第十八話 クリスマスの光その九

「だから。それと同じで」
「このローストチキンも」
「実際にこのお店の料理は美味しいよ」
 だがそれでもだというのだ。
「けれど。それ以上に」
「目で見て感じるから」
「余計に思えるんだよ」
「そういうことだったの」
「じゃあ。これ一羽全部食べよう」 
 二人でだ。それぞれだというのだ。
「そうしようね」
「うん、じゃあね」
 こんな話をしてだ。二人はそのローストチキンも食べたのだった。後に残ったのは骨だけだった。その皿もさげられてからだった。今度は。
 ケーキだった。今度は。
 少し小さめのクリームのデコレーションケーキが一個二人の間に置かれた。そのケーキを見てもだ。
 千春は希望にだ。こう尋ねたのだった。
「どうして一個なの?」
「実はこれもね」
「注文したのね」
「そうだよ。けれどね」
「二個にしなかったの」
「一個ずつだと。一緒に食べられないから」
 それでだというのだ。
「こうして一個のデコレーションを二人でね」
「それで食べるようにって」
「それでなんだ」
 このデコレーションにしたというのだ。
「どうかな、これで」
「ちょっと驚いたけれど」
 一個だったことにだ。だがそれでもだった。
 希望のその話を聞くとだ。千春はこう言ったのだった。
「いいね。これも」
「気に入ってくれたんだね」
「そうなったよ。それじゃあね」
「うん、このケーキも食べよう」
 希望はここでも笑顔で千春に言った。
「そうしよう」
「最後のこのケーキもね」
「クリスマスっていったらケーキだよね」
 希望は笑顔でこうも言った。
「だからね。そのケーキも」
「こうして二人で」
「食べようね」
 こう話してだ。そのうえでだった。
 二人でそのケーキも食べた。ケーキを一口食べてからだ。千春はまた笑顔で言ったのだった。
「うん、このケーキもね」
「美味しいよね」
「凄く。美味しいよ」
「そうだよね。甘くて優しい味で」
「しかも奇麗でね」
 ケーキの甘さだけでなかった。言うことは。
「白くて飾りも」
「そうだよね。実はね」
「実はって?」
「考えてたんだ。ケーキのことも」
 少しばかり笑って。希望はそのケーキを前にして言った。
「何処のケーキにしようかなって」
「このお店にしたのはどうしてなの?」
「美味しいし。それに他のメニューも出るから」
 コースとしてだ。確かに今デザートとして出ている。
「それでなんだ」
「一緒に食べられるから?」
「他のお料理とね。雰囲気がそのままになって」
「それでだったの」
「そうなんだ。それが良かったかどうかはわからないけれど」
「よかったと思うよ」
 千春はその希望に微笑んで答えた。
「それでね」
「あっ、喜んでくれてるんだ」
「だって。千春が続けて楽しめるようにって思ってくれたんだよね」
「うん、そうだよ」
「だったらね。いいと思うよ」
 千春はこう希望に話す。 
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