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アライグマの恩返し

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第三章

 何かと労わっていた、それで彼女は仕事で一緒になり病院に案内してくれた病院の獣医の一人アレクセイ=イワノフビッチ黒の周りが黒髭に覆われた黒髪の初老の男性に問うた。
「この子は」
「雄でヤシャといいまして」
 イワノフビッチはまず名前から話した。
「うちのスタッフの一人です」
「この病院のですか」
「何でか街を一匹でいまして」
「ロシアで、ですか」
 アライグマは棲息していない地域だが、というのだ。アライグマは北米原産であり基本他の地域には棲息していないのだ。
「それでは」
「捨てられたか逃げたか」
「それで、ですか」
「一匹でいまして」 
 街にというのだ。
「私が保護しまして」
「そうしてですか」
「ここで飼っているんですが」
「そうですか」
「そうしたらです」
 せっせと動物達を労わっている彼を見つつ話した。
「こうしてです」
「この動物病院の中で、ですか」
「働いてくれまして」
 そうしてというのだ。
「患者達を労わってくれています」
「それは何よりですね」
「今ではうちのマスコットで」
 この病院のというのだ。
「そしてです」
「スタッフですね」
「心強い、もう何があっても」
 イワノフビッチはヤシャを温かい目で見つつリッキーに話した。
「離れたくないですね」
「かけがえのない存在ですね」
「全くです」
 その通りというのだった。
「これは保護して家族にした恩返しでしょうか」
「そうかも知れないですね」
 リッキーはリトルハンドのことを思い出しつつ応えた。
「それも」
「そうですね、ですがそれは」
「この子にとっても」
「いいことですね」
「そう思います、それは」
「病院にとっても僕にもとっても」
 こうリッキーに返した。
「そうですね」
「本当に思います」
「それじゃあ」
 イワノフビッチは今度はヤシャに声をかけた。
「これからもずっとここにいてくれよ」
「キィ」
 ヤシャは彼に鳴いて応えた、そしてだった。
 せっせと働き続けた、その彼を見てだった。
 リッキーは家に帰った、すると玄関にまたリトルハンドがいた。その彼に笑顔で只今と声をかけるとアライグマはおかえりという風に鳴いて応えてくれた。


アライグマの恩返し   完


                 2021・8・25 
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