猫が頑張っているのを見て
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第二章
「その時は」
「大学辞めるしかないとか言うの」
「公立や国立なら兎も角」
学費が安いのでというのだ。
「やっぱり私立だと」
「若し怪我したらなの」
「どうなるか」
「そう考えるとなの」
「どうか」
「後ろ向きね、けれどね」
巧が家の事情でそうした考えになっていると察してだ、京花は彼に言った。
「そんなことじゃ何も出来ないわよ」
「怪我したら駄目とかか」
「そんなに怖いなら」
怪我をすることがというのだ。
「うちに来て、今日」
「部活が終わったらか」
「私の家学校の近くだし丁度いいでしょ」
こう巧に言うのだった。
「だからね」
「その後で」
「うちに来て」
巧に強い声で言った、自分の弁当を食べながら。
「いいわね」
「そこに何かあるんだ」
「あるから言ってるのよ」
来る様にというのだ。
「だからいいわね」
「そこまで言うなら」
それならとだ、巧も頷いてだった。
実際に部活の後で部活のマネージャーでもある彼女の家に行った。するとすぐに玄関に一匹の白猫が来た。
「ニャ~~~」
「この猫は」
「そうよ、見ての通りよ」
京花はその猫を優しく抱き上げて話した、目は青く穏やかな顔だが。
左の前足がなかった、膝の上からそうなっていた。
「子猫の時に拾ったけれどね」
「それでもなんだ」
「その時左の前足を怪我していてもう化膿していて」
「切るしかなかったんだ」
「それで足が一本ないの」
そうなっているというのだ。
「名前はにゃんすって言って雄よ」
「そうなんだ」
「それでもこの子は頑張ってね」
「生きてるんだ」
「四本足の子と同じ位速く走って何でも出来るわ」
左の前足がなくてもというのだ。
「元気よ」
「ああ、そういうことなんだ」
巧は京花の言いたいことがここでわかった、それで頷いて言った。
「俺も」
「そうよ、いいわね」
「それじゃあ」
「怪我しても頑張ってる子がいるのよ」
「だから若しそうなっても」
「頑張ればいいのよ、どんなスポーツでも怪我から復帰した人いるでしょ」
「そうだね」
巧はまた頷いた。
「足を怪我してもその足を治してね」
「また走ってる人もいるでしょ」
「それじゃあ俺も」
「若しそうなったらとか考えないで」
それでというのだ。
「まずはやってみる、そしてどうかなっても」
「その時も」
「そう、頑張ればいいのよ」
「この子みたいに」
「そう、じゃあいいわね」
「うん、くよくよしないで」
「頑張りなさい」
こう巧に言った、そしてだった。
巧は決意した、それで大学のスカウトのことを両親に話すと両親は言った。
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