頼りない犬が護って

「女は出来損ないだがいい人達だ」
「そうですか」
「あの女は姉妹の中でも特別出来が悪かったらしいからな」
「そういうこともありますね」
「そうだ、いい人達だから」
「あの娘もちゃんと育ててくれますか」
「だから安心してくれ」
　こう広岡に話した、尚旅行から帰って来た彼の両親もことの次第を納得して一件落着となった。そしてその後で。
「お邪魔します」
「うん、今日も遊んでいってね」
「はい」
　女の子は近所に住む様になったのでよくだった。
　平岡の家によく来る様になった、そして。
「今日も宜しくね」
「ワンワン」
「ワンッ」
「ワンワンワン」
　三匹の犬達と遊んだ、平岡はその様子を見て老人に話した。
「自分を護ってくれてです」
「そうしてか」
「すっかりうちの犬達が好きになって」
「仲良くなってか」
「よく一緒に遊ぶ様になってます」　
　白髪で眼鏡の彼に話した。
「もうすっかり仲良しです」
「それはいいことだな」
「はい、吠えないし番犬としては頼りないですが」
「いや、あの娘を護ってじっと助けて欲しいとわし等にお願いしていたからな」
「いい子達ですか」
「番犬としてもな」
　その役目から見てもというのだ。
「いいだろ、人を護るんならな」
「番犬としてもですね」
「いい子達だ、だから他の蜥蜴や蛙達と同じくな」
「これからもですね」
「あの子達を大事にしてやれよ」
「勿論です、ペットの分け隔てはしないです」
「そうだな、じゃああの娘が来てもな」
　その時もというのだ。
「遊んであげる様にしろよ」
「そうしていきます」
　平岡は笑顔で頷いた、そうしてだった。
　彼は女の子が来るといつも笑顔で迎えた、そうして犬達と遊ぶのを見守った。幸せそうにしている姿を。


頼りない犬が護って　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・８・２０