ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第8話:手掛かりのダンペン
前書き
次元の魔女との対価によって、一同は仮面ライダーの変身道具を手に入れる。
これで変身できるのか?否、課題はいくつもの残されている。
ネオライダー、羽根の行方、立ち塞がるのは一体何者……。
様々な要素が交錯し、物語は加速していく。
小狼がふと目覚めると、目の前に広がっていたのは何処かの空間。
地下駐車場にも似た場所には、巨大な鏡が聳え立っており、その傍には何人もの仮面の騎士達……否、仮面ライダー達が戦っていた。
一人の仮面ライダーを複数のライダー達が取り囲み、各召喚機へ一枚のカードを読み込ませた。
『――、お前にも答えは分からなかったんだろう?』
【FINAL-VENT】
【FINAL-VENT】
【FINAL-VENT】
【FINAL-VENT】
『お前は答えを見つけるために戦っていたんだ』
【FINAL-VENT】
【FINAL-VENT】
【FINAL-VENT】
『俺も戦う、探していた答えを見つけるために』
取り囲まれて中心にいる蝙蝠の意匠を持った仮面ライダーは、持ち手の剣を構えて敵のライダー集団へ飛び込んでいく。
敵対するライダー達は相棒というべきモンスター達と共に、必殺の一撃を繰り出す構えをとる。
小狼は蝙蝠のライダーを止めようと手を伸ばすも、届かずにその手は虚空を切った。
『うおおおおおおお!!!!!』
「待って、待ってくれ!あなたは……!!」
小狼は敵の仮面ライダー達へ突っ込んでいく蝙蝠のライダーの背中へ必死に手を伸ばす。
届かない事がわかっていても、止められずにはいられない。
やがて、敵の仮面ライダー達の攻撃が蝙蝠のライダーへ放たれた……。
その瞬間、小狼の見ていた世界は、暗転した。
―――――
「おい、起きろ小狼」
「―――あ、あれ?」
目が覚めると、そこにあったのは光写真館内にあった士の部屋と、起こしに来たであろう士の姿。
一瞬、何が起きたのか混乱する小狼を、士は呆れながら続けて口を開いた。
「どうした?いつも規則正しく起きているお前が寝坊なんて珍しい」
「おはようございます、士さん。おれ、どうしていたんですか」
「別に?他におかしなところはなかったが」
「そう、ですか……」
士の言葉を聞いた小狼は少し俯く。先程見たライダー達が戦う光景がなんなのか、何を意味しているのか分からなかった。
浮かない顔をした小狼の姿を見て士は彼を一階へ向かわせるように促す。
「ほら、朝食の準備は既にできた。とっとと行くぞ」
「分かりました。着替えますんで先に行っててください」
次元の魔女・侑子から仮面ライダーへ変身する道具を受け取った後日、あれからネオライダーとの襲撃もなく2・3日は経過していた。
それぞれ受け取った変身道具の扱い方は結局分からずじまいだった。
しいて分かったことと言えば……。
『#$%&』
「はーい、ありがとう。サガーク、キミはいい子だね」
ファイと共に朝食の配膳を行っているのは、蛇の意匠を持った円盤……もとい、メカ生命体の『サガーク』だ。
普段は独特の言語で会話で行っており、モコナの持つ他の国の言葉がわかる力でやっと何を言っているのか意思疎通ができるようになっている。
一方、その隣では黒鋼が鬼の意匠が入った黒い音叉・変身音叉を手にして、一枚の銀色のディスクを取り出す。変身音叉を指で鳴らし、それをディスクに翳すと銀色から赤色へ染まっていき、さらに鳥型へと変形していく。
『ディスクアニマル・茜鷹』へと変わってリビングから撮影室へ飛び出し頭上を飛び回り始め、黒鋼とユウスケはその光景を眺めていた。
「なるほど、こういった使い方もあるってわけか」
「これって確か、ディスクアニマルだよな。響鬼の世界で見たことあるよ」
「コイツはゆうなれば式神の類か。お前達が知ってるなら安心っちゃあ安心か」
飛び回ってきた茜鷹を呼び戻し、ディスク状態として戻ってきた所をキャッチする黒鋼。
ユウスケは彼が短期間で使いこなしている事に拍手する。
「おお!流石現役の忍者!」
「どうってことねえよこんなもん」
「おはようございます。皆さん」
「お、小狼君おはよ!今日は遅かったじゃないか」
ユウスケは部屋へ入ってきた小狼と士を出迎え、共に席に座る。
やがてサクラ、夏海、栄次郎といった全員が揃うと、朝の食事を始める。
今回は夏海の肩に乗ったモコナが音頭を取る。
「ではでは皆さま、お手と手を合わせて」
「「「頂きます」」」
挨拶を終えると朝食にありつき始める一同。
何気にTVをつけると、そこには一つのニュースが流れていた。
『先日起きた頼打区での襲撃事件、未確認生命体を連れた集団により多くの死傷者が出ました』
「……もしかして、あの時の事件なんでしょうか」
「恐らくはな。こうもドンパチやっている所を報道されるとはね」
小狼と士は、先日起きたネオライダーとの戦いの様子を見ながら眉をひそめていた。
命を落とし護れなかった見知らぬ人々、彼らの事を思うと何とも言えない気持ちになってしまう。
『これについては警察特殊部隊G3ユニットを投入、事態を鎮圧に辛くも成功しました』
「G3ユニット!?この世界にもいたのか!?」
ユウスケは席から飛び上がり、驚愕の表情をする。
……かつて、アギトの世界にて未確認生命体と戦う警察の特殊部隊"G3ユニット"。
ユウスケは一時的に隊員として勤めていた経験がある。
同じ名を聞いて驚いている彼を黒鋼が宥める。
「落ち着け。飯が冷めるぞ」
「あ、ごめん……」
「しっかし、聞けば聞くほど不思議なんだよねぇ」
「あん?何がだ」
慣れない箸からスプーンへ変えて御飯を食べるファイはとある疑問をぶつける。
対して焼き魚の身を器用にほぐしている黒鋼が尋ねると、彼はこう告げた。
「いやさ、士君達のこれまでの旅を聞いてみたところでさ。今まで旅してきた仮面ライダーの世界じゃ、それに相当する怪人達がいたそうだね」
「それがどうした?」
「それなら怪人達と戦うライダー達がいるはずなんだよね。現状はネオライダーとかいう奴らがいるだけだけど」
「ネオライダーが【この世界の仮面ライダー】ってことになるんじゃねえのか?」
焼き魚の身を口にしながら、ファイの疑問にそう答える黒鋼。
うーんとスプーンを顎に当てながら、ファイは言葉を続ける。
「オレもそう思ったんだけど、さっきのニュースが気になってね」
「さっきのニュースってG3ユニットのことか?」
「ああ、もしかしたら【ネオライダーに対抗する誰か】がいるんじゃないか。と思ってね」
ユウスケの言ったG3ユニットの事から『ネオライダー以外の勢力』がいるんじゃないかとファイは語る。
実際の所、思うところはあった……幽汽にトドメを刺されようとした小狼を助けた狙撃。
それがネオライダーと敵対する勢力に所属する誰かのモノだったら全ては話がつく。
しかし、黒鋼が割って入り、ファイの言う別勢力について否定する。
「馬鹿。仮にそんな奴らがいたとしても、協力するとは限らねえ」
「ええー、そりゃないよ黒ろーん……いい考えだと思ったんだけどなぁ」
「ま、ネオライダー以外のライダーがいるってのはいい線じゃないか?」
そこへオムレツを食す士がフォローを出す。
士が言う通り、ネオライダーと対する誰かがいる以上、何らかの情報を持っていてもおかしくはない。
もしかしたらサクラの記憶の羽根に関する手掛かりを持ってる可能性もある。
それを示した時、小狼の表情にも少し明るさを取り戻す。
「その人達の情報についても探さないと」
「だねぇ、厄介な障害を何とかできる目途はたったし、遅れを取り戻さないと」
ファイは小狼の言葉に便乗しながら、手元にあった湯飲みを熱がりそうにしながら緑茶を飲む。
その会話を聞いていたサクラが浮かない顔をしており、それに気づいた夏海が話しかける。
「どうしたんですか?サクラちゃん?」
「いえ、なんでもないの。なんでも……」
夏海を心配させないように笑顔でそう答えるサクラ。
その光景を見ていた士は、内心で『やれやれ、大体わかった』と思いながら、再び食事にありついた。
―――――
ネオライダーの世界、ネオライダー本拠地。
バーにて屯するウワバミは、この場に似つかわしくないであろう一升瓶から酒を朱色の杯へ注いで飲んでいた。
そこへ黒服を纏った一人の女性が彼の下へ現れる。
銀髪の短髪に、何処か幼さを感じるような特徴のその女性は無表情のまま、ウワバミの名を呼んだ。
「ウワバミ、報告が入った」
「おお、ユウちゃん。ありがとさん。で、どうだった」
「ライオトルーパー部隊は一小隊が全滅」
「ああ、嫌だねえ。仮にも仲間を屠られるのは他人といえどいい気分じゃない」
『ユウ』と呼ばれた女性……あの時、仮面ライダーカイザに変身していた彼女は尋ねる。
ニヤニヤしながら杯を口へ運ぶウワバミは彼女へ尋ねる。
「やったのはどのライダーだい?」
「報告によれば、相手は仮面ライダーカブトと」
「カブト、ねえ……はてさて、どっちやら」
「どちら、というと?」
「いいかいユウちゃん。世界の破壊者ディケイド、その能力の一旦は【他の仮面ライダーへの変身する】ってことさ」
ウワバミは懐から取り出し、ユウにとある映像を見せる。
それは、ネオライダー達と戦う何人もの仮面ライダー達……その中には士達が変身したであろうディケイドやクウガの他に、響鬼、カブト、キバといった仮面ライダー達の姿もあった。
彼らの映像を見てウワバミはユウへディケイドの能力の怖さを伝える。
「仮面ライダーの能力は千差万別、一人だけでも強大さ。その何人かの仮面ライダーを変身するディケイドは、いわば複数のライダーと相手していると同意義なのさ」
「確かに、まったく別種の能力を持つ仮面ライダーを使い分けられると厄介」
「しかも、能力まで同じく使えるからディケイドが化けたライダーなのかそれとも本物のライダーなのか分からない……なるほどこれは、まさに悪魔的に困る相手さ!ハッハッハ!」
「……困ってるようには見えない」
高笑いするウワバミを見て、ユウはそう言い返し、一升瓶を掴んで空っぽになった杯へ再び酒をいれる。
彼女の姿を見ながらニヤリと口角を歪ませたウワバミは嬉しそうな表情をしながら飲み干す。
「ま、そんな強い奴らにこそ、それ専用の戦略ってのはあるものさ。アンダースタン?」
「?」
「ハッハッハ、分からないか。分からなくていいさ。こういう頭脳担当は俺の専門だからねぇ」
意味が分からず首を傾げるユウへ、笑って許すウワバミ。
彼を高く掲げた杯、その水面にはこちらの世界を覗く無数の目が光っていた。
―――――
その頃、街へと繰り出した士達一同7人……それと1モコナ。
今後の方針を『羽根探し』か、『ネオライダーに対する勢力を見つける』かで決めかねていた。
ファイは頭へ手を組み、先に進む一同へ尋ねてみる。
「さて、今日はどうしようかね」
「俺はその、G3ユニットの所へ行きたい。何か分かるかもしれない」
「流石に八代の姐さんがいるとは限らないぞ。ユウスケ」
「んな!分かってるってそんな事!」
士がユウスケのかつての想い人の名前を出してからかった。
その隣では小狼が『羽根探し』の方へ行くと一同へ伝える。
「おれは変わらず姫の羽根探しをやります」
「んじゃあオレも羽根探しの方へ行くか」
「わりぃが俺は小野寺の方にいくぜ。G3ユニットやらに強い奴がいるかもな」
「ええ、黒鋼さん。あまり暴れないでくださいね?」
ファイは小狼と、黒鋼と夏海はユウスケの方と別れていく。
そんな中、士はサクラの傍に近づき、彼女へ尋ね始める。
「おい、サクラ」
「士さん?どうしたのですか」
「お前、今朝は何か浮かなかった顔だったがどうしたんだ」
士に今朝の出来事について聞かれると、サクラは複雑な表情を浮かべる。
サクラは士を連れて一同から少し離れると、彼へこう答えた。
「……私だけ、仮面ライダーっていう力を手にできなかったなって思って」
「…?なんだ、それがどうかしたんだ?仲間外れは嫌だったか」
「私も小狼君達みたいに強かったら、よかったなって。そしたら、皆が傷つくことが少しも減らせるかなと思ってしまって」
少し悲しい表情を浮かべるサクラ……そんな彼女を見かねた士は溜息を付きながら彼女の頭にポンと手を乗せる。
それに驚いたサクラは士の顔を見上げる。
「つ、士さん?」
「そう躍起になるな。夏ミカンだって同じ立場だ……お前が無事だから安心するんだろ」
「………はい」
「それにだ、敵と戦うだけが戦いってわけじゃない。―――お前にはお前なりの戦いがある」
「私の戦い?」
「それを見つけられるのはお前次第だがな」
そう言いながら、士はサクラの目線まで視界を下げてそう告げる。
彼の言葉に少しは元気づけられたか、サクラの表情は多少明るくなる。
そこへ彼らを呼びに来た小狼が駆け寄ってくる。
「サクラ姫、士さん。行きますよ」
「おう、悪かったな。ちょっと話していた」
「大丈夫、心配かけたよね」
サクラは小狼へそう告げると、二人と共に一同の元へ戻る。
やがて小狼達一行は二手に別れようとしていた時だった。
彼らの周囲に銃撃がばら撒かれる。
「なんだ!?」
「―――よぉ、初めましてというべきか、御尋ね者の悪魔ちゃん」
士が声をした方へ向けると、そこに立っていたのはアクセレイガンを向けるライオトルーパー達と、彼らを連れた一人の黒服の光景。
恐らくネオライダーの一人だろう……先頭に立つ黒服はこちらへ向けて指を指す。
「こっからはオレ様が相手になるぜ?涙目になって怯える覚悟しとけ!」
―――ネオライダーの三度の襲撃戦、始まる
後書き
どうも地水です。
冒頭のアレ、察しの言い方はお判りですがSPのアレです。
小狼が見た夢の光景、これが意味するのはもう少し後の話。
それはそれとして、何気になじんでいるサガークとディスクアニマル達。モコナと共に目指せトップアイドル!(ジャンルが違う
え、誰かを忘れていない?きっと気のせいでしょう
何気に言及された、舞台の一つ『頼打区』、恐らく首都圏の何処かにある街の一つ。
ネオライダーの世界や街だけじゃ名乗りづらいので、名付けてみました。
ファイの言う通り、この世界には【ディケクロ一行】、【ネオライダー】、【謎の勢力】と色々と多い様子。今後も群雄割拠して行く様子
ディケイド対策に講じるウワバミ、カイザに変身していたユウと共に暗躍していく。
そんなことしていたら早速牙を向いてきた!一体どうなる!?
次回、ツバサ組変身なるか?
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