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イベリス

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第十六話 ゴールデンウィーク前にその十三

「共産主義は駄目ね」
「そうなの」
「それじゃあ採算は当然としてね」
「考えてなのね」
「生きていかないとね」
「そういうことね」
「それで東京のカラオケの料金が安いのはね」
 再びこちらの話をするのだった。
「そうした理由からよ」
「人が多くて大勢のお客さんが入るから」
「お店に入る人が多いからよ」
 まさにその為にというのだ。
「だからなのよ」
「やっていけるのね」
「東京は土地代とか高いけれどね」 
 それでもというのだ。
「やっていけるの」
「そういうことね」
「現実はそうなのよ」
「採算次第ね」
「お店はね、逆に言えばね」
 咲はこうも言った。
「採算が取れてお店がやっていけたらどんな無茶してもね」
「いいのね」
「そうよ」
 咲にこの現実の話もした。
「ヤクザ屋さんがやっていてもね」
「いいの」
「極端に言えば売れたもの勝ちよ」
 こうもだ、愛は言った。
「お店っていうのは、まあそれでも信頼がないとね」 
「お店潰れるわね」
「採算が取れていてもヤクザ屋さんがやってるお店に行きたい?」 
 愛は咲に真顔で問うた。
「咲ちゃんは」
「いえ、絶対にね」
 それはとだ、咲も首を横に振って答えた。
「嫌よ」
「そうよね」
「信頼のないお店は採算が取れていてもね」 
 今はそうでもというのだ。
「そのうち潰れるわ」
「そうなるのね」
「信頼も大事よ、信頼がないならね」
「お店潰れるわね」
「そうなるわ」 
 愛は断言した。
「そうしたお店はね、そのことも覚えておいてね」
「わかったわ」
 咲は愛の言葉に頷いた、そうしてゴールデンウィークに一緒に遊びに行くことの話をさらにした、もう心はそちらに向かいはじめていた。


第十六話   完


                2021・5・23 
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