おっちょこちょいのかよちゃん
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143 機械の攻略法
前書き
《前回》
異世界最初の夜の宴が終了する時、三木首相は政治委員の足立正生と吉村和江の監視の中、記者会見を行っていた。軍事の保持の復活を赤軍から要求されて葛藤する中、首相は記者会見で憲法の改正の拒否を表明、足立と吉村に詰め寄られるものの、イマヌエルの介入で事なきを得る。そして異世界では能力を一切持たずにお情けで通された友蔵がまる子と同行すると言い、フローレンスに反対されるも横車を押す事に成功する。しかし、かよ子達は友蔵が足手纏いにならないか不安となるのだった!!
石松は「この地」に戻って来た事を懐かしく思った。
(親分や大政、小政は元気にしているであろうか・・・)
石松が嘗て自分が住んでいた地域は戦争主義の世界の人間に占領されてしまい、本部付近の地へ引っ越していた。その時・・・。
「おお、石松じゃねえか!」
「この声は・・・、増川仙右衛門ではないか!」
石松は子分仲間と再会した。
「よく戻って来たな!」
「今、次郎長親分や皆の衆は無事であるか!?」
「ああ、今、何とか俺達の仲間は誰一人かけてねえ。だが、奴等はひっきりなしに攻め手やがんでえ、ついこの前、アントワネットとかいう西洋の女が侵略しておる!!」
「アントワネット・・・!!」
石松はその名を覚えていた。アントワネットは敵の世界の者となったが、娘のテレーズという女は今自分達がいる世界の人間だ。おそらくまた娘を無理やり引き抜いて調教するつもりだと石松は見抜いた。
「で、アントワネットはどのような状態だ!?」
「あやつは防壁を張った連中どもを殺して突き進んでおり、その母上方が止めに行っているとの報せが来ているのだが・・・。」
「我々も止めに行かねばな・・・」
「ああ、まずは皆に顔を合わせろや」
千右衛門は石松を移転後の屋敷に連れて行った。
「親分、皆、石松が帰ってきたでい!」
「石松、無事だったか!」
大政や小政、綱五郎、吉良の仁吉、大野の綱吉などの仲間がその場にいた。
「ああ!」
「石松、よくぞ帰ってこられた!!」
親分の次郎長が涙して子分との再会に涙した。
「親分、今、此方の戦いも激しくなっておられると聞きました。あのアントワネットとやらがまた暴れておるようですね」
「ああ、今奴の母上なる者が止めに行っておるが、加勢は必要であるな」
「なら、今・・・!!」
「早まるな、石松!」
「え!?」
「今、無理に加勢しても返り討ちにされやすい!フローレンスやイマヌエルの支持を仰ぐのだ!」
「へえ、畏まりました」
石松は今後どのように動くのか緊張が高まった。
「石松。あんたは『あっちの世界』でも頑張ってんじゃないか。今はちと休みなよ」
次郎長の妻であるお蝶が石松を落ち着かせた。
「ああ、そうであるな・・・」
しかし、石松にとっては嘗ての清水の地でも問題は起こっていた。何しろ大野けんいちと杉山さとしが喧嘩した事に関して今、彼らがどのような状態か気がかりあったのである。
イマヌエルが本部に戻って来た。
「イマヌエル、お疲れ様です」
「ああ、日本政府の方は大変な事になっていたよ。憲法改正を確実に公表させる為に赤軍の政治委員を付けていたんだ」
イマヌエルは足立正生と吉村和江を担いでおり、その場で降ろした。その時だった。
『正生!!和江!!応答しなさい!!』
別の声がした。
「どうやら通信機器も持たせていましたようですね」
「ああ、此方から没収してこの二人は監禁しよう」
イマヌエルは足立と吉村を別の場所に移動させた。
かよ子は目が覚めたその時、窓から朝日が差し込んでいるのを確認した。
(この世界にも朝、昼、夜はあるんだね・・・)
かよ子は自分が住む世界と遜色ないと感じた。ただ異なる点はこの世界に辿り着く者は自分がいる世界で平和を願っていた者や人の為に徳を積んだ者という事である。
「ふああ~」
かよ子は欠伸をしながらベッドを出て顔を洗い、そして着替えた。勿論、あの杖は忘れずに持って部屋を出た。
「あ、かよちゃん、おはようっ!」
杯の所有者・安藤りえと遭遇した。
「あ、りえちゃん!ってあああ!!」
かよ子はは振り向くと共に足を滑らせて転びそうになってしまった。
「もう、おっちょこちょいね」
りえの友達二人も現れた。
「おはよう、二人共」
「あ、みゆきちゃん、鈴音ちゃん、おはよう!」
「お、おはよう・・・!!」
「今日からだね」
「うん」
「兎に角、広間に行きましょう」
皆は広間へと向かった。
「おはよう、君達」
「長山君!」
かよ子は長山と会った。
「君達も出発だね。僕はここに残る事になるけど、健闘を祈るよ」
「うん、長山君はこの場所を守る役割なんだよね。頑張ってね!」
「ああ、ありがとうな」
皆は広間に到着した。夜の宴と異なり、朝はきっちりとテーブルと椅子が並んであった。そこにナイフやフォーク、パンやライスと和洋問わず様々な料理が置かれている。
「おはようございます。皆様」
その場にフローレンスはいた。
「フローレンスさん!おはようございます」
「皆様、どうぞ、お好きな席にお付き下さい。朝食は皆が揃いましたらですよ」
「はい!」
皆は適当に席に着いた。多くの選ばれし者が広間に入り(一名そうでない者がいるが)、席に着く。三河口は同級生や旧友、知人達と同席しており、さりは姉のありとゆり、そして姉妹達の母と同席し、組織「義元」の皆もまとまって席に着いていたが、大野と杉山は離れて座っていた。
(大野君・・・。大野君の隣へ座るチャンスだわあ!!)
冬田は大野の隣の席を狙った。駆け足で大野の隣の椅子の背もたれに手を付けた。
(やったわあ!)
「ふ、冬田!?」
大野は冬田が隣に来て驚いた。
「お、お、おはよう・・・大野くうん・・・」
「おお・・・」
冬田は大野の隣に座る事ができてもじもじした。フローレンスが挨拶を始める。
「皆様、おはようございます・・・。あら、一人いませんわね?」
「ま、まる子じゃ、まる子がおらん!」
「さくらももこちゃんですわね。分かりました。私が起こして参りましょう」
「わ、儂も行く~!」
フローレンスと友蔵はまる子のいる部屋に向かった。
「まるちゃん、この日も寝坊してるの・・・?」
かよ子はズボラな少女が心配になった。
「かよちゃん、まるちゃんって結構寝るのね」
りえが聞いてきた。
「いつもこんな感じだよ。学校でも遅刻ギリギリで来るんだ・・・」
「へ、へえ・・・」
ようやくまる子が現れた。
「こんな大事な時に寝坊しませんでください」
「ご、ごめんなさあい・・・」
まる子はフローレンスに叱られて空いている椅子に着く。
「それでは皆様、改めましておはようございます。朝食をお楽しみ下さい。朝食が済みましたら本格的に動き始めます。では、いただきます」
皆は食事を始めた。かよ子はりえ達と談笑しながら食べ、杉山は誰とも話さず黙々と食べていた。冬田は大野の隣でもじもじしたまま、その快感に浸ってあまり食が進んでいなかった。一方、まる子とその祖父は自分の家じゃあまり食べられない朝食という事でありとあらゆるものを食べまくっていた。
皆は朝食を終えた。
「皆様、お食事の出発前に注意点を説明しますので支度が整いましたらまたこの場にお集まりください」
皆は解散し、それぞれの部屋に戻り、支度をする。暫くして皆、再度集まった。今度は今まで説明を担っていたフローレンスに代わってイマヌエルが喋り出した。
「皆様方、戦いに出かけられる前に一つ注意しておく事がございます。今、赤軍は貴方方のような異能の能力を使用できる機械を使用し、その一部を敵の世界の人間に与えてこの戦いを有利にしている状態です」
「機械って・・・。確か健ちゃんの能力を複製した機械ね」
ありは察しがついた。
「はい」
従弟はそれに返答した。その機械についてありが質問を投げかける。
「その機械について何だけど、壊す方法とかはあるの?」
「いい質問だよ。機械を持っている者に攻撃を仕掛けようとしても武装の能力による防御で相手に傷一つ負わせることは無理だ。だが、今できる事は一つだけある。それは、攻撃対象を機械を持っている相手ではなく機械そのものを狙えばいい」
「機械を狙う・・・、か」
「念力などが使える道具を持つ者がいれば相手がどこに隠していようが攻撃はできる。他にもう一つ・・・」
「もう一つとは?」
「私達は政府に偽の杖、護符、杯を渡した。昨日、政府はそれを赤軍との取引に用いた為、赤軍がそれを手にしている。彼らが偽物を使う事で計画を狂わせ、不具合が生じさせる仕組みだ。それによって機械の調子悪くさせるからくりを仕掛けておいた。ここまで出向く者はおそらくその事に気付いてはいないと思う」
(そっか、それならきっと倒せるよね・・・?)
かよ子はそう自信を持った。
「それではそろそろ出発の時ですわ。皆様、外においでください」
皆は本部の外に出た。正門玄関を出るとそこは巨大な庭園となっていた。
後書き
次回は・・・
「冬田の我儘」
本部の庭へと出た戦いの選ばれし者達。フローレンスは皆に通信用の小型電話機を支給するが、元の世界に戻るという勧告を蹴った友蔵に存在が迷惑と敢えて非難する。そんな時、友蔵の我儘から冬田までもが・・・。
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