イベリス
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第十五話 慣れてきてその九
「一人もよ」
「いないわよね」
「本物の魔女があんなので捕まるかっていうね」
「そのこと自体がおかしいわよね」
「魔女狩りの人達の言う魔女って無茶苦茶でしょ」
母は強い声で言った。
「一つの国を変えるんじゃないかっていう位でしょ」
「物凄い魔法使うでしょ」
「疫病流行させたりね」
「お空飛んだり姿消すなんて何でもないし」
「そうよね」
「そんな風だから」
それでというのだ。
「普通の人に捕まるか」
「そんなことは無理ね」
「絶対にね」
「そうでしょ、だからね」
「魔女狩りで捕まる人は全員」
「魔女じゃなかったのよ」
「無実の人が捕まって」
そしてというのだ。
「酷い拷問受けてね」
「火炙りになったのね」
「何十万人もね」
「酷いお話ね」
「日本でこんなことがなくてよかったわ」
母は顔を顰めさせてこうも言った。
「本当にね」
「そうよね」
咲もその通りだと頷いた。
「デマとか信じて馬鹿なことはしないことね」
「そうよ、魔女狩りもでしょ」
「嘘ね」
「魔女がいてもね」
「あんなことで捕まらないわね」
「絶対にね」
「というか魔女でも」
咲は首を少し捻って述べた。
「人の役に立つならね」
「いいでしょ」
「それで悪いことしてたら」
「それで詳しく調べてね」
「どうするかよね。使い魔とかいても」
黒猫なりのそういったものがというのだ。
「それでもね」
「何でもないでしょ」
「それでってね」
「日本ではずっとそうだったわ」
魔女狩りの様な集団ヒステリー、何か得体の知れないものに無闇に怯えたうえでの愚行の極みが存在しなかったというのだ。
「そうしたね」
「おかしなことは起きなくて」
「そりゃデマで酷いことは起こったわ」
「関東大震災でもあったっていうわね」
「井戸に毒を投げ込んだとかいうあれね」
「それで自警団の人が暴れたとか」
咲は母にこうした話をした。
「それを警察とか軍隊が止めたのね」
「そうよ、ある署長さんはあらゆる井戸の水を皆の前で飲んだのよ」
若し毒があるなら自分が飲んで確かめると言ってだ。
「それで暴徒を止めたのよ」
「凄いわね」
「魔女狩りは政府もしたけれど」
特に教会がだ。
「日本は政府が止めたのよ」
「警察や軍隊がね」
「それは全然違うわ」
「暴徒になった人達が暴れるのを止めたことは」
咲も考える顔で応えた。
「いいことね」
「そうでしょ」
「ええ、確かにね」
咲は今度は母の言葉に頷いた。
「そんなことしなかったのは」
「いいことでしょ」
「凄くね」
「というか日本でデマ流すのは」
それはとだ、母は咲に忠告する様に話した。
「ネットのおかしな人もだけれど」
「他にもいるのね」
「マスコミよ、特にテレビはね」
この媒体にいる者達はというのだ。
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