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戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~

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第6節「装者達の黄昏」

 
前書き
第6話、割と可愛い彼女達のターン!

執筆と同時並行で、就活しながらMAD動画を作ってるので、予定がかなりカツカツだ……()
完成した動画のリンクはあとがきに貼っておきますので、是非ともご視聴よろしくお願いします。 

 
「手伝いに行くの、許してもらえなかったデスね……」

自宅への帰路にて。信号が変わるのを待ちながら、切歌は呟いた。

「……考えてみれば、当たり前のこと。LiNKERがないわたしたちの適合係数じゃ、シンフォギアを纏ったところで満足に戦えない……」
「わたしも、アドルフ先生に退院を認められるまでは、装者としての活動は認められていないですから……。ギアも了子さんに預けられてますし」

調とセレナも、静かに呟く。

確かに彼女達は、シンフォギアに適合した装者の一員だ。

「ああ見えて、底抜けにお人好しぞろいデスからね……」

しかし、切歌と調は適合係数が足りず、LiNKERという薬品を用いなければギアの力を引き出せない。
セレナはLiNKER無しでもシンフォギアを纏う事ができるものの、まだリハビリが完了していないため、全線に出られる身体ではない。

また、かつてセレナが纏っていたシンフォギアは、コンバーターが破損しているのだ。
フロンティア事変の終盤、姉であるマリアがそれを纏うという奇跡を起こしたものの、その後は再び起動不可能となっていた。

「いいんじゃないか、それで」
「え?」

飛鳥の言葉に、切歌は彼の方を振り向く。
他の2人も、飛鳥の言葉に耳を傾けた。

「本来、君達は学生だろう。わざわざ危ない事に首を突っ込む必要はないと、僕は思っている」
「……」

兄の言葉を、弟の流星も静かに聞いている。

飛鳥の言う事は尤もだ。世間一般的に見れば、年端もいかない子供たちが、ノイズと戦うために身を晒すなど、道理にもとると言われても仕方がない。

普段は口に出さないが、シンフォギアの特性上そうせざるを得ない事を、司令である弦十郎も常々気にしている。

飛鳥の言葉は、日常の中で生きて来た少年の立場から見た、彼女達への疑問であった。

「それでも、君達はそれを良しとしない。シンフォギアを纏って戦わなくてもいい身分になったのに、それを素直に受け入れられないのは何故なんだい?」
「それは……」

非難ではなく、ただ純粋な疑問。
飛鳥自身の声も棘はなく、優しいものだ。

先輩として、自分達の身を案じてくれている。切歌にも、調やセレナにも、それは分かっていた。

だから3人は、少し考えると、飛鳥を真っ直ぐに見つめてこう答える。

「……フロンティア事変の後、拘束されたアタシたちの身柄を引き取ってくれたのは、敵として戦ってきたはずの人たちデス」
「それが保護観察なのかもしれないけど、学校にも通わせてくれて……」
「F.I.S.の研究施設にいた頃には、想像も出来ないくらい、毎日笑って過ごせているデスよ」
「だから、この恩を返したいんです。わたしたちを助けてくれた人たちを、今度はわたしたちが助けたい。ただ、それだけです」
「そうか……」

飛鳥は、3人の言葉を受けて納得したのか、少し表情を柔らかくした。

「僕は、すごい力なんて持った事ないから分からないんだけど……でも、君達にとって、それがすごく大切な事だってのは伝わったよ」
「兄さん……」

兄の言葉を、少し険しい顔で聞いていた流星は、兄の肩に腕を回すと、3人には聞こえないように囁いた。

「意外。兄さんの事だから、てっきり『装者に戻らなくても恩返しはできる』とかお説教垂れるって思ってたよ」
「多分、暁達にとっては、力を持つ者の責任みたいなものなんだ。外野の僕達が頭ごなしに否定するなんて、偽善者みたいな物言いはしちゃいけない」
「そんな事してたら、僕は兄さんでもぶん殴ってたよ」
「お前にそこまで想われてる月読は、幸せ者だな」
「そ、そうかな……そうだといいな……」

兄弟は互いの顔を見合わせて、お互いの脇腹を小突き合った。

ちょうど信号が青に変わり、歩行者達が横断歩道を渡り始める。

自分達も渡ろうと、歩みを進める飛鳥と流星。だが、切歌ら3人が立ち止まったままな事に気が付き、振り返る。

「暁……?」
「調ちゃん、セレナちゃん……?」

3人は立ち止まったまま、ここでは無いどこかを見つめている。

「……なんとか、力になれないんでしょうか」
「何とか、力になりたいね……」
「力は、間違いなくここにあるんデスけどね……」
「でも、それだけじゃなにも変えられなかったのが、昨日までのわたしたち……」

切歌と調は、首に提げたペンダントを握りしめ、セレナもまた、自分の胸に手を当てている。

飛鳥も流星も、彼女らにかける言葉を持たない。
力を持たない彼らに出来るのは、ただ見守ることだけなのだから。

『都内に発生した高層マンション、及び周辺火災の続報です』

その時、街頭モニターの臨時ニュースが、火災現場の様子を映し出した。

切歌、調、セレナに釣られ、飛鳥と流星もモニターを見上げる。

『混乱が続く現場では不審な人影の目撃情報が相次ぎ、テロの可能性も指摘されています』
「「「ッ!?」」」

ニュースキャスターの隣に映る、火災現場からの映像。

そこには爆発し、墜落するヘリコプターが映り込んでいた。

「今の爆発したヘリコプター、『S.O.N.G.』のデスッ!」
「何か、別の事件が起きているのかも……ッ!」
「ちょっと行ってくるデスッ!」
「えっ!?暁さん、月読さん!?」
「セレナは先に帰っててくださいデスッ!」

セレナを置いて、切歌と調は火災現場のある方角へと走っていく。

「待て!危険すぎる!まっすぐ帰るようにいわれただろう!?」
「兄さん、置いてくよ」
「流星ッ!?お前も行くのか!?」

二人の後を追い、流星も走り出していた。

「わ、わたしも行きます!暁さんたちだけじゃ、心配ですからッ!」

スマホを片手に、セレナも走り出す。

飛鳥は少し悩んだ末……

「ああもうッ!行けばいいんだろ!」

4人の背中を、全力疾走で追いかけて行った。

ff

「シンフォギアが……ぐ、ううッ……あッ!?」

クリスのイチイバルは、あっという間に砕け散り、ひび割れたコンバーターが地面に転がる。

「クリスッ!!」

倒れるクリスを抱き留める。
気を失っただけで、幸い怪我はないようだ……よかった、無事で──

「え……?」

ノイズにギアが破壊された、という事実に驚くあまり気付くのが遅れたが……腕の中のクリスは、一糸纏わぬ姿でぐったりしていた。

シンフォギアを纏う際、元々着ていた衣服は量子化され、ペンダント内に収納されているらしい。
通常、シンフォギアが解除されれば、それに伴い衣服も実体化されるという仕組みのはず。

しかし、今のクリスは衣服が戻っていない。

つまり──さっきので、クリスのギアコンバーターが機能不全に陥ったという事に他ならない。

「どういう……事だ……!?」

クリスを抱いたまま、俺は背中越しに黄色い女……エルフナイン曰く、レイアという名の自動人形を睨みつける。

レイアは街灯の上から飛び降りてくると、余裕に満ちた表情でポーズを取った。

「……世界の解剖を目的に作られたアルカ・ノイズを兵器と使えば──」
「シンフォギアに備わる各種防御フィールドを突破することなど容易い……」
「アルカ・ノイズ……だと……!?」

こいつら、錬金術師が作ったノイズだってのか!?
人間以外も分解できるようになった、って事かよ……クソッ!俺達シンフォギア装者に対する初見殺しが過ぎんだろッ!

それに、まずい……。イチイバルを失ったって事は、クリスはこれ以上戦えないどころか、このままだとノイズ達の攻撃に生身を晒す事になるッ!

どうする……?アキレウスの脚なら、この場を逃げきる事は可能だ。
だが、アルカ・ノイズを野放しに撤退は出来ねぇ。何しでかすか分かんねぇからだ。

翔たちの加勢は期待できない。翼さんはイギリスで、しかもレイアの仲間と戦っている。
奏さんは、風鳴司令の静止を振り切ってでも出撃して来そうだけど、今から出たんじゃ間に合わない……。

この状況を切り抜けるには、せめて()()()()は装者が居ないと──

「次なる仕上げは、次なるキャストに──」
「や、やらせませんッ!」
「エルフナイン……ッ!」

気がつくとエルフナインが、クリスを抱える俺とレイアの間に、両手を広げて立っていた。

力を持たない小さな背中で、俺たちを守ろうと立ち塞がる。

無茶だ。そして危険過ぎる。こちらは丸腰、あちらには武器もノイズもある。敵うはずがない。

それでも、俺達を守ろうとするその背中には、小さな勇気が宿っていた。

そして、その勇気に応えるかのように……希望はあちらからやって来た。



「させないデスよッ!」
「…………ん?」

頭上からの声に、レイアは橋の上を見上げる。

そこに立っていたのは……ファミレス『イルズベイル』ののぼりをマントのようにはためかせ、スーパーヒーロー立ちしている暁切歌の姿だった。

「き、切歌ッ!?」
「ふんっ!」

切歌はのぼりをバッと投げ捨て、ギアペンダントを取り出すと、自らの聖詠を口ずさんだ。

「──Zeios(ゼイオス) igalima(イガリマ) raizen(ライゼン) tron(トロン)──」

夜を引き裂く曙光の如く。
獄鎌・イガリマを身に纏い、暁切歌は暗闇を切り裂き降り立った。

ff

「危険信号点滅ッ!地獄、極楽、どっちがいいデス──」

空中でギアを纏い、そのまま繰り出す先手必勝。
3つに分裂した大鎌の刃先を、振り下ろす勢いに乗せてブーメランのように投擲する、切歌の得意技。

(きる)呪りeッTぉ(じゅりえっと)

放たれた刃は弧を描き、アルカ・ノイズの群れを左右からの挟撃する。
アルカ・ノイズは真っ二つとなり、背の高い人型、並びにオルガン型から先に、その数を減らしていく。

(まずは邪魔になりそうなノイズを──ぐッ!?)

しかし、切歌のギアからはバチバチと紫電が飛ぶ。
適合率不足による、ギアからのバックファイアがその身を蝕んでいる証だった。

適合率の足りていない装者は、ギアからのバックファイアによりその身を損なう。LiNKERとは、その身体的負荷を低減させるため、一時的に適合率を引き上げる薬剤なのだ。

(……LiNKER無しだから……でもッ!これ、くらい……大丈夫……デスッ!!)

呪りeッTぉで首を落されてなお、アルカ・ノイズはこちらへと向かってくる。

殺戮機械として造られたノイズに、痛覚を始めとする感覚器官は存在しない。倒されるまでは、こうして標的を狙い続けるのだ。

切歌は鎌を握ると、今度は肩アーマーからバーニア噴射を行い、コマのようにグルグルと高速で回転し始める。

災輪(さいりん)TぃN渦ぁBェル(ティンカーベル)

回転しながら移動し、広範囲で敵を切り裂いていく。
先の一撃で倒せなかった人型だけでなく、イモムシ型も巻き込まれ、バラバラに切り裂かれて消滅した。

(まだまだいるデスね……ッ!)

「派手にやってくれる」
「切り刻むことない 世界に夢抱き キスをしましょうッ!強くなる為には 何がいるかを──」

レイアが切歌に気を取られた、その瞬間だった。

〈α式・百輪廻〉

シュバババババッ!

幾つもの小型の丸鋸が、エルフナインと純を取り囲んでいたアルカ・ノイズを輪切りにしていく。

足裏のローラーで走行しながら乱入して来たのは、丸鋸を放った薄紅色のギア、鏖鋸・シュルシャガナを身に纏うもう一人の装者、月読調であった。

「……女神ザババの……あ──」

助けが来た事で緊張が途切れたのか、エルフナインはそこで気を失った。

調は倒れるエルフナインを受け止めると、純に目配せしてそのまま走り去る。

「派手な立ち回りは陽動……?」

純もまた、切歌が先程放ったのぼりを、衣服の代わりとしてクリスに巻くと、彼女を抱えたまま走り出した。

そして、切歌は残るアルカ・ノイズを全て片付けると、そのまま撤退していく。

「陽動のまた陽動……少しはやるようだ」

眼前から迫る残りの群れを、調は攻撃と移動手段を兼ねた〈非常Σ式・禁月輪〉で一掃し、レイアとの距離を稼ぐ。

だが、アルカ・ノイズを倒した直後、紫電と共に身体に痛みが走り、禁月輪は解除されてしまった。

(やっぱり、わたしたちの適合係数では、ギアを上手く扱えない……ッ!)

「調ッ!」
「大丈夫、今はそれよりも……」
「分かってるデス」
「ありがとな、2人ともッ!三十六計逃げるに如かず、光の速さで撤退だッ!」

その場に立ちつくすレイアを残して、3人は撤退していく。

手持ちのアルカ・ノイズを全て失ったレイアは、撤退していく3人の後ろ姿を見ながら、キャロルに指示を求める。

「予定にない闖入者……指示をください」
『追跡の必要は無い。帰投を命ずる。ファラも十分だ──』

キャロルの指示に従い、レイアは例のアンプルを地面に放る。

次の瞬間には、戦いの跡だけが残る高架線に一陣、夏の夜風だけが流れていくのだった。

ff

「調ちゃんと切歌ちゃん離脱……クリスちゃんや、保護対象の無事も確認していますッ!」
「装者との合流を急ぎますッ!」

装者達の撤退、そしてキャロルら一味が現場を後にしたのを確認し、S.O.N.G.司令部は状況の終了と共に胸を撫で下ろしていた。

だが、安心はできない。

ロンドンにいる翼とマリアからの報告は、職員らを更なる絶望へと叩き落とすのだった……。 
 

 
後書き
この後、きりしらと純クリは、セレナに呼ばれて慌ててやってきたアドルフ博士のワゴンに乗せられ、無事にS.O.N.G.へと送り届けられたそうな……。

さて、執筆に時間をかけてしまった理由であるMAD動画とは、こちらです。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm39166620

シンフォギアXDのSSSS.GRIDMAN、及びダイナゼノンコラボを記念したMAD動画です!
来週の更新まで、こちらで凌いでもらえると嬉しいですね。それまでに、ダイナゼノンの方を完成させてお届けしますので!

それでは、次回もお楽しみに! 
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