ムードメーカー
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第二章
「五番にするで」
「加藤、長池に続いて」
「そしてマルカーノですか」
「クリーンアップが揃いましたね」
「これで盤石ですね」
「そうですね」
「ああ、これでな」
まさにというのだ。
「うちの打線はこれまでより遥かに強うなったわ」
「守備だけでなく」
「さらにですね」
「打線もよおなった」
「マルカーノが入って」
「ああ、これはええ助っ人や」
上田は笑って話した、事実マルカーノは攻守に活躍し阪急の重要な一員となった。だがそれだけでなく。
さらにだった、彼は。
上田を見るとだ、こう言った。
「レンシュー、レンシュー!」
「おい何やそれ」
「何で監督見てそう言うねん」
「練習って何や」
「いや、ボスいつも練習って言うから」
マルカーノはたどたどしい日本語で選手達に答えた。
「だからなんだ」
「それでかいな」
「それでレンシューレンシューって言うたんか」
「そうなんか」
「そう、ボスの口癖は練習」
それでというのだ。
「言ったんだ」
「成程な」
「それは面白いな」
「監督の口癖は練習って」
「それで言うなんてな」
「それはええな」
言われた当の上田も笑って述べた。
「レンシューレンシュー、確かにわしはいつも言うてる」
「そうだよね、ボスは」
「それはお前の持ちネタにしたらええ」
「これからも言っていいんだ」
「ええ、わしが許す」
当の上田自身がというのだ。
「そうするさかいな」
「それじゃあね」
「ああ、言うんや」
こう言ってそれをいいとした、そして。
マルカーノはいつも同僚達に声をかけた。
「ゲンキ?ゲンキ?」
「ああ、今日もな」
「元気やで」
「そやから頑張っていこうな」
「今日の試合も」
「そうしていこう、元気があったらね」
マルカーノはナインに屈託のない笑顔で述べた。
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