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フランスと共に

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第二章

 タレーランはワインを一口飲んでから述べた。
「私も同じだよ」
「同じとは」
「あの男とだよ」
「フーシェ卿とですか」
「そうだ、私も陰謀を愛していない」 
 こう言うのだった。
「私は決して陰謀家ではない」
「陰謀を愛しておられませんか」
「私もまたフランスに絶対の忠誠を誓っている」
「陰謀はフランスの為に使われますか」
「そうだ、私の陰謀とやらには常に相談相手そして共に働いてくれている者がいる」
 馳走を食べつつ悠然と答えた。
「それは誰かというとだ」
「どなたですか、それは」
「フランスだ」
 この国自身だというのだ。
「私の陰謀は常にフランスと話してだ」
「フランスと共に動かれていますか」
「そうだ」 
 こう言うのだった。
「フランスの為に使っているものだからな」
「そうなのですか」
「私は陰謀は使う必要がなければ使わないしだ」
 その話をした者にさらに述べた、彼に仕える者だったがその話をしてくれた褒美に金貨を差し出しながら述べた。その動きは気品と思いやりがあった。
「愛してもいない」
「あくまでフランスの為にですか」
「フランスと共に使っている」
「そうですか、では」
「陛下の為にか」
「そうなのですね」
「今はそうだな」 
 タレーランは笑って答えた、だが。
 彼も目は笑っていない、その笑みで答えたのだ。
「フランスは陛下が支えておられるからな」
「それ故にですか」
「陛下の為でもある」
「そしてフランスの為でもありますか」
「そうだ、だがこれからは」
「これからは?」
「それは後になってわかる」 
 ここから先は言わなかった。
「そういうことだ」
「後になってですか」
「そうだ」
 こう言って食事を続けた、この時タレーランは笑っているだけだった。やはり目は笑っていなかったが。
 後にナポレオンはロシア遠征で無残な敗北を喫しライプチヒでも敗れ失脚した、一度エルバ島から戻ったがそれも百日天下に終わった。
 この時タレーランはフーシェに語った、犬猿の仲だが共にナポレオンを失脚させる為に協力したのだ。タレーランは赤いワインを美味そうに飲みつつ述べた。
「私は彼を失脚させたがな」
「裏切ってはいないか」
「彼は間違えたのだ」
 こう言うのだった。
「そして自ら滅んでしまった」
「では我々は罪を犯していないか」
「そうだ、彼はフランスを誤らせるところだった」
「事実ロシアで敗れたな」
「あの戦争はすべきでなかった、それをしたからだ」 
 それ故にというのだ。
「彼は自ら滅んだのだ」
「だから我々に責はないか」
「そうだ、君も彼を裏切っていないな」
「余計におかしくなって帰って来たと思った」 
 百日天下の時について話した。
「あれでは三ヶ月ももたないとな」
「三ヶ月はもったがな」
「しかしああなったな」
「やはり自滅だな」
「そうだ、彼は自滅した」
 フーシェもワインを飲んで話した、だが二人が飲むワインはそれぞれ違っていた。タレーランは高価なものだったがフーシェは安いものだ。だがフーシェはそのワインを実に美味そうに飲みつつ述べた。 
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