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タンコロリン

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第三章

「そして城の中で柿を食しようぞ」
「それでは」
 こうしてだった、正之は江戸城に戻り。
 そこで柿を食しつつ彼に話した。
「タンコロリンは食われなかった柿の実のあやかしであるな」
「そう言われました」
「だからこうしてな」
「その持っている柿を全て食するとですか」
「姿を消す」
「そうなのですか」
「それ故にな」
 正之は柿を食いながらさらに言った。
「これよりだ」
「柿を食うのですな」
「そうしようぞ」
「わかりました、春に柿ですか」
「旬ではないが」
「それでもですな」
「こうした時はよかろう、ではだ」
 正之はここでその者だけでなく周りに言った。
「お主達もな」
「食ってよいですか」
「柿を」
「そうしてよいですか」
「遠慮はいらぬ」
 周りに微笑んで話した。
「皆で食おう、かなりの数じゃ。わしだけでは食いきれぬ」
「だからですな」
「我等もですな」
「柿を食ってよいのですな」
「皆で食おう。そして食ってな」
 そうしてというのだ。
「あやかしの無念を晴らそう」
「柿を食ってそれであやかしが成仏するなら」
 供をした彼も言った。
「それでよいですな」
「そうであろう、ではな」
「これよりですな」
「柿を全て食うぞ」
「わかり申した」
 こう話してだった。
 正之と周りの者は柿を食った、そして全て食い終えた。
 以後タンコロリンが江戸の街に出ることはなかった、江戸の街が拓けてようやく街として栄えはじめた頃の話である。以後江戸で柿の実を残す者はいなかったという。


タンコロリン   完


                   2021・3・13 
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