愛情は種族を越えて
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第二章
その彼女達を見てエマニエルはさらに言った。
「人が猫を愛する様に」
「あの娘もですね」
「虎を愛しているのよ、絆はチンパンジーと虎の間でも生まれるのね」
学究の目で言った、そしてだった。
今度はシラチャタイガー動物園に行った、すると。
そこには五匹の虎模様の服を着た豚達が大きな虎から乳を貰っていた、エマニエルは彼等を見つつ助手に話した。
「あの虎はマネスといってこの前子供を産んだけれど亡くなって」
「それで、ですか」
「悲しみに打ちひしがれているのを飼育員の人達が見かねて」
そうしてというのだ。
「子供の代わりに豚達にああしてね」
「虎の服を着せてですか」
「近寄せてね」
そうしてというのだ。
「乳をあげてるの」
「よく食べられないですね」
豚達がとだ、助手は言った。
「虎なのに」
「ちゃんと餌をあげているから。それにマネスもわかってると思うわ」
「実は今お乳をあげているのが子供でなくてですね」
「豚だってね、けれど自分の悲しみを紛らせて自分を気遣ってそうしてくれた飼育員の人達の気持ちも受け取って」
そうしてというのだ。
「ああしてね」
「豚達にお乳をあげていますか」
「そうだと思うわ」
「ガウ」
「ブウ」
「ブウブウ」
「ブヒッ」
「ブヒヒ」
「ブウウ」
実際に豚達の鳴き声は豚のものだった、だが母虎は静かに乳をあげつづけていた。エマニエルはその光景を見て言った。
「虎と豚だけれど飼育員の人達の配慮だから」
「人もそこに入っていますね」
「そうなるわ」
こう助手に話した、そしてタイを巡って種類が違えど絆を持つ生きもの達を見て。
オランダに戻ってまたシェルドンと豚達を見た、そのうえで彼女は助手に話した。
「生きものの種類の違いは大きいけれど」
「それでもですね」
「その壁を越えてね」
「絆を作っていけますね」
「それも生きものよ、心があるから」
それ故にというのだ。
「それも可能なのよ、人間と他の生きものにも出来て」
「人間以外の生きもの同士でもですね」
「それは生まれるわ、ではその心をね」
それをというのだ。
「学んでいきましょう」
「これからも」
「そうしていきましょう」
こう言ってシェルドンと豚達を見ていった、彼等の中には確かな絆があった。豚達は今もシェルドンの先導を受けて忠実に動いていた。そしてシェルドンもそんな彼等を見て親し気であった。
愛情は種族を越えて 完
2021・7・28
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