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やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。

作者:殻野空穂
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第二章
  やはり平塚先生からは逃げられない。

 ホームルームが終わり、俺は自宅に帰ろうと席をたって教室から出ようとする。
 しかし俺はそこで足を止めた...。同じクラスの比企谷八幡が平塚先生に、
「比企谷。部活の時間だ」
 と言われ、連行されそうになっていた。
 そして、残念なことにそれは俺も無関係と言うわけではなかった。
 そう、俺と比企谷は昨日先生に呼び出され、強制的に「奉仕部」という、悩める生徒の手助けをしよう!みたいな感じのよくわかんない、勢いで(つく)っちゃいました!みたいな部活に入部させられてしまったのだ。
 俺はその部活に行きたくない。だいたい人助けなんて面倒なことしたくないし。
なによりその部活には雪ノ下雪乃がいる。
 ソイツは暴言吐きまくりでぎすぎすしたうざったい...、うざったいけど美少女な、悲しくなるほどの残念な奴だ。
 会うと心に致命傷を負うこと間違いなし。
 話が長くなった...さぁ、帰ろう!
「おい桐山。お前も部活だろう」
 くそっ、今日は「歯がない」の新刊の発売日なのに...。
 平塚先生はにこりと笑った。
「行くぞ」
 そう言って平塚先生は俺の腕を取ろうとする。それをぎりぎりでかわす。
 しかし先生はずいっと俺の避ける方向に手を伸ばす。だが、
「甘いですね。それと思うんですけど、この学校の教育方針である生徒の自主性を尊重し自立を促すという観点から見ると、この強制的に入部させられている今の状況には少し異議があります...」
「比企谷とおんなじことを言うな...。だが残念だったな、学校は社会に適応させるための訓練の場だ。社会に出れば君の意見など通らない。君は特に今のうちから強制されることに慣れておきたまえ」
 言うや否や拳が飛ぶ。...くそっ、これはかわしきれないっ!
 ごしゃあっとリアルに人体から出てはいけない音が出た。抉りこむような見事なまでのボディーブロー!
「くっ、息が...」
 息が苦しくなって一瞬硬直する。
 平塚先生がそのわずかな隙を逃すはずもなく俺は手を掴まれた。
「次ににげようとしたらわかるな?あまり私の拳を煩わせないでくれ」
「その拳を使用するのは確定なんですね...」
 もう痛いの無理です。
これ以上のダメージを負ったら肉体、精神ともに(ほろ)んでしまいそうだ 。 
 ...結局、先生につられて歩いていると、平塚先生は思い出したように口を開いた。
「そうだ!比企谷にも言ったが、今度逃げたら勝負は問答無用で君の不戦敗にする。もちろんペナルティも科す。三年で卒業できると思うなよ」
「精一杯、頑張らせていただきます」
 雪ノ下に負けたら学校を追い出されかねないし、将来的にも精神的にも逃げ場がなかった。


                  ×   ×   ×


 ...今、俺は見ようによっては女教師に腕をとられていて、しかも肘には胸がちょいちょい当たっているラッキーなやつに見えなくもないかもしれない。
 だが全然ちっとも嬉しくない。実際は腕をとられているのではなく、肘を極められていて、なにより今から送られるのはあの部室だ。平塚先生の胸の感触を精一杯堪能する精神的余裕はない。...ちくしょう。



「「...」」
 会話がなにもねぇ...。
 ...その空気を気にせず平塚先生は口を開く。
「...それにしても桐山。お前は逃げようとしないんだな...」
「...その言い方だと比企谷は逃げようとしたんですね」
「まぁ...な、その通りだが」
「俺、もう逃げる気無いんで、もう一人でいいですよ?」
「そう寂しいことを言うな。私が一緒に行きたいのだよ」
 平塚先生は ふっ、と優しげに微笑みかけた。普段とのギャップになんだかドキッとした。
「君は簡単に嘘をつくからな...。今君を信じて一人にしたがために逃がして歯噛みするより無理やり連行した方が私の心理的ストレスが少ない」
「なぁんだ。さいっていな理由だー」
「何を言うか...。嫌々君の更生のためこうして付き合っているのだぞ。美しい師弟愛というやつだ」
「愛...ですか。愛だの何だのよくわかりませんが、それが愛なら愛など要らないです」
「...比企谷も捻くれているが、君もなかなかだな。比企谷とはまた違った捻くれ方をしているな、君のは(ひね)くれているというより中身が(ねじ)れている、(ゆが)んでいるというのが正しいか?」
「いや、俺に聞かないでくださいよ」
「世の中をそんな(ねじ)れた見方をしながら生きて何が楽しいんだ?」
「楽しいことなんて何もないですよ」
「ふむ...、ならなんでそんな生き方をしているんだ?」
「生き方って言って良いほど大したことないんですよ、楽しいことなんてないから、才能もないから、努力して何かする意欲もないから何もしてないだけです。めんどくさいんです。努力とか。面倒だから必要最低限のエネルギーで生きたいんです」
「それは何の才能もない自分をごまかす言い訳か?」
「いや、そうではなくてですね...」
 ちょっと違うな...。俺が訂正しようとするとそれを遮られる、
「まぁいい。君が見た目以上に(ねじ)曲がっているのはよくわかった。...そんな(ねじ)れた桐山に質問だ。君には雪ノ下雪乃はどう見える」
「嫌な奴」
 即答した。嫌な奴...、まさしくそうだ。イヤー俺良いこと言った。
 ...言ってない?そうだね言ってないね。
「ほんとに比企谷とおんなじことを言うな...」
 平塚先生は苦笑した。
「非常に優秀な生徒ではあるんだが...。まぁ、持つ者は持つ者でそれなりの苦悩があるのだよ。けれど、とても優しい子だ」
「持つ者なりの苦悩ですか...」 
 何も持ってないことによる苦悩よりはいいだろ...。
「それに優しいですかね?嫌な奴って言いましたけど本音いったらもっと酷いですよ?」
「ああ、きっと彼女もどこか病気なんだろうな。優しくて往々にして正しい。だが世の中が優しくなくて正しくないからな。さぞ生きづらかろう」
「あいつが優しくて正しいのかは、もうどうでもいいです。でも世の中については俺も同じ考えです」
「そうか...」
 君もか...。というような目でこちらを見てきた。
「やはり君たちは(ひね)くれているな。うまく社会に適応できそうもない部分が心配だよ。特に君はそれなりの学力はあるのに「興味がないから...」とか言ってそこら辺でのたれ死んでしまいそうで心配だ。だから君たちを一か所に集めたくなる」
「あの部室は隔離病棟だったんですか...」
 俺も面倒なことに巻き込まれたもんだな...。
「まぁそうだ。けど君たちのような生徒は見ていて面白くて好きだよ。だから手元に置いておきたいだけなのかもしれんな」
 そう楽しげに笑っている平塚先生は俺の腕を極めている...。
 この総合格闘技じみた技もマンガの影響かな?俺の肘がみしみしと嫌な音をさせながら悲鳴をあげている...。
 そんな俺の肘はやっぱり先生の豊満なバストに当たっていた...。
 よーし今ならたっぷり堪能できるぜ!ヤッフゥーー!!!...げふん、げふん。
 ...ふぅ。ここまで完璧に腕を極められていたら、さすがの俺も抜け出すのは困難だな。
 それにしてもなかなか離してくれないなぁ...。いやもうほんと残念。
 ...おっぱいは二つなのでバストはバスツと複数形にするべきだと思いました。
 
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