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異生神妖魔学園

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とある牛角男との出会い

 
前書き
今回で異生神妖魔学園の転移は終了です。次回から不定期になるのであしからず。 

 
昨夜の出来事から翌日、紺子と一海は再び街へ出かけていた。


紺子「うう……まだおへそがムズムズする……」


自転車を駐輪場に置き、歩きながら服をめくり、一海にいじられたへそを出す。
紺子はむずがゆいへそをボリボリかいた後、一海に問う。


紺子「つうかよ、カズミン。昨日の夜使った、あのー…………何とかの門?」

一海「異世界の門?」

紺子「そうそう。あれマジでどうやって覚えたんだ?」

一海「え?だから心火を燃やしたら―――――」

紺子「いや、真面目に答えてくれ。心火を燃やしても絶対それできねぇだろって」


昨夜出てきた無数のパイに巨大パイ、そして辰蛇の顔面に直撃した激辛麻婆豆腐。食べ物ばかりだが、誰かから教わったのかもしれない。
では一体誰から教わったのか。紺子の表情は本当に真剣だった。


一海「………もう、しょうがないなぁ………」


一海はやれやれといった表情をした後、真実を明かしてくれた。


一海「無亞からだよ」

紺子「無亞が?」

一海「うん。あれを使いたかったからどうすればいいのか聞いてみたら教えてくれたんだ」

紺子「いやいや、お前大丈夫か?おかしなことされてねぇよな?正気保ってる?」

一海「まだ未完成だから問題ないよ」

紺子「じゃあ完成したら狂気に飲み込まれるじゃねぇか」


だが一海のことだ、妖狐にして玉藻前の血を継いでいるから問題ないだろうと確信した。
すると途中ですれ違った赤髪の………紺子のクラスメイトにして親友である龍族こと赤川龍哉が紺子と一海に気づき、話しかけてきた。


龍哉「おう、紺子とカズミンじゃないか。何の話してんだ?」

紺子「よう龍哉。今カズミンと異世界の門について話してたトコなんだ」

龍哉「異世界の門?それってクトゥルフの……」


紺子たちの通う学園にはクトゥルフ神話に出てくる生物もいる。だが一海は妖狐のはず。クトゥルフとは無縁の人外が異世界の門を使えるなんてあり得ないと言おうとしたが、紺子がその疑問に答えるように教えてくれた。


紺子「カズミンは『まだ未完成』とか言ってるけど、何でも無亞から教わった創造の門を使いたかったみたいでさぁ……」

龍哉「何で覚えようと思ったんだ?そこが気になるんだが」

一海「え?使いたかったから覚えようとしただけですけど」

龍哉「…………悪用する気がないならいいけど、使いすぎには気をつけろよ?一応言うが、紺子をその門に入れるとか変なことは考えるなよ?」

紺子「おい怖いこと言うんじゃねぇよ!?」

一海「大丈夫大丈夫。僕出雲姐ちゃん好きだけど、あの中に入れるわけないじゃん。ヤンデレじゃあるまいし………」


そう言って顔を紺子と龍哉から背ける一海。なぜ背ける必要があるのか、紺子は不安になった。


龍哉「あー、紺子?相談ならいくらでも聞いてやるよ?」

紺子「そうする」


とはいえ、一海の過去が過去なだけに仕方ないと言わざるを得ないのだが、紺子に対しての依存は本人も気づかないうちに悪化していた。










しばらくして、紺子たちはゲームセンターに到着した。
ところがいざ入ろうとしたその瞬間だった。


一般人たち『キャアアアアアアッ!!!』

紺・一・龍「「「!?」」」


突然どこからか女性の甲高い悲鳴が聞こえてきた。


紺子「何だ!?」

一海「今ゲーセンの後ろから悲鳴が聞こえたよ!?」

龍哉「なんか嫌な予感がしやがる……急いで行くぞ!!」


悲鳴が聞こえたと思われるゲームセンターの後ろへ向かう3人。そこには燦々たる光景が広がっていた。
紺子たちが見たものは不良らしき数人の倒れた人間の学生、着物姿の男に首根っこをつかまれながら持ち上げられている不良のリーダーらしき人間。
一方で不良のリーダーを持ち上げている着物姿の男は眼鏡をかけており、頭に牛の角を生やし、斧を背負っていた。


牛角男「貴様ァ…………愚かな人間風情が…………『お前テーセウスに殺された化け物だろ』と言ったか…………!?」

不良のリーダー「ぐっ…………な、何だこのおっさん…………!?い、息が…………!」


牛角男は怒りと殺意、憎悪に満ちている血走った目で不良のリーダーを睨みつけている。


紺子「おいおいおいおい!?なんかブチギレてないか!?」

龍哉「チッ、無視できねぇ………!止めないと!!」

一海「先輩!!」


むやみに突っ込むのは危険だと言おうと一海が制止しようとしたが、その前に龍哉が真っ先に動いていた。
牛角男を止めようと走り出した龍哉は彼めがけて飛び膝蹴りを食らわせる。


龍哉「オラァ!!」



ゴシャッ!!



牛角男「オボッ!?」


飛び膝蹴りが決まり、牛角男は怯むと同時に不良のリーダーの首を離す。龍哉はすぐにその人間に話しかける。


龍哉「おい!何があったかは知らねぇけど、早くそいつら担いで逃げろ!」

不良のリーダー「ぐっ………何でガキのテメェなんかが俺に………!」

龍哉「いいから行け!!あと少しのところで殺されるところだったんだぞ!?死にたくなきゃさっさと逃げろ!!」

不良のリーダー「チッ…………クソが!」


不良のリーダーは悪態をつくが、紺子たちから見て彼は本当に殺されかけていた。やむを得ず龍哉の言う通り仲間を起こしたり担いだりして逃げていく。
当然だが、まだこれで終わりではない。不良たちを襲った牛角男を何とかしなければならないからだ。牛角男は標的を自分を攻撃した龍哉に変え、血走った目で睨みつける。


牛角男「誰だ貴様………なぜ私の邪魔をした…………!?」

龍哉「通りすがりの学生だ。ところでおっさん、何があって不良たちにキレてたのかは知らねぇが落ち着け!」

牛角男「うるさい!!人間の分際で私に意見をする気か!?」

龍哉「意見って、俺は―――――」

牛角男「黙れ!!貴様ら人間のせいで私はひどい目に遭い、ひどい仕打ちを受けてきたんだ!!そのような奴らの意見など、ひとつも聞くものか!!」


龍哉は牛角男の怒りを鎮めようと説得しようとするが、見た目が人間であるためか彼の怒りはヒートアップしていく。そんな牛角男の見た目も人間だが………。
すると3人は夢でも見ているのか、牛角男の筋肉がどんどん肥大化していき、着物がどんどん破れていく。


牛角男「私は………殺さなければならない…………!!殺さなケレバナラナイッ!!貴様ラ人間共ヲォォォォォォォォォォ!!!!」


牛角男の激しい怒りと憎悪に満ちた咆哮が轟く時、全身の皮膚が燃えるようになくなり、筋組織と骨格筋がむき出しになる。全身が燃える中、その炎によって新たな皮膚と鎧が作られ、口は大きく突き出す。先ほどの姿とは打って変わり、面影として残ったのは牛の角と斧だけ。
そう、その姿こそが牛角男の本来の姿。ギリシャ神話に登場する牛の怪物にして、ミノスとパシパエの間に生まれた息子。迷宮に閉じ込められ、最期は彼が言っていた英雄テーセウスに殺されたといわれる『ミノタウロス』だった。


ミノタウロス「ブモオオオオオオオオオッ!!!!」

龍哉「ミノタウロス…!」


周囲の人々はミノタウロスと化した牛角男の姿を見るなり悲鳴をあげ、パニックを起こし、クモの子を散らすように逃げていく。


龍哉「紺子、カズミン!!他の奴らを避難させろ!!」

紺子「お、おう!」

一海「龍哉先輩はどうするんですか!?」

龍哉「こいつは俺に任せろ!急げ!!」


龍哉はすぐにミノタウロスに向かって走り出し、攻撃を仕掛ける。紺子と一海は人々を安全な場所に誘導させる。


一海「ちょっと、写真とか動画とか撮ってる場合!?」

紺子「そんなものより自分の命を大事にしろよ!!早く逃げないと死ぬぞ!?」


避難を進める一方でも龍哉はミノタウロスに攻撃し続けていた。しかし、いくら殴っても蹴ってもミノタウロスには怯む気配はなかった。


龍哉「何でだよ……!?こんなに殴ったり蹴ったりしてるのに、全然効かねぇって……!」

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオ!!」

龍哉「危なっ!?」


その程度かと言わんばかりに咆哮をあげながら龍哉に殴りかかろうとする。ギリギリで回避したのはいいものの、その速度は風を切るほどだった。もしあの攻撃を顔面に食らっていたら、間違いなく潰れているだろう。


ミノタウロス「オオオオオオオオオ………!!」


するとミノタウロスの口から何かが溢れ出ているのが見えた。よく見ると、それは炎だった。


龍哉「まさかあいつ……炎も使えるのか………!?」

ミノタウロス「オオオオオオオオオオオオ!!」


ミノタウロスは龍哉めがけて咆哮と共に炎を吐き出す。龍哉はミノタウロスの背後に素早く回ってかわすが、彼が立っていた場所には大きな焼け跡があり、地面も大きくえぐれていた。


龍哉「牛野郎、調子乗んなよ…………!これでも食らいやがれ!!龍王連撃―――――」



ブォンッ!!



龍哉「うおっ!?」


一度先輩の舌寺に仕掛けたことがある連続パンチ、龍王連撃打。それを繰り出す前にミノタウロスが背負っている斧を手にし、龍哉を斬りつける。
なんとか回避できた龍哉だったが、こう見えてその攻撃をかすっていた。見ると、腕に小さな切り傷ができている。


ミノタウロス「ブモ!!ブモォォォ!!ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」


切り傷で済んだ龍哉にミノタウロスはさらに激昂し、攻撃もさらに激しくなっていく。
攻撃どころか避けるのも精一杯になっていき、やがて龍哉に疲労が見え始める。次の攻撃をかわそうとした瞬間彼は石につまづいてしまった。



ゴシャアッ!!!!!



龍哉「ガッ!!?」


龍哉の全身に鈍痛が走る。ミノタウロスが自身の巨体を使った突進を仕掛けてきたのだ。
吹き飛ばされた龍哉はそのまま壁にめり込み、気を失ってしまった。


紺子「龍哉!?」

一海「龍哉先輩!?」

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


ちょうどその時、人間たちの避難を終えた紺子と一海が戻ってきた。壁にめり込んだ龍哉を見て動揺し、駆け寄ろうとする2人。


ミノタウロス「オガアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」


そんな2人の存在に気づいたミノタウロスは一度斧を置くと、彼女たちに襲いかかる。


紺子「オゴッ!?」

一海「うっ!?」


ミノタウロスの拳が見事に直撃。2人は別の壁に叩きつけられた。


一海「うう………って、出雲姐ちゃ………!?」


幸いにも一海は軽傷で済んだが、紺子は頭から血を流しながら気を失っていた。
それを見て呆然とした一海だったが、やがて全身からどす黒い感情が沸き上がってくるのを感じた。


一海(玉藻前)「……………………貴様、やってはならんことをしたな……………………!!」


自身の大事な『家族』が、『義姉』が傷つけられた一海は激怒した。再び玉藻前の人格が現れ、再び顔中に刻印が浮かび上がり、ミノタウロスを睨みつける。


一海(玉藻前)「人間に敗れ、殺された獣風情が…………妾の愛しき出雲紺子を傷つけおって……………………!!その罪、死をもって償え!!!」

ミノタウロス「ッ!!ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


ミノタウロスの標的は完全に一海となり、再び手にした斧を投げつけた。対して一海は妖術で斧を止めると、それをミノタウロスめがけて蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされた斧はミノタウロスから外れ、一海に突進する。


一海(玉藻前)「ふんぬっ!!」


突進は一海の回し蹴りによった受け止められた。だが次の瞬間。


ミノタウロス「オオオ!!」


ミノタウロスが突進を受け止めた一海の足をつかんだのだ。


一海(玉藻前)「!?」

ミノタウロス「ブモォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」



ビダンッ!!



一海(玉藻前)「ウボッ!!」


一海の足をつかんだミノタウロスはそのまま地面に叩きつけ始めた。



ビダンッ!!ビダンッ!!ビダンッ!!ビダンッ!!



それも何度も何度も叩きつけた。立て続けに上空へ投げ飛ばし、再び地面に叩きつけられる寸前、一海のみぞおちに強烈なパンチを叩き込んだ。



ドゴォッ!!



一海(玉藻前)「ゲハァ!?」


一海は血反吐を吐いた後、再び壁に激突。意識が朦朧としているところをミノタウロスに首をつかまれる。


一海(玉藻前)「ぐっ………ぁ……がぁぁ…………ぁぁぁ…………!」

紺子「……………………っ……………………ううう……………………!」


ちょうどその時紺子が意識を取り戻し、目を覚ました。何が起きたのか把握しようと頭を整理しようとするが、ある光景が視界に映った。
自分たちを襲ったミノタウロスが一海の首をつかんでいたのだ。しかもミノタウロスは頚椎ごと引き抜こうとしていた。


紺子「カ……………………ズ……………………ミ……………………ン……………………!」



ドクンッ



ミノタウロスに首をつかまれている一海を目の当たりにした紺子から鼓動が強く鳴り響くと同時に、頭の中に声が響き渡った。





戦え……………………。





紺子「!?」





戦えと言っている……………………。





戦わなければ…………大事なものを失うぞ……………………。





声がやんだ時には紺子はうつむき、全身を小刻みに震わせていた。


紺子「…………………んなこと……………………んなこと……………………」






























紺子「んなことさせるかぁぁあああぁあぁぁぁああああぁぁああぁああぁぁあ!!!!!」


紺子の叫びと同時にミノタウロスは彼女の方に目を向ける。するとそこから無数の火球、水球、風刃、鋼刃、氷球、雷槍がミノタウロスめがけて飛んでいき、それらは全てミノタウロスに直撃。先ほどまでダメージを受けていなかったミノタウロスはさすがにこれには怯み、一海の首を離した。


ミノタウロス「ブモォ………!!」


何が起きたといったような目で紺子を見るミノタウロス。彼の目に映ったのは一海のように尻尾が9本生えた紺子の姿だった。


紺子「牛野郎…………うちの大事な家族に手ェ出してんじゃねぇよ!!」


ミノタウロスがまばたきをした瞬間、紺子が一瞬にして目の前に現れたかと思うと、ミノタウロスの頭を蹴り飛ばした。
突然の出来事に状況が追いつかないミノタウロスだが、紺子はさらに怒涛の攻撃を放ち、さらによろけさせる。


ミノタウロス「モッ………ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」


紺子を一刀両断しようと斧を振るおうとするが、斧を持つ手を攻撃され、斧は弾き飛ばされる。さらに追い討ちをかけるように紺子はミノタウロスの股間を殴りつけた。



グシィアッ!!



ミノタウロス「オッ!?」

紺子「ウォラァァァァァ!!」



ドグオォォォォォォン!!!!!



ミノタウロス「!?!?!?!?!?!?!?」


とどめとばかりに紺子にみぞおちを殴られ、ミノタウロスの巨体が吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられたミノタウロスはそのまま崩れ落ち、倒れ込む。続けて全身が再び炎に包まれたかと思うと、人間の姿である牛角男に。それを見届けた後、紺子の尻尾の数は元の1本になり、すぐに一海の元へ。


紺子「カズミン!おいカズミン、しっかりしろ!」

一海(玉藻前)「…………う…………す、すまぬ…………出雲紺子…………妾のしたことが…………」

紺子「あんまりしゃべんな!何とかすっから………!」


紺子はみのりを尾行する前の時のように静かに目をつぶり、静かに精神統一。両手を一海に向けて前へ差し出すと、印を結ぶ。


紺子「癒しの風よ、汝の傷を埋めよ。出雲流妖術“命癒ノ術”」


すると不思議なことに一海の傷がみるみる塞がっていき、数十秒も経たないうちに完治してしまった。そればかりか玉藻前の人格も刻印もまた消えていった。


一海「ありがとう出雲姐ちゃん………けど………出雲姐ちゃんの頭が…………」

紺子「え?」


紺子はまだ頭から血を流しており、今度は一海が両手を紺子に向けて前へ差し出し、印を結ぶ。


一海「今度は僕が治すね…………霊術“治癒ノ風”」


紺子が一海の霊術を受けている中、ミノタウロスだった牛角男が意識を取り戻し、起き上がった。


牛角男「う…………い、痛い…………体中が痛い…………特に股間が…………」


紺子と一海も牛角男が起き上がったことに気づいた。2人はすぐに牛角男に近づくと、彼もそれに気づいたように話しかけた。


牛角男「え!?ちょ、大丈夫ですか!?」


紺子の頭から流れている血を見るや否や驚愕する牛角男。


一海「大丈夫だって?お前はこれが大丈夫のように見えるのか?出雲姐ちゃんを傷つけたのお前じゃないのか?」

牛角男「え?一体何のこと………って、何ですかこの大惨事!?何があったんだ!?」

一海「とぼける気か!?これやったのお前だけだぞ!!」

牛角男「私がやった……!?で、ですが私は覚えてませんよ!?覚えてるのは不良たちがわざと私にぶつかってきたまでで……!」

一海「まだ―――――」


詰問を続けようと何か言おうとする一海だが、すっかり完治した紺子がそれを制止する。


紺子「もうやめろ。それ以上何言っても無駄だ。たぶんやり過ぎて記憶障害起こしてるかもしれねぇ。それより龍哉を助けねぇと」

一海「そうだった!先輩を運ばないと!」


牛角男の突進を食らった龍哉はまだ気を失っており、壁に埋もれたままである。


紺子「まあ運ばなきゃダメだけど、どっか安全な場所に行かねぇとな」

牛角男「あっ、ちょっと……」


正気を取り戻した牛角男を無視し、壁から龍哉を引っ張り出す紺子と一海。龍哉を背負ったのは紺子で、2人はこの場から離れることに。
途中パトカーのサイレンの音が耳に入ったが、あの牛角男はこれから逮捕されるんだろうと思い、気に留めなかった。


紺子「さて、どこに行けばいいやら………」


EVOLUTON SPACEに行こうかと考えていたが、距離が長すぎる。するとたまたま近くを通りかかった龍華に声をかけられた。


龍華「ん?紺子とカズミンじゃねぇか……って、何でお前らボロボロなんだ?紺子は兄貴背負ってるし、どうしたんだ?」

紺子「そういう龍華こそどうしたんだ?」

龍華「ああ、マスターの頼みでコーヒー豆を買いにな。『ブルーマウンテン』、『ハワイ・コナ』、『モカ』、『エメラルドマウンテン』を頼むって言われたんだ。で、お前らが立ってるトコはコーヒー豆専門店の前ってわけ」

一海「え?」


紺子と一海はコーヒー豆専門店といわれる店の方に視線を移すと、誰かが店から出てくるのを目にした。


???「そんじゃ行ってくるっす~」

紺子「ゲッ!?『ペロリスト』!?」

???「うひょ?紺子っち?」

龍華「舌寺先輩!?何で舌寺先輩がここに!?」


店から出てきた紺子たちの先輩、赤井舌寺。彼の姿を見るなり紺子はまた腹とへそを舐められると思ったのか一海の背後に隠れ、一海は警戒しながら舌寺を睨みつける。


舌寺「って、何でみんなボロボロなの?ていうか龍哉っちどうしたの?」

一海「そう言う出雲姐ちゃんのお腹舐めまくってたペロリスト先輩こそここで何してたの?」

舌寺「え?買い物だけど?店長のお使いで」

紺・一・龍「「「店長?お使い?」」」


気絶している龍哉を除く3人が一斉に首をかしげる。


舌寺「というかここ、《《俺っちの居候先》》だよ」


店の入り口の上には『ハイドラの息吹』と書かれたアンティークな看板があった。


舌寺「とりあえず入る?店長に伝えとくから」 
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