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異生神妖魔学園

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大きくなりました♡ 後編

その後始まった授業はもう教師たちにとって散々だった。
特にトリノに至っては、


トリノ「チョーク重すぎるッ……もう……限………界………」


と言って巨大化したチョークの重さに耐えられず下敷きになり、保健室に運ばれたほど。もちろん保健室内も備品もベッドもコーティアによって巨大化していた。さすがの真島も「俺が胃薬と頭痛薬飲みてぇよ!」と嘆くほどである。
しかしユウジ11は別。持っていたサバイバルナイフで巨大チョークを削ると、手持ちサイズにし、黒板にある漢字2文字を書いた。


【自習】

ユウジ11「おし、これから30分自習な。余った時間で狩猟のビデオを観せるぜ」


何のために削ったんだ、ユウジ11。


ユウジ11「ところで朝から学園長見てねぇって話があるんだが、誰か知らねぇか?」


全員知るはずがなかった。何しろ生徒たちはおろか、他の教師たちも全員辰蛇から連絡を受けていないのだから。
となると辰蛇は本当にどこへ消えたのだろうか。だが気にしていても仕方がない。生徒たちは授業に、教師たちは仕事に集中せねばならなかった。


石蛇「うーん、このチョーク……これで彫刻作るには手頃なサイズね」










4時間目の授業が終わり、生徒たちは食堂へ。だがコーティアは気を遣っていたようで、酷だと思ったのか、食堂内はもちろん備品も巨大化していなかった。


夏芽「おばちゃんたち、聞いたよ。コーティア先生が校舎大きくさせたんだってね」

ジャック「トリノちゃんもチョークで潰れたほどだろ?みんなあの状態でよく授業受けられたねぇ…」

竜奈「はい。特に石蛇先生なんかチョークで彫刻を作ろうとするほどでした」


食堂に次々と集まる生徒たち。愚痴を聞く夏芽とジャック。やっと地獄の時間が終わったと言わんばかりに席にもたれかかる者、テーブルに寝そべる者がやたらと多かった。
その中には頭痛を起こしている者、テーブルに寝そべりながらブツブツ文句を言う者もちらほら。


遠呂智「保健室で真島先生から頭痛薬もらってきたからそれ飲め」

王臥「すみませんねぇ。帰ったらゆっくり寝ますよ」

遠呂智「まさかトリノ先生がいるとは思わなかったが、理由がチョークで潰れたって………」

王臥「え!?トリノ先生ケガしたんですか!?」


だが、この場にある妖狐だけはいなかった。それを気にした龍華がスタミナ丼をテーブルに置き、近くを通りかかったメリーに声をかける。


龍華「なあメリー、ちょっといいか?」

メリー「はい?」

龍華「ここにカズミンがいねぇんだが、何か知らねぇか?」

メリー「一海さんならさっきの授業終わった後、すぐに理科室に行きましたが……それに一海さん、朝からとてつもない怒気帯びてましたもん」

龍華「はぁ!?カズミンの奴、朝からキレてたのか!?あいつ何があったんだ!?」


龍華は信じられないというような表情で肩をつかむ。


メリー「直刀さんが聞いたんです。『学園長が作った植物に狐耳の先輩が呑み込まれた』って」

龍華「え…………」


思わず絶句するほどだった。それもそのはず、その呑み込まれた狐耳の女の子の正体は言わずもがな………。


龍華「ライエルはちゃんといるよな………てことは紺子じゃねぇか!!あいつ、一体何が………!?」










その一海はというと、メリーの言う通りしっかり理科室にいた。
直刀の言う通りだった。一海は怪植物から紺子の気を感じ取っており、紺子を呑み込んだ怪植物に睨みを利かせ、怪植物も一海を呑み込まんとばかりの様子だった。


一海(玉藻前)「…………これ以上妾を怒らせたくなければ、妾の愛しき出雲紺子を解放せよ」


顔中に刻まれた刻印。白く染まった目。猫を殺そうとした男の時のように、一海には玉藻前の人格が表に出ていた。
だが相手は辰蛇が作ったといわれる怪植物。そんな命令に従うはずもなく、あるものを吐き出す。


紺子「~~~~~………」


吐き出されたのは紺子の下半身、またあらわになった尻尾とパンツ。怪植物はそれを使って一海に攻撃を仕掛けようとする。
しかし攻撃する直前、怪植物はあることに気づく。一海の足が炎に包まれているように見えた。


一海(玉藻前)「二度は言わんぞ?早く解放せねば貴様を引き裂き、燃やし尽くすぞ」


忠告はしたものの、怪植物は紺子の下半身を再び呑み込むと、一海に襲いかかった。
それを見た一海は素早くかわし、凍えるような冷たい声でこう言い放った。


一海(玉藻前)「…………よかろう。ならば塵芥と化して死ね。惨たらしく絶命せよ」


紺子の下半身が呑み込まれたのを目の前で見たせいで、一海の怒りの炎はなおさら燃え上がっていた。
まず炎に包まれた足で怪植物を蹴り飛ばし、怯ませる。そして何かブツブツ言いながら妖力を溜め始める。


一海(玉藻前)「いざや散れ、黄泉咲き咲く怨天の花………!“彼岸花・黒炎獄”!!」


一海の足元には黒紫の球体があった。それを怪植物めがけて蹴り飛ばし、球体に直撃した怪植物は黒紫の炎に包まれた。


一海(玉藻前)「妾に逆らわねば苦痛もなく死なせてやったものを………」


そう言って怪植物が悶え苦しみながら暴れ回るのを絶対零度の目で見る。怪植物は自身を包む黒紫の炎を消そうと近くにあったスプリンクラーのスイッチを入れた。


一海(玉藻前)「無駄じゃ」


理科室に冷たい雨が降り注ぎ、一海の全身を濡らす。黒紫の炎を消そうとする怪植物も浴びるが、どういうわけか一向に消える気配がない。それどころかますます燃え上がり、さらにのたうち回る。
やがてピクリとも動かなくなり、黒紫の炎が消えた時、目の前には原型をとどめないほどの燃えカスとなった怪植物の姿があった。


一海(玉藻前)「さて、助けるとするかの」


燃えカスから現れる2つの人影。片方は狐の耳と尻尾を生やしたへそ出しの金髪の少女。もう片方は頭に角を生やし、巨乳が特徴的な黒髪のツインテールの少女。
一海はその正体がすぐにわかった。いや、すでに知っていたと言った方が正しいだろう。それは妖狐とウロボロス。妖狐の方は出雲紺子、そしてウロボロスの方は朝から生徒と教師が見ていないといわれる学園長の喰輪辰蛇だった。


紺子「ぁ……………ぅぁ……………」

辰蛇「ふぇ……………はぇ……………」


2人は怪植物のものであろう液体とスプリンクラーから出る水にまみれ、力なく体をピクピクと震わせていた。


一海(玉藻前)「出雲紺子………喰輪辰蛇………いや………」


紺子と辰蛇に近づくと、顔中の刻印が消え、目の色も元通りになり、玉藻前の人格が消える。


一海「出雲姐ちゃん………学園長………」


玉藻前の人格が消えた一海は悲しそうな目で紺子と辰蛇を見つめた。










同刻、学園で面倒なことが起きているその頃、とある港にやって来た闇音はある人物を探していた。


闇音「予定ではここのどっかに武器商人がやって来るって話だったな。いい銃があればいいんだがな……」


そう呟きながら武器商人と呼ばれる人物を探す闇音だったが、あっさりと見つかった。


武器商人「…………はぁ、ここはホントにセキュリティが厳しいトコだな。商売しづらいったらありゃしねぇ」


コンテナに身を潜めながら倉庫へ進むその男は死纏さんほどボロボロではないが、黒いコートとフードをまとっており、不健康そうな青白い肌をしている。
ガラガラのだみ声を出しながら周囲に警戒し、なんとか倉庫の扉まで辿り着いた。すると誰かが声をかけてきた。


闇音「おい、お前が武器商人か?」

武器商人「!?」


新たな銃を求めている闇音だった。


武器商人「って、これはこれは、俺のお得意様の神楽坂闇音じゃないですか。心臓に悪いぜ………」


見つかったと思い動揺する武器商人だが、その男が闇音だったことに安堵する。
そして闇音自身もこの武器商人の正体を知っていた。


闇音「……お前、確か………『ドレイン』だったか?」

武器商人「誰が相手の体力を吸う魔法だ!?『ブライド』だ、『ブライド』!」

闇音「冗談だ。テロ以来だな」


顔馴染みと言わんばかりの様子である。
武器商人の名は『ブライド』、闇音がテロリストとして活動していた時世話になった男。彼が使う銃などの武器は常に高品質なものだけでなく、銃の改造や製造も取り扱っており、裏業界では有名だった。


ブライド「確かにテロ以来だな、ストレンジャー。にしても何だその格好?侍っぽい格好してるな?ボロボロだが」

闇音「侍じゃねぇよ。陰陽師っつう……まあ、その、何だ………わかりやすく言うと、オーガとかゾンビとか、場合によっては悪霊とかそういった魔物を退治する仕事をしてるんだ。日本に帰ってきてからこっちが本業でな」

ブライド「ほう、陰陽師だったのか」

闇音「悪かったな、黙ってて」

ブライド「気にすんな。どんな変わり者だろうがお前が言う魔物だろうが、金さえ払ってくれれば商品は差し上げるぜ。それにここじゃ商売しづれぇし、とりあえずこの倉庫に入ってからいろいろ話そうか」

闇音「化け物共にも売ってるのが気に食わねぇが、そうしねぇとやっていけねぇんだろうな……早速だが武器を見せてくれ」

ブライド「ヘッヘッヘッ、サンキュー」


誰にも使われていない倉庫に入る闇音とブライド。誰にも見られていないことを確認すると、ブライドはフードとコートからたくさんの銃と手榴弾を取り出してズラリと並べ、その中には最新式のロケットランチャー、レールガンもあった。


闇音「常々思ってたが、どうなってんだそのフード?しかもロケットランチャーどころかレールガンも売ってるって……」

ブライド「そりゃお前、バレねぇようにいろいろとやってるからな。武器商人になるには高度な隠密技術も必要になるもんでな。まあ購入するとなるとアタッシュケースも必要になるがな」

闇音「そういうのはヤクザと極道に売ってやれ。まあはなっからイカれてる俺が言うのもなんだけどな……」


ロケットランチャーとレールガンも売っていることを知った闇音もさすがに理解に苦しんだ。
小声で呟くも、ブライドに聞こえることはなかった。


ブライド「ロケランは日本円?で数億、レールガンは10億するぜ」

闇音「戦闘機が数機買えそうな値段だな……」

ブライド「もちろん高品質な分それだけの価値があるということだ、ストレンジャー」

闇音「…………まあいい、俺が欲しいのはリボルバーかマグナムの銃だ。今まで使ってきたM629がイカれちまってな」


どうやら闇音が昨夜まで持っていたリボルバーはM629という名前のようだ。


ブライド「M629がイカれた?あれ使い始めたのって確かテロ時代からだったか?よく使い続けたな。普通なら数年ぐらいで寿命のはずなんだが」

闇音「ちょくちょく手入れをしていてな。使わない日でもメンテナンスしてたぜ」

ブライド「自分でメンテナンスしてたのか。そりゃ長持ちするよな」

闇音「気に入ってたんだがな」


その気に入っていたM629は今は小屋の中に丁寧に飾られていた。同じく丁寧に飾られたマグナム、寿命が来て使い物にならなくなった数々の銃と共に。
新しい銃を求めている闇音は3箱のアタッシュケースを取り出す。その中には莫大な札束が入っており、どれもこれも全て闇音がテロ時代に稼いできたものだった。


闇音「…………」


しばらく無言でリボルバーとマグナムを見つめていたが、あるものに目をつけると、それを手に取る。


闇音「何だこれ?銃口が2つある?見た目は俺が使ってたM629とよく似ているが………」

ブライド「そいつは改造リボルバー『BR-M629』。通称『ブルーローズ』だ」

闇音「ブルーローズ?」

ブライド「銃口が2つあるんだが、そこから2発の弾丸を発射する仕組みにしてあるんだ。デザートイーグルのパワーを超えるために何度も試行錯誤して、ようやく完成した代物なんだ。だが………反動が尋常じゃねぇぐらいにヤバくてな。こいつを使ったら腕が粉砕したってあるストレンジャーが訴えまくってな」

闇音「腕が粉砕されるほどの反動か………」

ブライド「だがその分威力もヤバイぜ?コンクリートどころかダイヤモンドだろうが何だろうが木っ端微塵にできるぜ?」


ブルーローズの仕組み、危険性、威力を聞いた闇音はフッと笑った。


闇音「気に入った。化け物共を殺すのに最適だ。こいつを新しい相棒にしようじゃねぇか。で、いくらだ?」

ブライド「そうだな……専用弾もつけて、特別に50万のところを45万だ」

闇音「45万?ずいぶんと安いな」

ブライド「お得意様にはこれからも買ってもらいたいためにこの価格にしたぜ」

闇音「そうか。なら45万を出そう」

ブライド「ヘッヘッヘッ、毎度あり」


闇音は45万円を差し出すと、ついでに予備として何か買っていこうと思い、他の武器も探すことに。


闇音「ついでに、そうだなぁ………M500とデザートイーグル。あとは―――――」


闇音は新たな銃と弾丸、加えて手榴弾なども購入。かなりの大金を支払うことになったが、手持ちの金はそんなに減っていなかった。


闇音「とりあえずこんなもんか。いい買い物したぜ」

ブライド「こっちも大儲けさせてもらったぜ。さて、ストレンジャー。購入は以上か?」

闇音「ああ」

ブライド「そうか。んじゃ、こっからはブルーローズ以外の改造銃を紹介してやるよ。例えば弾がロケットミサイルのハンドガン」

闇音「いや、待て待て待て。弾がロケットミサイルって……それ使う場所限定されるじゃねぇか」


一見普通のハンドガンを見た闇音はブライドの話を遮るように口を挟む。


ブライド「ショットガンもあるぞ?」

闇音「話聞いてたか?危ねぇだろ、それ絶対。撃った瞬間爆発しまくる上に爆風もこっちに飛ぶから特攻武器じゃねぇか」

ブライド「こればっかはホントに想定外でな。他にも―――――」





2人は改造銃の話で盛り上がると、闇音はふとあることを思い出した。





焔『て、テメェェェェ!!お、陰陽師が!!《《陰陽師が何でピストル持ってやがんだァァァァァ》》!!?』





自身が殺したチンピラ風の男、砂道焔が言っていたあの言葉。それを思い出した闇音は不機嫌になり、こんなことを呟く。


闇音「………あのチンピラ風情の化け物野郎が………………」

ブライド「ん?何か嫌なこと思い出しちまったみたいだな?」

闇音「………ああ。じゃあ、当ててみるか?俺が何を思い出したのか」

闇・ブ「「リボルバーをピストルだと思った勘違い野郎がいた」」


ほぼ同じタイミングで闇音が思い出したこと、ブライドが予想したことを口に出した。


闇音「……わかってたのか」

ブライド「そりゃ俺にもあったからな。あのトーシロめ、間違えんなっての」

闇音「俺にもわかるぜ。砂道焔のクソ野郎もつい最近リボルバーをピストルとかほざきやがった。でもあのクソ野郎はもういねぇ。腕を引きちぎって頭を吹っ飛ばしてやったからな。なんか知らねぇが、あいつの頭吹っ飛ばしたら皮剥けて頭蓋骨だけになっちまった」

ブライド「そこはリボルバー使えばいいのに」

闇音「あれでデコを撃ち抜くなんて生ぬるいだろ」


そんな雑談を続けているうちに、太陽は西に沈みかけていた。
時刻は17時4分。闇音はアタッシュケースと購入した銃などをしまい、帰り支度をする。


闇音「んじゃ、俺はそろそろ帰るぜ。商売頑張れよ」

ブライド「おう。そっちも化け物退治頑張れよ、ストレンジャー」


互いに別れを告げ、闇音は倉庫から出ていった。 
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