××・×××・チャンネル
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動画を停止し、目をつぶる。
肝試しをしようと言い出したのは、誰だっただろう。
「ねぇねぇ、今週の土曜日、新月なの知ってる? 夏だし、何か特別なことしたくない? 例えば、肝試しとか!」
廃校を知っていると言い出したのは、誰だっただろう。
「あのね、あたし、良い場所知ってるの! 森の中に廃校があってね、一度だけ友達と昼に行ったんだけど、すーっごい怖いところだったんだよ。電波も届かないの! すごくない?」
そもそも、このスマホを手渡したのは誰だっただろう。
「ねえ、××君、あそこに何か落ちてるよ! ……スマホ? 誰のだろう。田中君のかな? 山田君のかな? 川村君と橋本君なわけないよね。まさか、森岡君の?」
あの時、俺は何と答えた?
「川村と橋本は違う。2人とも、焼かれて殺されたんだ。田中は……多分違う。メイちゃんは見てないけど、ぐちゃぐちゃに潰れてたんだ。たぶん、スマホもダメになってるはず。山田と森岡のは、俺が死体から回収して持ってる」
その後、彼女は何と言った?
「それじゃあ、誰のだろう? もしかして、犯人の!? な、中身を確認したほうが良いよね? でも……」
あの後、何が起きた?
ガランとした教室の中、反対側のドアが破られる。バリケードとして積んでいた机と椅子が、音を立てながら床に崩れ落ちる。
「××君! 逃げよう!」
思っていたよりも強い力で腕を引っ張られ、慌てて立ち上がった。
廊下に出た先で、彼女は何と言った?
「ここは二手に分かれよう! 一緒にいると危険だよ! 私はあいつをひきつけながら、右側からぐるっと回って2階に行くから、××君はすぐ先の階段から上がって」
「でもメイちゃんにそんな危ないこと……」
「大丈夫! あたしこう見えても足速いもん。あいつになんて捕まらないよ。……それに××君、何度もあいつをまいてくれたんだもん。疲れてるでしょ? だから、ここはあたしに任せて。ね?」
ふわりと、力強さすら感じる笑顔を浮かべる。その顔はとても綺麗で、天使と呼ぶにふさわしいものだった。
「絶対に戻ってくるから、音楽室で待ってて。約束!」
駆け出していく小さな背中。緩やかなウェーブのかかった栗色の長い髪が、腰のあたりで揺れていた。
先を見たくない気持ちを無理やり押し込め、動画を再生させる。
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