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異生神妖魔学園

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暴走特急!学園崩壊へのカウントダウン! 後編

運転手と車掌が大慌てしている一方、夢物語号に乗ってる紺子たち。テンションが上がっているディーゴに対し、紺子たちはあることに気づいた。


紺子「なあ、さっき発車メロディ鳴ってたか?」

一海「ううん」

ディーゴ「運転手や車掌が嬉しさのあまり間違えて出発したんじゃねぇの?」

龍哉「……なんか心配だから運転手に聞いてくる」

辰美「私は車掌さんに聞いてみます」


そう言って龍哉と辰美は席を外し、運転手と車掌がいる運転席へ向かっていった。





しばらくして、2人はひどく動揺したかのような様子で戻ってきた。
運転席には運転手と車掌がいるはずである。それなのになぜか2人共恐怖に引きつった顔であった。


ディーゴ「おう、運転手と車掌さんいたか?」

紺子「てかどうしたんだ?そんなに青ざめて…」

龍哉「どうしたも何も………大変なことが起きちまった………」

メリー「大変なことって?ていうか何でもったいぶってるんですか?」


先輩がこんなに青ざめているなんて。メリーは首をかしげたが、龍哉が唇を震わせながら叫んだ。


龍哉「実はな………運転手いねぇんだよ!!」

辰美「車掌さんもいません!!これ、勝手に走ってますよ!?」

ディーゴ「はぁ!?」

一海「運転手も車掌さんもいない!?それ、まずいじゃん!!」


しかし、夢物語号のスピードは龍哉と辰美が運転席に向かっていた時点で徐々に速まっていた。
しかも厄介なことに、その先にはカーブ。さらにその先は紺子たちの学園。放っておけば脱線と学園への突撃は逃れられない。
紺子たちはすぐに食べかけの駅弁を置き、運転席へ向かうことに。





紺子「マジかよ………これホントにヤバイぞ!?」


運転席を調べに向かった紺子たち。だが運転席には誰もおらず、前倒しになったレバーがあるだけだった。


辰美「どうするんですか!?」

ディーゴ「それより何で勝手に動き出したんだよ!?」

メリー「そんなことより早く止めましょう!急がないと学園が!」


言い合っているうちに夢物語号のスピードはどんどん上がっていく。
紺子たちは急いで止めようと運転席に入ろうとするが、彼女たち同様夢物語号の乗客の1人が近づいてきた。


乗客「おいおい君たち、ここは運転席だよ?遊ぶ所じゃないから自分の席に戻って」

紺子「邪魔しないで!早くこれ止めないと脱線しちまうんだよ!」

乗客「脱線?何言ってるかわかんないけど、運転手の邪魔になるから入るなよ?」

一海「運転手!?僕たちがさっき覗きに行ったらいなかったよ!?」

龍哉「ああ、どっからどう見てもいない!」


今の状況を必死に説明する紺子たち。だがいくら話しても乗客はこいつら何を言っているんだと言わんばかりに紺子たちを信じなかった。


乗客「変なことばっかり言う奴らだな…おーい、ちゃんと運転手いるよな?」

辰美「こ、紺子様……これはどうなってるんですか?」

紺子「私が聞きてぇよ…」

龍哉「まさか……俺たち以外の客って………」


そう、もうおわかりであろう。人間の乗客たちは全員、なぜ夢物語号のスピードがどんどん上がっていくのかと考える者が誰1人いなかったのだ。
気づいたのは龍哉と辰美の2人。紺子たちもその報告を受けたのだから紺子たち人外たちがすぐに止めなければ全員命はない。


ディーゴ「どうすんだよ!このままじゃみんな死んじまうぞ!!」

紺子「だったら………無理矢理でも入るしかねぇだろ!!」

ディーゴ「お前がそう言うならヤケクソだァァ!!」

乗客「あっ、ちょっと!」


乗客の引き止める声も聞かず、紺子とディーゴは運転席に入った。ドアの前に乗客を通さないと言わんばかりに龍哉、辰美、一海、メリーが立ちはだかる。


乗客「コラ!入っちゃダメだって親に習わなかったのか!?運転手の邪魔……に…………!?」


運転席は遊ぶ場所ではないと言った者とは違う乗客が立ち上がって龍哉たちを押しのけ、運転席のドアを開けたその時だった。


乗客「な゛!!?あ………あわわわわ………!?こ、こここ、ゆ、ゆゆゆゆ………!?なななななななな何が―――――」

龍哉「悪い、ちょっと寝ててくれ」



タンッ



乗客「ガ……………」


運転席に目が行った乗客だったが、その時彼は困惑するような光景を目の当たりにしてしまった。
紺子とディーゴが入っていった運転席。夢物語号の運転手は運転席に入ってきた紺子とディーゴに気づいていない。紺子が運転手に触れようとすると、すり抜けているように見えた。
摩訶不思議な光景を見て運転席のドアを開けたが、乗客がパニックを起こしかけたのはその時である。運転席には紺子とディーゴしかおらず、運転手などどこにもいなかったのだ。


龍哉「おい、まだかかるのか!?もうすぐカーブに差し掛かるぞ!!」


手刀で乗客を気絶させた龍哉が手前のカーブを指しながら叫び、ディーゴが前倒しのレバーを指す。


ディーゴ「なあ、これじゃねぇのか!?」

紺子「レバー……じゃあこれを引けば止まるってわけか!よし!」


紺子がレバーに手を伸ばし、それを力いっぱい引こうとした。
しかしどういうわけか、いくら引いてもてこでも動かないような固さでうんともすんとも言わず、びくともしないではないか。


紺子「固っ!?全然動かねぇぞ!?」

ディーゴ「はぁ!?俺にもやらせろ!」


ディーゴも力いっぱい引くが、紺子と同じくまるっきりびくともしない。


ディーゴ「固ぇ!何だこれ!?どうなってんだ!?」

紺子「だったら一緒に!!」

紺・ディ「「でぇーい!!」」


今度は紺子とディーゴが一緒にレバーを引くが、それでも動く気配はなかった。だがそうこうしているうちに夢物語号はどんどんカーブへと近づいていた。
もう時間がない。このままでは本当に全員死んでしまう。頭を抱える紺子とディーゴ。すると運転席に辰美が入ってきた。


紺・ディ「「辰美!!」」

辰美「紺子様、ディーゴさん!諦めちゃダメです!私も手伝います!一緒にやればきっと!!」


何しろ辰美はトレーニングジムの常連客。紺子に捧げるためいつも鍛えている彼女にとってはお茶の子さいさいだと思ったのだろう。


紺子「ああ、超怪力の辰美がいればレバーは動くかもしれねぇ!『いっせーのーで』でレバー引くぞ!」

ディーゴ「お、おう!」

辰美「はい!」

紺子「行くぜ!!いっせーのーで!!!」


力いっぱい一斉にレバーを引く紺子、ディーゴ、辰美。3人の力にはかなわなかったのか、レバーは少しずつ動き、徐々に元の位置に戻ってきた。だがそれに抵抗するかのように見えない『何か』が押し戻そうとする。


ディーゴ「くあッ…!!」

辰美「んっ…!!」

紺子「止まれェェェェエェェェエエエェェェェエエェェェエエェェェェェエエエエェェェェェエエエエエェェ!!!!!」


紺子が叫んだその瞬間、レバーに異変が起きた。『何か』の力が消え、一気に後ろ倒しになったのだ。



ギュギィィィィィィィィィーーーーーーッッ



火花が飛び散るほどの急ブレーキがかかり、乗客たちはパニックに陥った。
乗客たちが急いで身を屈めた中、夢物語号の速度は徐々に落ちていき、カーブに差し掛かる寸前でようやく停止した。


ディーゴ「と………止まった?止まった……のか?」

紺子「お、おう……」

辰美「そうみたいですね………」


座席を見ると、何が起きたと困惑するかのように乗客たちがざわついている。


一海「ね、ねえ……たぶん乗客のみんな何があったのか知りたがってると思うよ?」

紺子「あ~確かにな。とりあえずディーゴ、乗客のみんなに何か言ったら?」

ディーゴ「おいおいおいおいおいおいおいおい!?何無茶ぶりすんだよ!?」

紺子「いいから早く!」

ディーゴ「………ったく」


呆れ顔のディーゴはマイクを手に取り、乗客たちに先ほどの出来事を伝えたのだった。





車内アナウンスを終え、乗客たちが全員降りたのを確認した後、紺子たちも夢物語号から降りた。
紺子たちはホッとしていたが、ディーゴだけは不満そうだった。


ディーゴ「チェッ、せっかく楽しめると思ったのによ……」

龍哉「それお前だけだよな。鉄道マニアじゃない俺たちを誘ってあんな目に遭わせやがって。もうあんなことは二度とごめんだ」


険しい顔をしながら睨む龍哉。
すると辰美が………。


辰美「ファ………ファ………」

紺子「辰美?」

辰美「ファックション!!!!!」

辰美以外全員『!!!!?』


なんと辰美が大きなくしゃみをした瞬間、まるで竜巻に巻き込まれたかのように夢物語号が吹き飛ばされたのだ。


ディーゴ「ゆ、夢物語号がぁぁぁ……!」

辰美「え?」

紺子「スゲェ………」


この日、夢物語号は最初にして最後の運行となった。ディーゴにとっては一生忘れられない絶望的な思い出となるだろう。










その頃、駅で夢物語号を睨んでいた男は夢物語号が止められたことに腹を立てていた。


???「クソが!上手く行くと思ったが、詰めが甘かったか………!あのまま行けば大勢殺せたものを………次だ、次の手を考えなくては…………!」


彼の服装は貴利矢と同じ陰陽師の服装をしていたが、切り刻まれたようにあまりにもボロボロだった。さらに刀で斬られたであろう傷跡が腹や胸に、片目は失明している。そして両腕にはこれまで殺してきた人外と思われる遺骨の腕輪をつけていた。
そう、彼こそがEVOLUTION SPACEにて貴利矢が言っていた狂った陰陽師『神楽坂(かぐらざか)闇音(やみね)』。人外の他に人間をこの上なく憎み、そして一海の両親を殺害した張本人でもあった。 
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