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それから 本町絢と水島基は  結末

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第十章
  10-⑴

 3月の末、幸一郎君が、希望の高校に受かったと連絡があった。ほっとしたが、僕はそろそろ就活も始まるので、家庭教師を降りることにした。その旨を伝えると、お祝いをやるので、一度顔を見せて欲しいとのことだった。僕も、二人の顔を見れなくなるのは、何となく、物足りない気もしていた。富美子ちゃんのことも、別の意味で好きだったから。

 4月のはじめ、休業日ということで、お店に伺った。今日はテーブル席に料理が並んでいた。海鮮の巻き寿司もつくってあった。お店にはいると、みんなで迎えてくれた。僕が、来るのを待っていたようだ。

「じゃぁ 幸一郎 合格おめでとう」と、みんなで乾杯した。

「先生 僕は、高校いったら、サッカーやるよ 店も少しづつ手伝うよ」

「そうか 少しでも、お父さんとお母さんの助けになるといいね 勉強のほうも、今の調子でな」

「わかっているよ みんな、頭の良い奴ばっかりだしね 普段から、ちゃんとやるよ」

「先生 もう、来ないんだよね 私、悲しくって 食欲もなくすんだよね」と、富美子ちゃんが言ってきたが

「あら いつも、お腹すいたーって言ってくるのは 誰なんだろうね」とお母さんが。

「先生 寮なんだろう いつでも、飯食べに寄ってよ 金なんか要らないし この娘達も合えると嬉しいんだから」と、お父さんも言ってくれた。

「そーだよ 先生 私とデートしてよね 今度は、動物園いきたい」

「富美は、まだ、子供なんか」と、幸一郎君があきれていた。

「そーだよ へんな男の子より、先生の方が安心だし、好きなんだもの ねぇ 先生お願い」と泣きそうな顔をしてきた。

「いいですかね?」と、両親の了解をもらった。

「じゃぁ 考えておくよ」と返事したとたん、可愛い笑顔で応えてきた。 

 - - - - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - - - -

「モトシ 俺 寮、出ることにした。部屋、借りるわ ええとこあったんでな 急やけどな」

 入学式前に越すというので、手伝いにいった。と言っても、何にも、持ってない。布団、衣類、教科書類だけだ。近くなので、寮にあった古いリヤカーで運んだ。

 葵が家にあった使わない食器とか鍋を持って、手伝いに来た。炊事場とか便所を、懸命に雑巾がけしていた。

「テーブルぐらい要るなぁ モトシ付き合ってくれ 買いにいく」と、葵にかまわず、僕に声を掛けてきた。僕は、葵がいじらしく思えてきた。

 食べ物も買ってきたので、3人で飲んでいたが、1時間もすると、葵が「帰るね」と言って、帰っていった

「なんかさー 葵に冷たくないかー」と慎二に問いかけたが

「いやー 別にー いつも、あんなもんだよ あんまり話す奴じゃないしな」

「あれから 抱いたのか?」

「いや あれっきりだ 一度だけって、話だったし 葵も、あれから、そんな素振りも見せない」

「なんか 可哀そうな奴だな お前のこと好きだろうにな あいつ、自分ことは言わないで我慢するから・・」

「うん 俺も、考えてないわけではないんだが 哀れみみたいな気持ちがあると、あいつに悪い」

 その時、美波がやってきて

「ごめんね 今、バイト終わった。片付けっていっても たいして、無いか」と、ビールを下げていた。相変わらず、明るい声だ。

「おう ちょうど なくなる頃だったんだ 助かる」と、慎二も美波には遠慮なしだ。

「葵 来てたんでしょ もう、帰ったの?  なんか、あんまり会ってないんだけど、最近、葵見てると、痛々しいよね 部長が負担なのかな」

「そうなんだよな あいつ、教育でもあんまり、親しい友達も居ないみたいだし、高校の友達も居ないって言っていた。成人式の時でも、僕等と一緒だったよ」と僕も、気になっていた。

「なんか 俺が、クラブのこと、あいつに任せっきりだから、悪いのかよ」

「それは、しょうがないよ キャンパス違うから 絢が、仲良くなったみたいだから、もっと、接するように、言ってみるよ あいつ、恥ずかしがり屋だけど、何とかするだろう」

「そうなの? 本町さんと葵 仲良しなの いつの間に あんなに、けん制し合ってたのに」と、美波は驚いていた。

 そうだよ、僕も慎二も、ふたりが、あんなに打ち解けると思っていなかったんだから

 
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