イベリス
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第十二話 四月を過ごしてその六
「日本酒は苦手なんだよね」
「部長もお酒飲まれるんですか」
「ワイン派だよ」
「そうですか」
「飲むならね」
「それで日本酒はですか」
「駄目なんだ」
つまり飲めないというのだ。
「どうもね」
「そうなのね」
「そう、それでね」
そのうえでというのだ。
「謙信さんみたいにね」
「飲まれることはですか」
「ないよ、グラスにワインを入れて」
そうしてというのだ。
「チーズとかソーセージとかパスタをね」
「おつまみにしているんですか」
「白だと魚介類だね」
「そちらですか」
「和食は好きだけれど」
それでもというのだ。
「日本酒は飲めないから」
「白ワインですか」
「そちらを飲んでいるよ」
「白ワインですか、そちらの方が身体にいいですね」
「そうだよ」
実際にとだ、部長は答えた。
「日本酒よりもね」
「白ワインの方がなんですね」
「赤ワインもだよ」
「そちらもですか」
「身体にいいんだ」
こう咲に話した。
「だから僕もね」
「飲まれるならワインですか」
「日本酒よりもね、あとビールもね」
こちらもというのだ。
「あまりね」
「飲まれないですか」
「日本酒は糖分が多くて身体のことを考えるとね」
「あまりよくなくて」
「ビールもね」
「ビールはプリン体ですね」
「そう、それでね」
まさにというのだ。
「それがあるからね」
「痛風ですね」
「なったことないけれど」
それでもとだ、部長は咲にさらに話した。そのことを彼女に対して真面目な顔で言っていくのだった。
「もうね」
「滅茶苦茶痛いんですよね」
「最初に足の親指の付け根がね」
この部分がというのだ。
「まさに万力で締め付けられる感じで」
「痛くなって」
「それでね」
「そこからですか」
「歩けなくなる位痛くなって」
そうしてというのだ。
「そよ風が当たったり人の肩がぶつかっただけでね」
「痛いんですね」
「物凄くね、風が当たっただけで痛いから」
それでというのだ。
「痛風って言うんだ」
「その名前の由来ですか」
「お肉や卵、ケーキの生クリームも危ないけれど」
「ビールがですか」
「一番ね」
何といってもという口調での言葉だった。
「怖いんだよ」
「そうなんですね」
「そう、ちなみにバターもね」
これもというのだ。
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