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それから 本町絢と水島基は  結末

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8-⑶

 今年の学祭も水泳部は豚串の出店をした。焼き手は1年の男子2人、僕は、串刺しに専念していた。
慎二は1年の女の子3人を連れて、呼び込みをやっていた。

 今年は、最初から順調に売れて、炭酸も併せて売っていたから、売り上げは好調だった。会計と売り手は美波と葵がやっていたが、一番忙しかったかもしれない。僕の横には、宏美が黙々と黙って串を刺している。いつも、気がつくと宏美が横に居るのだけど、別に、話し掛けて来る訳でも無い。

「宏美ちゃん」と、美波が声を掛けたが、チラっとこっちを見て、そのまま、振り返って

「美咲ちやん、こっち、手伝って」と、呼び込みをしている美咲ちゃんに声を掛けた。

「わかりました、先輩」と、言って、慎二の肩をポンと叩いて、机の中に移った。もう、3年以上は今年も顔を見せないのだ。他のクラブでは、何人か居るのだけど。

 お昼頃、絢がやってきた。慎二が

「おぉー 美人3人組のお嬢さん 買ってって」と、僕の方を見て、あわてて

「モトシ モトシっ こっち 売って」と、声を掛けてきた。

 その時には、もう、遅かったのかもれない。絢と詩織が、あの宏美のほうを見つめていた。でも、僕は、目を見張った。あの茜ちやんが・・今まで、見ていた茜ちゃんではなかった。絢も言ってたけど。薄い化粧なんだろうが、大人びて見えて、今までの無邪気そうな面影は消えていた。色気さえ感じるほどだった。一緒に居る絢でさえ、子供じみて見える。何にも、言うことも無く、15本まとめて買って、3人は去って行った。

「あぁ どうも、あの3人は苦手なんだよね 怖くて」と、葵がため息をつくように言っていた。

「俺も、ハラハラしたよ モトシは全然、気にしてないんだから」と慎二が続けた。

「なんの話だよ」と、僕が聞いたら

「当たり前じゃない モトシ、宏美ちやんと」と、葵が言っていたけど、宏美は下を向いたままだった。美波は、なんか「そんなわけないじゃない 気にしすぎよ」と笑っていた。

 その日の夕方、潮食堂で反省会をやっていた。慎二が

「みんな、ありがとう きょうの売り上げだけで、去年の2日間の売り上げを越してしまったよ 乾杯!」

「今年は、1年の6人が頑張ってくれたからね」と、葵が続けた。

「そうだよ まとめて買ってくれる人も居たしね」と、美波は意味深な言い方だった。

 いつものように、慎二の隣は舞野で、僕の隣にはいつの間にか宏美だ。舞野はいつものように、慎二にベタベタしているが、宏美は、僕の取り皿の上がなくなると、それとなく、いつも何かを取ってくれている。何なんだろう、この娘はと思いながら、それが当たり前になって行く。 
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