英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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第132話
~カイエン公爵家城館・饗応の間~
「「――――――」」
「防いでください、クラウ=ソラス!!」
「―――――!」
敵達がレーザーを放って攻撃してくるアルティナはクラウ=ソラスに命じて障壁を展開させて仲間達への攻撃を防いだ。
「参ります――――――そこっ!!」
「―――見えた!――――斬!!」
クラウ=ソラスが敵達の先制攻撃を防ぐとエリスはデュバリィ直伝の残像を飛ばして敵を惑わす剣技――――――神速剣を、クルトは敵に向かって突進して双剣による横一文字攻撃を叩き込むクラフト―――ハングスラッシュでそれぞれダメージを与え
「蒼き翼よ―――――シュート!!」
「エニグマ駆動―――――エアロシックル!!」
二人の攻撃が終わると後衛のミュゼはクラフト、アルフィンはアーツでそれぞれ追撃し
「ブリューナク起動、照射!!」
「―――――!」
二人の追撃が終わるとアルティナがクラウ=ソラスに収束したレーザーを放たさせて更なる追撃を叩き込んだ。
「「――――――」」
5人の攻撃を受けた敵達は反撃に足の部分から砲撃を行ってエリス達にダメージを与えたが
「女神よ、どうか我らにお慈悲を――――――」
エリスが女神への祈りで癒しの雨を降らせるクラフト―――――ホーリースコールで自分達の傷を回復した。
「ふふ、これは秘密兵器です♪――――――ペンタウァショット!!」
ミュゼは反撃に懐に隠し持っている小銃に込められている魔弾を放って敵達にダメージを与えると共に一ヵ所に引き寄せ
「光よ、闇を照らせ――――――イノセントレイ!!」
「ハァァァァァァ…………そこだっ!!」
ミュゼが敵達を一ヵ所に引き寄せるとアルフィンがクラフト―――――イノセントレイ、クルトがクラフト―――――双剋剣で敵達に纏めてダメージを与えた。
「リビジョン、アンド――――――トランスフォーム!!」
そこにアルティナがクラウ=ソラスを二体に分身させた後分身の内の一体のクラウ=ソラスと一体化して”ギアモード”の姿になり
「シンクロ完了――――――ブレイドモード!!アクセル――――――ズバっと!!」
更に”剣”に変身したもう一体の分身したクラウ=ソラスを手に持った後敵達目掛けて突進し、剣と化したクラウ=ソラスで一閃し
「ソラリス――――――ブリンガー!!」
「「――――――!!??」」
更に剣と化したクラウ=ソラスを敵達目掛けて蹴り飛ばして炸裂を起こした!アルティナが放ったSクラフト―――――ソラリス・ブリンガーによってダメージが限界に来た敵達は爆発を起こして全身が破壊された!
「ハァァァァ……ッ!砕け散れ!!」
「「「!!」」」
クレア少佐は先制攻撃にクラフト―――――フリジットレインを放ち、フォルデ達はそれぞれ散開して頭上から襲い掛かってきた氷塊を回避し
「そらっ!鷹爪撃!!」
「!」
攻撃を回避したフォルデは跳躍してクレア少佐目掛けて高速で槍を突き立てようとしたが、クレア少佐は側面に跳躍して回避した。
「切り裂け――――――そこっ!!」
「勝機――――――モータルミラージュ!!」
更にステラが命中すると広範囲に刃が広がる風の魔力を込めた弾丸――――――ウィンドバレットを放つとクレア少佐はステラの背後に移動して回避すると共に怒涛の銃撃をステラとフォルデ目掛けて放った。
「キャッ!?」
「おっと!」
クレア少佐の反撃にステラはダメージを受け、フォルデは間一髪のタイミングで回避に成功した。
「まさに必殺――――――白露の鎌撃!!」
「キャッ……!?」
そこにリタが広範囲に地を這う斬撃を放つクラフト―――――白露の鎌撃を放ってクレア少佐にダメージを与えると共に怯ませ
「巻き起これ――――――シルフィードキス!!」
「収束せし風よ――――――気体連弾!!」
「う……っ!?」
クレア少佐が怯むとフォルデは突きによる烈風を巻き起こすクラフトで、ステラは2連続で空気弾を放つ魔術で追撃した。
「くっ………妨害せよ――――――フリーズジェイル!!」
ダメージから立ち直ったクレア少佐は両目に何かの紋様を顕現させた後”力”を発動し
「これは”黒の工房”の時の……!」
「”黄昏”の力を利用した一時的に敵の動きを制限させるチート技か……!」
クレア少佐が発動した”力”によって体が突然重くなったステラとフォルデはそれぞれ厳しい表情を浮かべた。
「目標を制圧します――――――ミラーデバイス、セットオン!!」
一方クレア少佐は二人にできた隙を逃さず一気に決着を着けるために自信のSクラフト発動時に必要なミラーデバイスで二人を囲み
「オーバルレーザー――――――照射!!」
そしてミラーデバイス目掛けて導力銃によるレーザーを攻撃を放った。
「させません――――――ハアッ!!」
しかしその時”霊体”の為、クレア少佐が発動した”黄昏の力”による影響が及ばなかったリタが槍で周囲を薙ぎ払うクラフト―――――豪薙ぎ払いでフォルデとステラを包囲していたミラーデバイスを一瞬で破壊した為、クレア少佐のSクラフトは不発に終わった。
「な……っ!?彼女だけ”巨イナル黄昏”による強制力が効いていない……!?」
自身のSクラフトを不発に終わらせたリタを見たクレア少佐は信じられない表情でリタを見つめ
「浄化の光よ、かの者達に蝕む卑しき闇を退け――――――大いなる浄化の風!!」
「お……っ!」
「私達の動きを制限した”黄昏”の力が消えましたね……!」
「フフ、二人の動きを制限していたのは”呪い”による力の一端なのですからもしかしてと思って試してみたのですが、やはり状態異常を浄化する魔術やアーツなら回復できるようですね。」
更にリタは状態異常を回復する治癒術を発動するとフォルデとステラを蝕んでいた”巨イナル黄昏”による強制力は消え去り、それを確認したリタは微笑んだ。
「くっ……もう一度……!――――――フリーズジェイル!!」
唇を噛みしめたクレア少佐は再び”力”を発動してフォルデ達の動きを制限し
「ハァァァァァァ…………!砕け――――――」
更に続けてクラフト―――――フリジットレインを放ってフォルデ達を纏めて凍結させようとしたが
「狙うはそこっ!!」
「キャアッ!?」
リタが発動した異なる魔力弾を連続して広範囲に放つ魔術―――――連続水光弾・広範囲を受けて怯み
「浄化の光よ、かの者達に蝕む卑しき闇を退け――――――大いなる浄化の風!!」
クレア少佐が怯むとリタは再び浄化の魔術でフォルデとステラの動きを制限していた”呪い”を解除した。
「まさか”黄昏の呪いによる強制力”であるこの”力”すらも通じない上”力”の解除までできる相手が存在しているなんて、私やレクターさんにとっては最悪の相手ですね……!ならば――――――先に彼女を制圧するのが優先!落ちなさい――――――αオンワン!!」
ダメージから立ち直ったクレア少佐は厳しい表情でリタを睨んだ後リタを最優先に制圧する為にリタ目掛けて追尾性の導力弾を連続で放ち、クレア少佐が放った導力弾はリタに襲い掛かったが何と導力弾はリタをすり抜けた。
「攻撃がすり抜けた……!?まさか――――――幻影!?」
「フフ、私は”幻影ではなく本物ですよ?”まさに必殺――――――玄武の地走り!!」
自身の攻撃がすり抜けた事に驚いた後リタが幻影であると推測しているクレア少佐の様子を見て不敵な笑みを浮かべたリタはクレア少佐目掛けて地を這う斬撃を放った。
「!!」
自分目掛けて襲い掛かる斬撃に対してクレア少佐は側面に跳躍して回避に成功したが
「決める――――――死角の投槍!!」
「!?あぐっ!?くっ……アークス駆動―――――ティアラル!!」
続けてリタが自身の神槍を念動で操ってクレア少佐の背後から奇襲した。回避した直後による僅かな硬直を狙われたクレア少佐に回避する術はなく、脇腹の一部を念動によって操られた神槍によって抉られた事で呻き声を上げた後脇腹から血が出血し始めた。リタの奇襲によって思わず呻き声を上げる程のダメージを受けたクレア少佐だったがすぐに立ち直って自身に回復アーツをかけて出血を止めると共にダメージを回復した。
「一気に決めましょう、フォルデ先輩!」
「任せとけ、後輩!」
「そこっ!」
しかしその時自身の回復によってできたクレア少佐の隙を逃さないステラがフォルデと視線を交わした後導力ライフルでクレア少佐目掛けて広範囲の牽制射撃を行ってクレア少佐をその場から動けないようにした。
「信念を込めた閃空、天をも貫け!」
「しまっ――――――」
そこにフォルデが一気にクレア少佐に詰め寄った後槍を回転させて竜巻を発生させてクレア少佐を頭上へ打ち上げた後槍から天をも貫く勢いの闘気エネルギーを放ち
「狙いは一点!!」
ステラは銃口に集束したエネルギーをクレア少佐目掛けて放ち、フォルデが放った闘気エネルギーとステラが放った集束した導力エネルギーは同時にクレア少佐に命中した!
「「グングニル・ツイスター!!」」
「キャアアアアアアア……ッ!?う……くっ………まだ……です………!」
ステラとフォルデが放った協力技によって深刻なダメージを受けたクレア少佐だったが、気力で持ちこたえた後態勢を立て直す為に大きく後ろに跳躍してフォルデ達との距離を取った。
「フンッ!!」
「「「「「「!!」」」」」」
ガウェインは先制攻撃代わりに光の斬撃波―――――洸迅剣をリィン達に放つとリィン達はそれぞれ散開して回避し
「そこだっ!――――――疾風!!」
「―――――緋空斬!!」
「光と闇よ…………双剋剣!!」
「甘い!」
ガウェインの先制攻撃を回避したクロードとリィン、オリエは反撃に複数の矢による高速連射攻撃と炎の斬撃波、光と闇の斬撃波を放ったがガウェインは剣を一閃して自分に襲い掛かる遠距離攻撃を纏めて無効化し
「貫く――――――剛震突き!!」
「咬み尽くしなさい―――――洸牙絶咬!!」
「逃がしはせぬ――――――斬!!」
「ぐっ……!?」
「う……っ!?」
ディミトリとエーデルガルトが左右から同時にそれぞれ強烈な突きを放つクラフトで襲い掛かってくると光の渦を発生させて敵を引き寄せ、薙ぎ払いを放つクラフト―――洸閃牙で反撃して二人を吹き飛ばした。
「悪しき者達を裁く焔よ――――――贖罪の聖光焔!!」
「ぐう……っ!?」
その時アイドスが聖なる炎を発生させる高位の神聖魔術を発動してガウェインにダメージを与えると共に怯ませた。
「ハァァァァァァ…………!止めっ!!」
その隙を逃さないかのようにオリエは広範囲に連続で斬撃波を放つ剣技――――――ブレイドスラッシュをガウェインに叩き込み
「唸れ――――――オォォォォ…………螺旋撃!!」
「砕け散りなさい――――――紫洸滅天翔!!」
「これに耐えられるか!?――――――空裂槍連撃!!」
オリエに続くようにリィン、エーデルガルト、ディミトリはそれぞれの技の中でも高威力を誇る技でガウェイン目掛けて一斉に攻撃したが
「叩き潰す――――――魔洸刃!!」
「ぐ……っ!?」
「……っ!?」
「く……っ!?」
それぞれが同時に最後の一撃を放つ瞬間ガウェインは反撃に大剣を地面に叩きつけて強烈な衝撃波を発生させてリィン達にダメージを与えると共に吹き飛ばし
「光よ―――――貫け!!」
「うおっと!?」
「ハッ!!」
「!!」
更に後方にいたクロード達目掛けて実体なき光の剣で離れた敵達を攻撃するアルゼイド流のクラフト――――熾洸剣で攻撃し、3人はそれぞれ咄嗟に散開して回避した。
「斬の型―――――紅燐舞華斬!!」
散開して回避した際に前方に跳躍してガウェインの攻撃を回避したアイドスは神剣を”溜め”の構えをしながらガウェイン目掛けて溜めた力を解放すると共に一閃した。
「!!」
アイドスが振るった一閃技に対してガウェインは咄嗟に自身の得物で受け止めたが、”神剣”であるアイドスの得物に対してガウェインの得物である大剣は”黒の工房”の優れた技術によって作られたとはいえ、さすがに力を溜めた”神剣”による強烈な一撃に対する強度は耐えられず、アイドスと鍔迫り合いの状態になっているとガウェインの大剣に小さな亀裂が入り始めた。
「ぬ……っ!?」
自身の得物の異変に気づいたガウェインは瞬時に剣を退くと共に後ろに跳躍してアイドスとの距離を取った。
「エニグマ駆動―――――ダイアモンドダスト!!」
「ぬう……っ!?オオオオォォォ……ッ!」
その時オーブメントの駆動を終えたオリエがアーツを発動するとガウェインを中心に吹雪が発生した後ガウェインの左右から氷柱が次々と襲い掛かり、それらに対してガウェインは剣を振るって次々と襲い掛かる氷柱を斬り落とした。
「星の洸よ、弾き飛べ!星光――――――紅燐剣!!」
「ぐう……っ!?」
そこにアイドスがガウェイン目掛けて逃げ場のない星の光と真空の刃を放ち、オリエが放ったアーツに対処していた為アイドスが放ったクラフトへの対処が遅れたガウェインは自分目掛けて襲い掛かる無数の刃を受けるとダメージを受けると共に怯んだ。
「今だ!3人とも、合わせてくれ!」
「ええ!」
「任せろ!」
「おうっ!そんじゃ、まずは俺から行くぜ――――――逃がさないぜっ!!」
アイドスの攻撃によってガウェインが怯むとリィンはエーデルガルト、ディミトリ、クロードの三人に呼びかけ、リィンの呼びかけに二人と共に答えたクロードはガウェイン目掛けて逃げ場のない矢の雨を降り注がせてガウェインにダメージを与えると共に動きを牽制し
「砕け散りなさいっ!!」
クロードの攻撃が終わると続けてエーデルガルトが跳躍からの叩きつけでガウェインを中心に強烈な衝撃波を発生させてガウェインにダメージを与えると共に怯ませて後ろに下がり
「貫く――――――とうっ!ハァァァァァァ…………!!」
エーデルガルトの攻撃が終わるとディミトリがガウェイン目掛けて跳躍した後そのまま連続で槍を繰り出してガウェインにダメージを与えた後エーデルガルトのように後ろに下がり
「二の型―――――疾風!!」
ディミトリの攻撃が終わるとリィンがカマイタチを纏った電光石火の一撃離脱技でガウェインにダメージを与えてからガウェインから距離を取るとリィン達はガウェインを四角形を形どるような位置で包囲した状態になり、リィンが攻撃を終えるとリィン達は止めにそれぞれのSクラフト―――――リィンは”無双覇斬”、エーデルガルトは”洸凰剣”、ディミトリは”ノーブル・ズィーガー”、クロードは”神威”をガウェインに叩き込んだ!
「「「「スクウェアハーツ!!」」」」
「ぐううううううう……っ!?」
リィン達が放った連携技――――――スクウェアハーツをまともに受けてしまったガウェインは大ダメージを受けると共に呻き声を上げて大きく怯んだ。
「好機!煌魔の光よ、今こそ子爵閣下を蝕む呪いを滅しなさい――――――絶技・天眼無双!!」
リィン達による連携技で見せたガウェインの大きな隙を逃さなかったオリエは光の双剣と化した双剣でガウェイン目掛けて必殺の一撃を叩き込み
「うおおおおおおお……っ!?ガアアアアアァァァァ……ッ!!??」
オリエのSクラフトを受けたガウェインは更なる大ダメージを受けた後呻き声を上げ、そして苦しみの声を挙げ始めた!
~城館内~
リィン達がガウェイン達と激闘を繰り広げているその頃、アンリエット達と戦っているアリサ達は未知の敵であるアンデッド達、そしてアンリエットの死霊術によって操られているクロウと戦っていた。
「オォォォォ…………」
「シニタクナイ、シニタクナイ……!」
「あわわわわわ………っ!?お願いだからぶっ飛んで~!!」
「石化弾―――――発射!!なっ!?き、効いていない……!?」
襲い掛かってくる死霊達に恐怖したミリアムはオーバルギアに搭載されているグレネードを死霊達に放ち、マキアスは石化効果を持つ散弾を放ったが物理攻撃が一切通らない死霊達には二人の攻撃は無意味であり、それを見たマキアスは困惑した。
「”実体”を持たない幽霊達には魔力効果がない物理攻撃は無意味よ!落ちよ、裁きの雷――――――審判の轟雷!!」
「幽霊達を攻撃する場合はアーツか、霊力が込められたクラフトならば効果があるよ!浄化の弾丸よ、邪悪なる者達を退け――――――ホーリーチャージ!!」
「ちなみに幽霊達の弱点属性は空属性だ!だから、幽霊達を攻撃する際は空属性のアーツ、もしくは聖剣による物理攻撃が有効的だ!―――”アウドムラ”よ……全てを凍てつかせ!ハアッ!セイッ!斬!!」
シェラザードとオリヴァルト皇子は助言した後それぞれ霊体にも効果がある魔術やクラフトで攻撃し、ミュラーは自身の得物である魔剣に込められし氷の力を解放して死霊達を氷漬けにした後止めの一撃で氷漬けにした死霊達を砕いて止めを刺した。
「空属性アーツですね!エニグマ駆動―――――ゴールドハイロゥ!!」
「”聖剣”も効果的ならば、”聖剣”であるこの剣の攻撃は効くという事ですか……!――――ハァァァァァァ…………ッ!!」
シェラザード達の助言を聞いたエリオットは死霊達にとって弱点である空属性アーツで攻撃して死霊達を滅し、ユーシスは自身の得物が霊体も攻撃できる退魔の剣でもある”聖剣”である為、そのまま死霊達に斬りかかって次々と死霊達を切り裂いて滅した。
「あ”~………」
「ニク………!」
「ヒ……ッ!貫け――――――ミラージュアロー!!」
ゆっくりと近づいてくるゾンビ達に一瞬恐怖したアリサだったがすぐに気を取り直してゾンビ達目掛けて魔力を纏わせた矢を放って命中させて怯ませ
「遅すぎますわ!!」
ゾンビ達が怯むとアリサとリンクを結んでいるシャロンが鋼糸で追撃してゾンビ達を戦闘不能に陥らせた。
「炎よ――――――タリスマンソード!!」
「オラよっと――――――逝きやがれっ!!」
「せーの……!ヤアッ!!」
「逃さん――――――セイヤアッ!!」
「竜巻よ―――――薙ぎ払えっ!!」
「ふおらああああぁぁっ!!」
セドリック、アッシュ、フィー、ラウラ、ガイウス、アガットもそれぞれゾンビ達にクラフトを叩き込んでゾンビ達を戦闘不能に陥らせた。
「ぐっ……左右に散開してくれ!!」
「「「!!」」」
アンリエットの死霊術の影響によって無理矢理トワ達と戦わされているクロウは自身が放とうとしているクラフトの構えに入るとトワ達に警告し、クラフト―――――ブレードスローをトワ達に放つとトワ達は左右に散開して回避した。
「ごめんね、クロウ君……!巻き込んで―――――ヘイルストーム!!」
「痛いでしょうけど、男なんだから我慢しなさい!雷よ――――――崩雷殺!!」
「ぐ……っ!?」
クロウのクラフトを回避したトワは攻撃した範囲内の敵を1か所に固める竜巻を発生させる特殊弾丸を撃ってクロウの動きを制限させ、トワのクラフトによってクロウの動きが制限されている間にサラはクロウを麻痺状態に陥らせて無力化することを狙う為に跳躍した後雷を宿した強化ブレードを叩きつけてクロウを中心に雷のドームを発生させて追撃し
「フフッ、これはキツイが我慢してくれよ!?――――――ハアッ!!」
アンゼリカは止めの一撃にクラフト―――――ゼロ・インパクトでクロウに襲い掛かったが
「危ねっ!?」
クロウは間一髪のタイミングでアンゼリカの零距離による寸勁を回避した。
「おいおい、避けちゃダメじゃないか、クロウ。今のが決まれば君を気絶させて無力化できたのに。」
「今のをまともに喰らったら”気絶”どころか、この後の戦闘に支障が出るくらいのダメージを受けただろうが!?つーか、お前だけマジで俺に攻撃してねぇか!?」
クラフトを回避されたアンゼリカは意外そうな表情を浮かべてクロウに文句を言い、アンゼリカの文句に対してクロウは疲れた表情で反論した。
「ハッハッハッ、それは気のせいさ。コォォォォォ………ハアッ!!―――――そこだっ!!」
「気功技で自分を強化しているんだから、思いっきり本気を出しているじゃねぇか!?―――――うおっ!?」
クロウの反論に対して呑気に笑って流したアンゼリカはクラフト―――――ドラゴンブーストで自身を強化した後クロウ目掛けてクラフト―――――レイザーバレットを放ち、表情を引き攣らせてアンゼリカ二指摘したクロウはアンゼリカが放ったクラフトを必死で回避していた。
「ア、アンちゃん……」
「全く……あたし達の目的を忘れているんじゃないでしょうね?」
アンゼリカの様子を見てそれぞれ冷や汗をかいて呆れたトワとサラだったが気を取り直して再びアンゼリカと共にクロウとの戦闘を再開した。
「剣よ―――――踊りなさい!!」
「!えいっ!」
クロチルダは結界の前にいるアンリエットに直接攻撃する為にアンリエットの頭上に焔の魔剣を躍らせて襲い掛かる魔術―――――魔剣舞踏を発動してアンリエットに攻撃しようとしたがアンリエットは頭上からの攻撃に気づくと転位魔術を発動してその場から転位しして回避した。
「白き刃よ――――――お願い!!」
その時エマは転位を終えたアンリエット目掛けて霊妙なる刃を解き放つ特殊魔法―――――イセリアルキャリバーを放った。
「集え、深淵の雷―――――ヴォア・ラクテ!!」
「ッ!?」
襲い掛かる白き刃に対してアンリエットは冷静な様子で魔術を発動した。するとアンリエットの魔術によって放たれた暗黒の電撃はアンリエット目掛けて襲い掛かる白き刃を呑み込んでそのままエマに襲い掛かり、それを見たエマは側面に跳躍して回避した。
「凍えなさい――――――絶対吹雪!!」
「巻き起これ、無慈悲なる抱擁――――――氷垢螺の吹雪!!」
クロチルダがアンリエット目掛けて魔術によって直線状に襲い掛かる吹雪を放つと対するアンリエットも直線状に襲い掛かる吹雪の魔術を発動し、互いの魔術がぶつかり合った瞬間互いの魔術は相殺された。
「まさか水属性が適性の姉さんの水属性魔術を同じ水属性の魔術で相殺するなんて……!」
「フフ、暗黒魔道が専門分野のはずの”死霊使い(ネクロマンサー)”が”理”の上位クラスの魔道まで扱える上、転位魔術を戦闘に組み込める程転位魔術の腕前が熟達しているなんて、悔しいけど純粋な”魔術師”としての腕前は彼女の方がエマどころか私よりも優れているようね。」
「感心している場合じゃないでしょうが!?ったく、リィンの奴は一体何を考えて”死霊使い(ネクロマンサー)”なんていう”星杯騎士団”が”外法認定”するような”堕ちた存在”を使い魔にしたのよ……!?」
クロチルダの魔術が相殺された事にエマが驚いている中クロチルダ自身は苦笑し、アンリエットに対する賞賛の言葉も口にしたクロチルダの発言に呆れたセリーヌは真剣な表情でアンリエットを睨みながらリィンを思い浮かべた。そしてすぐに気を引き締め直したエマとクロチルダは再びアンリエットとの魔術の撃ち合いを再開した。
「よし―――――何とか、クロウ以外のアンデッド達を無力化できたな……!」
「アンデッド達を無力化したからと言って油断しないで!”この城館自体が戦場”になっているんだから、例えアンデッド達を無力化できても死霊使い(ネクロマンサー)であるあの女がその気になれば、城館内―――――いえ、最悪市街戦や郊外での戦闘によってできた双方の軍人達をアンデッドとして操ってこの場に呼び寄せる可能性も考えられるわよ!」
「へっ、だったら次のゾンビ連中を呼び寄せる前にあの女をシメればいいだけだろうが……ッ!」
アンデッド達の無力化を確認して安堵の表情を浮かべているマキアスにセリーヌが警告し、アッシュが目標をアンリエットに定めて攻撃を仕掛けようとしたその時
「あ”~……」
「オオオォォォ………」
「ええっ!?た、倒したはずのゾンビ達が……!?」
「あわわわわわ……っ!?お、起き上がった~!?」
「一体何故……!?」
何と倒したはずのゾンビ達が起き上がり、それを見た仲間達がそれぞれ血相を変えている中アネラスは驚き、ミリアムは表情を青褪めさせ、ガイウスは信じられない表情で声を上げた。
「”痛覚”がないゾンビ達を戦闘不能にしてもすぐに起き上がってしまいます……!ゾンビ達を完全に無力化するには言葉通り”滅する”しかありません……!」
「め、”滅する”って一体どうやって……」
エマの助言を聞いたエリオットは困惑の表情で疑問を口にした。
「頭を狙いなさい!幾ら痛覚がないゾンビとはいえ、頭を斬るなり狙撃するなりして何らかの手段で頭に致命傷を与えれば滅する事ができるわ!」
「あ、頭に致命傷を与えろって……!それって人を殺すのと同じじゃない……!?」
「ましてや彼らは既に死者なのに、更に死体に鞭を打つような外道な事をしろと言っているようなものではないか……!?」
エリオットの疑問に対して答えたクロチルダの答えを聞いたアリサは表情を青褪めさせて声を上げ、ラウラは厳しい表情でゾンビ達を睨んだ。
「戦闘不能が無意味ならば拘束はどうですか……!?――――――ハッ!!」
その時シャロンが目にも止まらなぬ早業でゾンビ達を鋼糸で全身を縛って拘束した。するとゾンビ達はその場で蠢いてはいても鋼糸によって拘束されているため動けなかった。
「ナイスよ、シャロン……!」
ゾンビ達の様子を見たアリサは明るい表情で声を上げた。
「へっ、今度こそ往生しやがれやぁっ!!」
「増援を呼ばれる前に一気に片をつける……!」
「死者達どころか、我らの仲間まで操ったその咎……その身をもって償ってもらうぞ!」
一方その様子を見て好機と判断したアッシュ、フィー、ラウラは一斉にアンリエットに襲い掛かってそれぞれの得物をアンリエットに振るったが霊体であるアンリエットには物理攻撃は届かず、3人の攻撃はアンリエットの身体をすり抜けた!
「何ぃ……っ!?」
「手ごたえがない……!?」
「まさか、”幻影”、もしくは”分け身”か……!?」
攻撃がすり抜けたことに3人が驚いたその時
「エニグマ駆動―――――ハイドロカノン!!」
「ガッ!?」
「あうっ!?」
「ぐ……っ!?」
アンリエットが強力な水流を発射するアーツを発動し、至近距離でアーツを受けた3人は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「ラウラ!?フィー!?アッシュ!?」
「アーツを使ったって事は”幻影”や”分け身”ではなく、”本体”のはずなのに何で3人の攻撃がすり抜けやがったんだ……!?」
「攻撃がすり抜けるなんて、まるでリタちゃんみたいですよね……?」
壁に叩きつけられた3人を見たエリオットは声を上げ、アガットは真剣な表情でアンリエットを睨んで疑問を口にし、アガットの言葉を聞いたアネラスは困惑の表情でアンリエットを見つめながらリタを思い浮かべた。
「”攻撃がすり抜ける本体”………リタみたい……――――――!まさか貴女……”死霊”なの!?」
アガットとアネラスの言葉を聞いてすぐに心当たりを思い出したシェラザードは真剣な表情でアンリエットを睨んで問いかけた。
「……?ああ、なるほど。あなたさま達は今までわたしをあなたさま達と同じ”生者”だと思っていたのですね。」
「そういう口ぶりをするという事はまさか貴様も貴様が操っている奴ら同様”死者”なのか……!?」
一方シェラザードの言葉の意味が一瞬理解できなかったアンリエットは不思議そうな表情で首を傾げたがすぐに事情を察して呟き、アンリエットの言葉を聞いたユーシスは目を細めてアンリエットに問いかけた。
「”はい、その通りです。”――――――改めて名乗りましょう。わたしの名はアンリエット。リィン・シュバルツァー様の”守護霊”としてベルフェゴール様達と共にリィン様をお守りする者の一人です。」
「まさか”死霊使い(ネクロマンサー)自身が死霊”だったとはね……!」
「ええっ!?そ、それじゃあリィンは今度は”幽霊”の貴女と”契約”したの……!?」
「ったく、”幽霊”にまで手を出すとか見境なさすぎだろ、あのシスコンリア充剣士は……!」
「まさかリィンの”悪癖”が異種族や女神どころか、”幽霊”にまで効果が発揮するとはね……」
「私はリィン君の気持ちがよくわかるよ。あれ程の可憐な美少女ならば、例え幽霊やゾンビだろうと”性魔術”ができるなんて最高じゃないか!」
「ア、アンちゃん……というか”幽霊”とまで”そういう事”ができるんだね………」
改めて名乗った後自身が幽霊である事を名乗ったアンリエットの名乗りを聞いたアリサは驚き、セリーヌは目を細め、クロウとサラは呆れ、仲間達がそれぞれ驚いたり信じられない表情をしている中一人だけマイペースでいるアンゼリカの様子に周囲の仲間達が冷や汗をかいて脱力している中呆れた表情で溜息を吐いたトワは僅かに頬を赤く染めて若干興味ありげな表情でアンリエットを見つめ
「”守護霊”………そういえばリタ君もかつてはセリカ殿の”守護霊”としてセリカ殿と”契約”していたという話だったな。」
「ああ。リタ君がセリカさん達の元を離れてリィン君達灰獅子隊に協力している理由は恐らくだが、かつての自分と同じ存在になったアンリエット君に対する興味関連だろうね。」
ある事を思い出したミュラーの言葉に頷いたオリヴァルト皇子はリタがリィン達に協力している理由を推測した。
「フン、奴が幽霊ならば話は早い……この奥義ですぐに無力化してやろう!――――――眩く光よ、我が剣に力を!」
アンリエットが幽霊と知ったユーシスは詠唱すると共に自身の得物であり、ウィルによって強化された聖剣――――――”天剣エルヴィース”に指を這わせた。すると聖剣は光を纏うと共に真の姿を顕し
「ハアッ!アイオロス――――――セイバー!!」
ユーシスは跳躍した後アンリエット目掛けて真の姿を顕した聖剣を投擲した!
「……ッ!消えて――――――サタナスディザイア!!」
一方ユーシスが投擲した聖剣を脅威と判断したアンリエットは四つの凝縮した暗黒の魔力球を聖剣目掛けて放った。しかしユーシスが投擲した聖剣はウィルによって凄まじい強化がされていた為、アンリエットがその身に秘める膨大な魔力を凝縮した魔力球は聖剣にぶつかると全て消し飛ばされてそのままアンリエットに襲い掛かった!
「―――――そうはさせないわよ。」
するとその時ベルフェゴールが転位魔術でアンリエットの前に現れると共に結界を展開してアンリエットに襲い掛かろうとした聖剣を弾き飛ばした!
「貴女は……!」
「やはり貴女もこのフロアに潜んでおられたようですわね――――――ベルフェゴール様。」
ベルフェゴールの登場を目にしたセドリックは声を上げ、シャロンは静かな表情で呟き
「大丈夫、アンリエット?」
「はい…………助けて頂きありがとうございます、ベルフェゴール様。」
ベルフェゴールに声をかけられたアンリエットはベルフェゴールに感謝の言葉をかけた。
「チッ、その結界がテメェの足止めじゃなかったのかよ!?」
ベルフェゴールの登場を目にして舌打ちをしたアッシュは厳しい表情でベルフェゴールに問いかけた。
「うふふ、幾らご主人様から”加減”を命じられているとはいえ、”結界”だけで足止めするような甘い事をする訳がないでしょう?」
「……だったら何で最初からアンリエット達と一緒にわたし達に戦闘を仕掛けなかったの?」
アッシュの問いかけに答えたベルフェゴールの話を聞いてある事が気になったフィーは真剣な表情で訊ねた。
「ルシエルの想定だと、貴女達相手なら、アンリエットとアンリエットの死霊術で十分だからよ。私はあくまで”保険”よ。」
「ルシエルさんが……」
「何故ルシエルさんは僕達相手だとアンリエットさんとアンリエットさんの死霊術だけで十分だと判断したんですか……?」
ベルフェゴールの答えを聞いたトワは複雑そうな表情を浮かべ、セドリックは真剣な表情で訊ねた。
「ルシエルは”人を殺すことができない”貴方達だと死霊達は滅する事ができても、不死者――――――”人の死体を滅する事はできない”と判断したみたいよ?不死者は”魔物”の類とはいえ、元は”人”だったのだから、”人を殺す事ができない”貴方達にとってはある意味最もやり辛い相手でしょう?無力化する為には人の姿をした不死者の”首”を滅するか、魔法で死体自体を滅するしかないのだから。」
「そ、それは……」
「……ッ!あの冷酷外道天使……!敵とはいえ、”死体”まで利用するなんて、それのどころが”正義”なのよ……!?」
ベルフェゴールの説明を聞いたエリオットは複雑そうな表情を浮かべ、サラは唇を噛み締めて怒りの表情でルシエルを思い浮かべ
「うふふ、忘れたのかしら?メンフィルは”光”と”闇”、それぞれの部分を受け入れている事で本来相反する存在同士が協力して生きている国なんだから、ルシエルの判断は”メンフィルに所属する軍師”としては何も間違っていないわよ?”死霊術”という”闇”の勢力が使う魔術を利用しているのだから。――――――それよりも、呑気に私とおしゃべりしていていいのかしら?”アンリエットの死霊術の範囲はこのフロアだけじゃないわよ。”」
「!まさか――――――」
不敵な笑みを浮かべて答えたベルフェゴールの答えを聞いてある事を察したエマが血相を変えたその時
「あ”~………」
「オオオォォォ………」
「イヤダ……シニタクナイ……!」
「背後から新手のアンデッド達……!?」
「い、一体どういう事~!?」
「恐らくアンリエットの死霊術の効果範囲は”城館内全てよ!”だから、城館内での戦闘でできた死体をアンデッドとしてここに呼び寄せたのだと思うわ……!さすがにオルディスやその近辺にまではアンリエットの死霊術の範囲には入っていないと思うけど……!」
「チッ……よく考えてみたら”死霊使い(ネクロマンサー)”と”戦場”なんて”最悪の組み合わせ”じゃない……!」
「”死霊使い(ネクロマンサー)”は”戦場”でできた死体を自身の戦力とすることができるから、”戦場”で人が死ねば死ぬほど”死霊使い(ネクロマンサー)”にとっては自身の戦力をより強化できるという事か……」
「クソッ、このままだとジリ貧だぞ……!?」
何とアリサ達がフロアに入ってきた出入口から新手の死霊や不死者達が現れ、それを見たガイウスとミリアムは驚きの声を上げ、ミリアムの疑問にクロチルダは自身の推測を答え、厳しい表情で呟いたセリーヌの言葉に続くようにミュラーは厳しい表情で呟き、アガットは厳しい表情を浮かべて新手のアンデッド達を睨んだ。
少し前―――――
~エントランス~
「グオオオオ――――ッ!!」
新手のアンデッド達がアリサ達の所に現れる少し前、エントランスでレン達とジン達が激闘を繰り広げているとエステル達を乗せたカファルーが咆哮と共に凄まじい勢いで正面門に穴を開けて城館内に突入した!
「何事……!?」
「大型の魔獣がどうしてこんなところに……!?」
エントランスに突如起こった異変に双方が思わず戦いの手を止めた後エンネアは驚きの声を上げ、カファルーを目にしたエレインは困惑の表情でカファルーを見つめ
「……ほう。まさかこのタイミングで駆けつけてくるとはな。」
「ハア………レン達にとってはまさに最悪のタイミングね。」
一方カファルーをよく知っているレーヴェは誰が現れたのかを察すると感心した様子でカファルーに乗っている人物達――――――エステル達に視線を向け、レンは疲れた表情で溜息を吐いた。
「ありがとう、カファルー!さ~て、オリビエ達は今どこにいるのかし――――――へ。」
ヨシュア達と共にカファルーから降りたエステルはカファルーを腕輪に戻した後周囲を見回して状況を確認すると思わず呆けた声を出し
「ええっ!?レ、レンちゃん達に……ジンさん、それに”怪盗紳士”さんと”幻惑の鈴”さん!?い、一体何がどうなっているの??」
「どうやら彼らがぶつかり合っている所に僕達が乱入したみたいだね。」
レン達を目にしたミントは驚いた後困惑の表情で疑問を口にし、ミントの疑問にヨシュアが真剣な表情で自身の推測を答えた。
「うわ~!久しぶり、ジンさん!というか何で”怪盗紳士”がジンさん達と一緒にレン達とやり合っているのよ!?し、しかも……よく見たらルシオラさんまでいるし……ルシオラさん、シェラ姉にはもう会ったの!?」
「今は再会を喜んでいる場合ではないでしょうが……」
我に返ったエステルは懐かしそうな表情でジンに視線を向けて声をかけた後ブルブラン、ルシオラへと順番に視線を向け、エステルの呑気な様子にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力している中フェミリンスは呆れた表情で指摘した。
「ハハ、駆けつけてくるタイミングのこの絶妙さ……まさにカシウスの旦那にそっくりだったぞ、エステル。」
「”エステル”……という事は彼女が遊撃士協会史上初の”SSランク”正遊撃士――――――遊撃士の中の遊撃士”……!」
「フハハハハッ!まさに”女神の巡り合わせ”と言うべきタイミングではないか。」
「フフッ、今は私達の事を気にしている場合ではないでしょう、おチビちゃん達。――――――シェラザード達は既に奥へと向かったわよ。」
「!!」
ジンは苦笑しながら、エレインは驚きの表情で、ブルブランは高笑いをしながらそれぞれエステルに視線を向け、ルシオラは苦笑した後すぐに気を取り直してエステル達に指摘し、ルシオラの指摘にエステルは血相を変えた。
「ここは俺達が食い止めているから、お前達はシェラザード達の援軍に向かってくれ!」
「了解!3人とも、行くわよ!」
「了解!」
「はーい!」
「ええ!」
ジンの要請に力強く頷いたエステルはヨシュア達に号令をかけて奥へと向かい始め
「そう簡単に奥へと行かせないわよ――――――!」
それを見たエンネアはエステル達を狙撃しようとしたが
「させないよ!」
「そこっ!」
「く……っ!」
エミリーが導力銃で、テレジアは導力ライフルでエンネアに牽制射撃を放ち、二人の射撃への対処によってエンネアは狙撃ができず、レン達もエンネアのようにエスレル達を妨害しようとしたがトールズ義勇隊の面々が次々と妨害攻撃を行った為エステル達への妨害が行えず、エステル達は奥へと向かった。
~城館内~
「クソッ、このままだとジリ貧だぞ……!?」
アンリエットの死霊術によってアンデッド達に包囲されたアガットが仲間達と共に厳しい表情でアンデッド達を睨んだその時
「―――あっ!オリビエさん達がいたよ、ママ…………って、えええええええっ!?な、なんなのこの状況~~!?」
「な、何で現実の世界なのに”影の国”で出てきたゾンビや死霊がいるのよ!?」
「しかもゾンビ達はよく見たらエレボニア帝国の正規軍や鉄道憲兵隊の軍人達のようだけど……」
「……どうやら連合の侵略に対して迎撃し、そして戦死した彼らを何者かがアンデッドとして操っているようですわね。」
エステル達がその場に駆け付け、オリヴァルト皇子達を見つけたミントはエステルに報告したがすぐにアンデッド達に気づくと驚きの声を上げ、エステルは困惑の表情で声を上げ、ヨシュアは真剣な表情で周囲の状況を把握し始め、フェミリンスは目を細めてアンデッド達を睨んだ。
「あ、貴女達は一体……」
「エステルちゃん!ヨシュア君にミントちゃん、フェミリンスさんも……!」
「フフ、ナイスタイミングじゃない!」
「どうやら流れが変わったようだな。」
「ハッハッハッ、さすがは”空の女神”の子孫のエステル君。”天の助け”とはまさにこの事だね♪」
「ええっ!?という事はあの人達が”現代の空の女神の子孫”――――――”ブライト家”……!」
「げっ……滅茶苦茶厄介なのが来たじゃない……!」
エステル達の登場にマキアスが戸惑っている中アネラス、シェラザード、ミュラーは明るい表情を浮かべ、呑気に笑った後笑顔を浮かべてエステル達を見つめて呟いたオリヴァルト皇子の言葉を聞いたエマは驚きの表情でエステル達を見つめ、ベルフェゴールは表情を引き攣らせてフェミリンスに視線を向けた。
「あの自称”ただの新妻”の子孫呼ばわりするのは止めて欲しいんだけどね……―――――それより、一体どういう状況なの!?」
「見ての通りよ!結界の前に陣取っているリィンの新しい使い魔連中に足止めされているのよ!で、その内の一人―――――リィンの”守護霊”を名乗っているアンリエットとかいう幽霊が”死霊術”とやらでクロウやゾンビ達を操っているのよ!」
「結界はもう一人の睡魔族の女――――――ベルフェゴールの仕業で、ベルフェゴールは”魔神”だ!」
「ベルフェゴール達とベルフェゴールの結界を突破できれば、父上達の元に辿り着けるのだが、この状況を何とか変えてもらえないだろうか……!?」
オリヴァルト皇子とエマの言葉を聞いてジト目で反論したエステルはすぐに気を取り直してオリヴァルト皇子達に問いかけ、エステルの質問にサラとアガットが答えた後、ラウラはエステル達に訊ねた。
「リィン君の”守護霊”って………もしかしてベルフェゴールさんの隣にいる女の子の事?」
「そのようですわね。あの死霊自身が死霊使い(ネクロマンサー)の為、死霊術でアンデッド達を操っているようですわね。――――――ならば、その術を無効化すればいいだけの事!弾けなさい――――――邪を打ち消す光よ!!」
サラ達の説明を聞いたエステルは戸惑いの表情でアンリエットを見つめ、エステルの疑問に頷いたフェミリンスは現状を推測した後片手から敵の”術”の効果を打ち消す閃光――――――破術の閃光を放った。すると死霊術が無効化された事でゾンビだった軍人達はその場で次々と倒れてただの死体になり、纏まった動きをしていた死霊達は好き勝手に動き始めた。
「な―――――」
「ゾンビ達が………」
「嘘でしょう!?あんな一瞬で死霊術を解除するなんて……!」
「……?おっ!やっと自由になれたぜ……!」
死霊術が解除された事にアンリエットが絶句している中ただの死体になっていくゾンビ達の様子を見たガイウスは呆け、クロチルダは信じられない表情で声を上げ、クロウはフェミリンスが放った閃光によってアンリエットの死霊術が解除された事で身体の自由が戻った事に気づいた。
「ヨシュアは死霊達の動きを止めて!ミントは光の魔法で死霊達に止めを!」
「了解!おおおぉぉぉ……ッ!」
「はーい!大地に降り注ぐ光よ!矢となり、敵を貫け!シャインアロー!!」
エステルの指示に頷いたヨシュアはクラフト―――――魔眼を発動して死霊達の動きを止め、その間に魔術の詠唱を終わらせたミントが魔術を発動した。すると死霊達の頭上から光の矢が次々と降り注いで死霊達を貫いて死霊達を浄化した。
「あたしは結界を壊すからフェミリンスはベルフェゴールさんの相手をお願い!」
「いいでしょう!」
そしてフェミリンスに指示を出したエステルはフェミリンスと共に結界へと向かい
「させないわよ!」
「それはこちらのセリフですわ!」
それを見たベルフェゴールは無数の暗黒の魔力弾を放ったが対するフェミリンスは無数の光の魔力弾を放って相殺した後ベルフェゴールとの戦闘を始め
「……ッ!リィン様達の元にはいかせません……!」
「彼女の相手をお願い、永恒、ニル!」
(承知!)
「わかったわ!」
アンリエットがエステルの前を阻もうとするとエステルはサエラブとニルを召喚し、召喚された二人はアンリエットとの戦闘を始め、その間に結界に辿り着いたエステルは自身の得物である棍で結界を攻撃した。
「ハァァァァァ………剛震撃!!」
力を溜め込んだエステルが強烈な一撃を結界に叩きつけるとその場に地震が起こると共に結界に小さな罅が入り
「うーん、今のじゃ効き目はあんまりないみたいね。だったら一点集中攻撃よ!――――流れるは水!咲き始めるは桜!」
結界の様子を見て首を傾げたエステルは気を取り直して罅が入った場所に凄まじい連携攻撃で集中攻撃し
「咲き上がれ!聖炎の華!奥義――――蒼流桜花聖炎華撃―――――ッ!!」
最後に”聖炎”を宿した渾身の一撃を結界に叩きつけた!するとエステルの連携攻撃によって罅だらけになっていた結界は音を立てて粉々に砕け散った!
「ええっ!?」
「結界が………」
「……………………」
「あ、ありえないわ……魔王直々が展開した強力な結界を”騎神”もなしに破壊するなんて……!」
結界が壊される様子を見ていたアリサは驚きの声を上げ、ガイウスは呆け、セリーヌは驚きのあまり口をパクパクさせ、クロチルダは信じられない表情で声を上げ
「シェラ先輩……エステルちゃんの人外っぷりがまたパワーアップしていませんか……?」
「まあ今までの”人外っぷり”を考えたらまだマシな方よ……」
「へっ、何はともあれ今が最大のチャンスじゃねぇか!」
表情を引き攣らせてエステルを見つめて呟いたアネラスの言葉にシェラザードは疲れた表情で答え、アガットは不敵な笑みを浮かべ
「はい…………!みんな、今の内に奥へと急ぐよ!」
「おおっ!!」
アガットの言葉に力強く答えたトワは号令をかけてエステル達と共に奥へと向かった。
~饗応の間~
「ガアアアアアァァァァ……ッ!!??」
「やったか……!?」
「ちょっ、おい、ディミトリ!その言葉は”フラグ”になるから言うなって!」
一方その頃オリエのSクラフトを受けて苦しんでいる様子のガウェインを見て思わず声を上げたディミトリの言葉を聞いたクロードは表情を引き攣らせて指摘した。
「ぐうううううう……ッ!オオオオオォォォォ――――――ッ!!」
その時苦しんでいたガウェインは咆哮をすると共に更に膨大な黒い瘴気を全身に纏い始めた!
「な―――――母上の絶技は間違いなく子爵閣下に命中したのに、何故……!?」
「恐らく子爵閣下を蝕む”呪い”が私達の想定以上だったからでしょうね……」
ガウェインの様子を見て驚いたクルトの疑問にオリエは重々しい様子を纏って呟き
「我が剣は”全てを守る剣”……!今度こそ……!この剣と忠誠、そして我が命をもって全て”絶つ”……!」
「くっ……どうして子爵閣下を蝕む呪いだけこんなに強力なんだ……!?」
「恐らくだけど彼自身の忠誠の篤さ、そして領民達への想いの強さが”呪い”を増幅させているからだと思うわ。」
更に戦意を高める様子のガウェインを見て唇をかみしめて呟いたリィンの疑問にアイドスは複雑そうな表情で答えた。
「それは………」
「一人の武人として、そして一領主としての”誇り”が子爵を蝕む”呪い”を増幅させているなんて皮肉な話ね……」
アイドスの推測を聞いたリィンは複雑そうな表情で答えを濁し、エーデルガルトは重々しい様子を纏って呟いた。
「私達ヴァンダール家への配慮の為に激戦の中子爵閣下を救う機会を与えてくださったこと、ありがとうございました、リィン少将。――――――私の未熟さによって千載一遇の機会を逃してしまった以上、リィン少将の戦友や大切な人々から犠牲者を出さない為にもリィン少将達の”目的”を最優先にしてください!」
「母上……」
「オリエさん…………――――――わかりました。――――――エーデルガルト、ディミトリ、クロード!アイドス!子爵閣下の解放が失敗してしまった以上、予定通りまずは肉体の一部の欠損を狙って、肉体の一部が欠損した事で戦闘能力を低下させられた子爵閣下を討つぞ!神気――――――合一!!」
リィンに感謝の言葉を述べた後ガウェインを討つように促したオリエの様子をクルトが辛そうな表情で見守っている中辛そうな表情でオリエを見つめたリィンはすぐに表情を引き締めて号令をかけた後”力”を解放した状態になり
「ええ!」
「ああ!」
「おう!」
「わかったわ!」
リィンの号令にエーデルガルト達はそれぞれ力強く答え
「オリエさんも引き続き、俺達と共に子爵閣下の相手をお願いします!」
「承知しました……!」
リィンに声をかけられたオリエは再び双剣を構えてガウェインを睨んだ。
「ちょっと待った――――――ッ!!」
するとその時エステルの声が聞こえた後エステル達やトワ達がその場に突入した!
「お兄様にセドリック、それにⅦ組の皆さん……!?」
「まさかこちらが用意した足止めの3組を全て超えるなんて……」
「ええっ!?ど、どうしてミントさん達までこちらに……」
エステル達の登場にアルフィンは驚き、アルティナは信じられない表情を浮かべ、エステル達に気づいたセレーネは驚きの声を上げ
「セドリック………ッ!それにオリヴァルト殿下も……!」
「マキアス……それにⅦ組の諸君も無事だったか……」
「母上……」
「父さん……」
同じようにエステル達の中にいるセドリック達に気づいたプリシラ皇妃とマキアスは安堵の表情を浮かべ、二人に声をかけられたセドリックとマキアスはそれぞれ二人を見つめた。
「え……ミ、ミリアムちゃん……!?剣になったはずのミリアムちゃんが何故生きて……」
「ヤッホー、クレア!色々あってみんなのお陰で生き返ったんだ♪」
「わ、私達が散々苦労してきた出来事をたったそれだけですませないで欲しいわ……」
「ふふっ、だがミリアムらしい答えだな。」
「ええい、今はそこを気にしている場合ではないだろうが!?」
一方ミリアムに気づいたクレア少佐はミリアムが生きている事に驚き、クレア少佐に気づいて呑気に挨拶をする様子のミリアムに冷や汗をかいて脱力したアリサはジト目になり、ガイウスは苦笑し、ユーシスは顔に青筋を立てて指摘した後ガウェインを睨んだ。
「やはり来たか”紅き翼”……!だが、例えどれだけ敵が増えようと我が剣と忠誠は折らせはしない……!」
「何て闘気……!黒の工房でやり合った時よりもパワーアップしているんじゃないの……!?」
「ん……!下手をしたら団長すらも凌駕するレベル……!」
「くっ……目を覚ましてください、父上……!」
「やれやれ……てっきりリィン君達との戦闘で疲労していると期待していたが、むしろ私達の登場で子爵閣下に余計にやる気を出させているじゃないか……」
「おい、リィン!子爵閣下をお前達の戦闘で追い詰めたんじゃなかったのかよ!?疲弊しているどころか、むしろパワーアップしているじゃねぇか!?」
エスレル達の登場で膨大な闘気を纏い始めたガウェインを見たサラは驚き、フィーは警戒の表情を浮かべ、ラウラは唇を噛み締めてガウェインに呼びかけ、アンゼリカは疲れた表情で呟き、クロウはリィンに文句を言った。
「その逆だ!子爵閣下は追い詰められている状況だからこそ、武人として、そして一領主としての”誇り”を守る為にその”誇り”が子爵閣下を蝕む”呪い”を増幅させているんだ!」
「子爵閣下の”誇り”が”呪い”を……」
「つまり今の子爵閣下は”手負いの虎”という状況ですか……」
「一体どうしたら……下手に手を出せば、間違いなく犠牲者が出てしまうよ……!」
クロウの文句に対して答えたリィンの説明を聞いたミュラーは複雑そうな表情を浮かべ、シャロンは真剣な表情でガウェインを見つめて呟き、トワは不安そうな表情で呟いた後必死に策を練っていた。
「なるほどね……要するに子爵さんを蝕んでいる”呪い”さえ消えれば子爵さんは元に戻るんでしょう?」
「そ、そうですが……何か考えがあるんですか?」
ガウェインを真剣な表情で見つめながら問いかけたエステルの確認にトワは戸惑いの表情で頷いた後訊ねた。
「うん、ここはあたし達に任せて!――――――ミント!少しの間でいいから子爵さんの動きを止めて!ヨシュアはミントの準備が終わるまで子爵さんの注意を逸らして!……………」
「はーい!……………」
「了解!――――――切り裂け!!」
トワの問いかけに力強く頷いたエステルはミントとヨシュアに指示をした後魔術の詠唱を開始し、エステルの指示に頷いたミントもエステル同様魔術の詠唱を開始し、ミントと共にエステルの指示に頷いたヨシュアは斬撃を飛ばした後瞬時に移動して敵を切り伏せるクラフト―――――双牙絶影をガウェイン目掛けて放った!
「甘い!」
襲い掛かる斬撃と移動攻撃による連続攻撃をガウェインは剣を振るって弾き飛ばし
「僕はもう、迷わない――――――ハァァァァァァ…………ッ!!」
「オオォォォォォ……ッ!!」
クラフトを弾き飛ばされたヨシュアは続けて自身の幻影達を作り出した後幻影達と共にガウェインの全方位から超高速の斬撃を次々と繰り出し、ガウェインは全方位から繰り出される超高速の斬撃を全て見切って剣で弾いたが
「秘技――――――幻影奇襲!!」
「ガ……ッ!?」
ヨシュアが幻影達と共に放った最後の一撃はガウェインを中心とした広範囲に無数の斬撃だった為弾き飛ばす事はできず、ダメ―ジを受けて怯んだ。
「時よ、”真竜”の名の元に凍結せよ――――タイムストップ!!」
その時詠唱を終えたミントが魔術を発動するとガウェインは怯んだ態勢のまま動きが完全に止まった。
「あ、ありえない……子爵自身もそうだけど子爵の周囲の時空間が完全に停止しているわ!」
「”時の凍結”……まさか……ロゼの”時止めの結界”のように魔術で対象とその周囲のみの時空間を停止させたって言うの……!?」
ガウェインの様子を見たクロチルダは信じられない表情で声を上げ、察しがついたセリーヌは驚きの表情で術者であるミントを見つめた。
「七耀の根源、具現せよ!」
その時魔術の詠唱を終えたエステルが魔術を発動するとエステルの周囲のそれぞれ火・水・地・風・時・幻・空属性の球体が現れ
「灼熱の紅耀!清廉たる蒼耀!母なる琥耀!荒れ狂う翠耀!深淵の黒耀!常世の銀耀!至高の金耀!今こそ七耀の焔となれ!」
「虹色の……太陽……」
「し、信じられない……上位属性を含めた全属性の霊力を結合させるなんて……!」
「そんな化物じみた芸当、ヴィータどころかロゼでも無理よ!?一体どんな秘術を放つつもりなのよ……!?」
エステルの詠唱によって七属性の球体は上昇してエステルの頭上で合体した。するとエステルの頭上で合体した球体は虹色の太陽と化し、それを見たセドリックは呆け、エマとセリーヌは信じられない表情でエステルを見つめた。
「創生の輝きを――――――イリスの焔!!」
そしてエステルが詠唱を終えて自身の得物である棒をガウェインに突きつけると虹色の太陽はその場で輝くと共に虹色の焔を発生させ、焔はガウェインを呑み込み、ガウェインを呑み込んだ虹色の焔はガウェインを中心として焔の渦と化した!
「ぐがあああああああああ………ッ!!??」
「父上――――――ッ!!」
「ちょっと、エステル!一体何をしたのか知らないけど、子爵閣下は大丈夫でしょうね!?」
エステルが放った七耀脈に呼びかけ、ゼムリア大陸に存在する邪悪なる者達を焼き尽くし、傷つきし者達には慈悲を与える”聖典”に記された裁きにして創世の焔を具現化するエイドス直伝の神術――――――神術・イリスの焔によって発生した虹色の焔の渦に飲み込まれて悲鳴を上げたガウェインを見たラウラは声を上げ、サラは焦りの表情でエステルに問いかけた。
「大丈夫!子爵さんをよく見て!」
「燃えているのに……燃えていない……?」
「虹色の焔は”子爵閣下自身ではなく、何かを燃やしている”ようにみえるが……」
「!おい、まさかとは思うがあの”焔”が燃やしているのは――――――」
「あ、ありえないわ………”光の剣匠”を蝕んでいた”呪いのみを燃やしている”……ッ!?」
サラの言葉に対してエステルが答えた後虹色の焔の渦に飲み込まれたガウェイン自身は燃えていない事に気づいたフィーとユーシスは困惑し、察しがついたアッシュとクロチルダは信じられない表情を浮かべた。
アツイアツイアツイアツイイヤダイヤダイヤダキエタクナイキエタクナイキエタクナイ――――――ッ!!
「ガアアアアアアアアア――――――ッ!!??わ……た……し……は……ラ……ウラ………」
「!父上、私はここにいます!どうか正気に戻ってください!」
「どうやら子爵閣下が正気に戻りかけているみたいだね……!」
「それにさっき聞こえてきた”声”ってもしかして……!」
「ああ……恐らく子爵閣下を蝕んでいた”呪い”だ……!」
謎の声がその場に聞こえた後苦しみながらも僅かに正気に戻りかけているガウェインの様子に気づいたラウラは血相を変えてガウェインに呼びかけ、アンゼリカは驚きの表情で呟き、謎の声が気になったトワの言葉に頷いたクロウは虹色の焔に燃やされ続けている黒い瘴気を睨んで推測を口にした。
「あの様子だともう一押しね……!――――――七耀のみんな、あたしに力を貸して!!」
「何をするつもりか知りませんが、”彼”の解放はさせません!妨害せよ――――――」
一方エステルは更なる追撃を行う為に自身の得物である棍を構えて集中を始め、エステルの様子を見て我に返ったクレア少佐は目に刻み込まれている紋章の力を解放してエステルの動きを妨害しようとしたが
「ミュゼ、ステラ!―――――緋空斬!!」
「はい!えいっ!」
「了解!そこっ!!」
「く……ッ!?」
クレア少佐の動きを見逃さなかったリィンはミュゼとステラに呼びかけた後クレア少佐目掛けて炎の斬撃波を放ち、リィンに呼びかけられた二人はそれぞれクレア少佐目掛けて射撃を行ってクレア少佐の行動を中断させると共に注意を自分達に向け
「ふふっ、ここは空気を読んで大人しく成り行きを見守るしかありませんわよ、乙女殿♪」
「ミュゼの言う通り、貴女は少し大人しくしておいてください――――――玄武の地走り!!」
「あぐっ!?」
射撃を終えたミュゼは意味ありげな笑みを浮かべてクレア少佐に声をかけ、ミュゼの言葉に続くように答えたリタは地を這う衝撃波を放ってクレア少佐を吹き飛ばして壁に叩きつけた。
「―――行くわよ!」
集中を終えて得物を虹色に輝かせたエステルはガウェインに突撃し
「く……ッ!?」
突撃してきたエステルを見たガウェインは咄嗟に大剣で防御態勢に入った。
「たぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そこにエステルが棍による乱舞攻撃を行った。エステルの乱舞攻撃を受けたガウェインの大剣はアイドスの攻撃を受け止めた時にできた罅が女神の力が宿る棍の乱舞攻撃を受けた事で凄まじい速さで広がり始め
「神技!セプトブラスト!!」
「な―――――」
エステルが止めの一撃として棍を一振りすると罅だらけになった大剣は粉々に砕け、それを見たガウェインは絶句した。そして大剣が砕け散った後ガウェインを中心として火・水・風・地・時・幻・空の7属性による連鎖爆発が起こった後虹色の大爆発が起こり、更にガウェインの足元から城館の天井をすり抜けると共に空に浮かんでいる雲をも貫く程の虹色の柱が上がった!
グギャアアアアアアアアア――――――ッ!!??
「グガアアアアアアアアア――――――ッ!!??」
エステルが放った七耀脈の加護を受けた棍で乱舞攻撃を行うエイドス直伝の神技――――――神技・セプトブラストによってガウェインを纏っていた黒い瘴気は断末魔を上げると共に霧散し、更にガウェインも悲鳴を上げると共に仮面が粉々に割れ、地面に倒れた。
「あ………」
「子爵閣下の仮面が……」
「も、もしかして……!」
「――――父上ッ!!」
ガウェインの仮面が割れる様子を見たエリスとアルフィンは呆けた声を出し、ある事を察したセレーネは明るい表情を浮かべ、ラウラは声を上げてガウェインに駆け寄った。
「……フフ、大事はない……”呪い”で堰き止められていた痛みが一気に揺れ戻しただけだ……」
「あ………」
ラウラに声をかけられた正気に戻ったガウェイン――――――アルゼイド子爵は苦笑した後ラウラの頭を優しく撫で、アルゼイド子爵の行動にラウラは思わず呆けた声を出した。
「……今まで心配をかけてしまい、本当にすまなかった………それと、レグラムの領主でありながらレグラムの領民達にとっては当然の不満を受け止めきれなかった事で”呪い”に囚われてしまい、お前達に刃を向けてしまった事……本当にすまなかった……」
「いいえ……!父上が無事に戻ってきてくだされば、それだけで……!」
「うむ………”呪い”に囚われたとはいえ、殿下達に刃を向けてしまった事……本当に申し訳ございませんでした、オリヴァルト殿下、セドリック皇太子殿下。」
「ハハ、私達は気にしていないから、あまり気負う必要はないよ、子爵閣下。」
「ええ、子爵閣下が無事に戻ってきてくださり、本当に安心しました。」
ラウラの言葉に頷いたアルゼイド子爵はオリヴァルト皇子とセドリックに視線を向けて声をかけ、声をかけられた二人はそれぞれ苦笑しながら答えた。
「殿下達の寛大なお心遣いに感謝を。――――――オリエ夫人、本来ならば私を討ち取る立場でありながらも、私を”呪い”から解放しようとしたこと……心より感謝申し上げます。」
「ふふっ、私では”役不足”だったようですから、どうかお気になさらないでください。それに感謝をするのでしたら、リィン少将に感謝してください。リィン少将は本来ならば”軍を率いる立場”として子爵閣下を討ち取る前提の戦闘をするべきでしたのに、戦闘の最中私に子爵閣下を救う機会を与えてくださったのですから。」
「え……そ、それじゃあルーレの時みたいに”鉄機隊”が全員僕達の足止めに残っていたにも関わらず、オリエさんだけリィン達と子爵閣下と戦っていた理由は……」
「”ヴァンダール流双剣術”の”皆伝者”である継母上ならば、戦闘の最中にできる子爵閣下の隙をついて”峰打ち”で子爵閣下を無力化できるかもしれないと考えて継母上を子爵閣下と戦うメンバーに入れたのか……」
「リィン………」
「ふふっ、わたくしの時のように、リィン様も子爵閣下をリィン様なりのやり方で子爵閣下を救おうとされていたのですわね……」
アルゼイド子爵に感謝されたオリエは謙遜した様子で答えた後リィンに視線を向け、アルゼイド子爵の話を聞いたエリオットは驚き、ミュラーは静かな表情で推測し、アリサは口元に笑みを浮かべ、シャロンは微笑みながらリィンを見つめた。
「……俺は”灰獅子隊”の”軍団長”として子爵閣下――――――”光の剣匠”と戦うメンバーの一人としてオリエさんは適正の上、アルフィンの護衛の為とはいえ祖国の戦争相手である連合側についている”ヴァンダール家”の二人に対するせめてもの気遣いをしただけです。」
「フフッ、謙遜する必要はない。――――――リィン。”呪い”で操られていたとはいえ、其方と其方のかつての級友達、そしてこの戦争でできた新たな”絆”は見せてもらった。其方達”黒獅子”―――――いや、”灰獅子”の”絆”もまた”紅き翼”に劣らぬ見事なものだったぞ。」
シャロンの指摘にリィンが静かな表情で答えるとアルゼイド子爵はリィンを賞賛し
「……恐縮です。」
「娘や仕えている主が望んでいない方法で今回の戦争を解決しようとしているリィンや私達を賞賛するなんて、さすが音に聞こえし”光の剣匠”ね。」
「ああ。紅き翼もそうだが、俺達とも”器”が違うな。」
「ま、人生経験の差もあるだろうな。――――――それで?”相方”が”紅き翼”側についたにも関わらず、あんたはまだやり合うつもりなのかよ?」
アルゼイド子爵の賞賛に対してリィンは会釈をし、その様子を見ていたエーデルガルトとディミトリは感心した様子でアルゼイド子爵を見つめ、ディミトリの言葉に頷いたクロードは表情を引き締めてクレア少佐に視線を向け、クロードの言葉を聞いたその場にいる全員はクレア少佐に視線を向けた。
「”光の剣匠”も失った上、紅き翼とSランクとAランク、そして遊撃士協会史上初のSSランクの”ブレイサーオブブレイサー”まで現れた以上、継続は不可能です。残念ですが……任務は失敗のようですね。」
「リーヴェルト少佐………」
静かな表情で自身の状況を答えた後複雑そうな表情を浮かべたクレア少佐の様子をレーグニッツ知事は静かな表情で見つめ
「……私はこれで失礼させてもらいます。リィンさ―――――いえ、リィン少将、ミルディーヌ公女。私の立場で嘆願する資格はないのですが……皇妃殿下と知事閣下の身の安全をお願いしてもいいでしょうか?」
「ええ、元々お二人に関しては”保護対象”の為、危害を加えるつもりはありませんでしたからその嘆願、承りました。」
「ヴァイスラント新生軍の”総主宰”としても、お二人の”今後”については可能な限りお二人の”意思”を尊重するつもりですので、皇妃殿下と知事閣下についてはご安心ください。」
転位装置を作動させて撤退の準備を始めたクレア少佐に声をかけられたリィンは静かな表情で、ミュゼは会釈をして答え
「……ありがとうございます。それとミリアムちゃん………何があったかは知りませんが、生き返って――――――いえ。」
二人の言葉を聞いて頭を下げて感謝の言葉を述べたミリアムに視線を向けてあることを言いかけたが中断してその場で背を向けた。すると転位装置は作動し、クレア少佐は転位でその場から撤退し
「クレア………」
「クレア少佐……」
「見ていられないね……」
「ええ、あのままでは自分自身に押し倒されてしまうでしょう……」
「…………はい………」
クレア少佐がその場から去るとミリアムとトワは複雑そうな表情を浮かべてクレア少佐が消えた場所を見つめ、複雑そうな表情で呟いたアンゼリカの言葉に頷いたプリシラ皇妃は重々しい様子を纏って答え、プリシラ皇妃の言葉を聞いたアルフィンは辛そうな表情で頷いた。
こうしてカイエン公爵家の城館を制圧したリィン達はオルディスの守備隊の司令官であったクレア少佐の撤退並びに城館とジュノー海上要塞の制圧を市内と郊外でそれぞれ戦闘していたエレボニア軍に宣言した後、降伏を呼びかけ………更にオリヴァルト皇子達もリィン達と共にエレボニア軍に降伏を呼びかけ……司令官や城館を失い、更にはジュノーからの援軍の可能性がなくなった事で完全に戦意が折れたエレボニア軍は降伏の呼びかけに応じ、灰獅子隊とヴァイスラント新生軍に投降し、灰獅子隊とヴァイスラント新生軍はオルディスとジュノー海上要塞の奪還を成功させた――――――
後書き
という訳でエステル達の乱入によって紅き翼はアルゼイド子爵を”呪い”から解放できました……というか、完全にエステル達任せww何はともあれアルゼイド子爵も紅き翼側に復帰です。なおエステル達が乱入したときのBGMは空シリーズの”銀の意思”か”Cry for your Eternity”、エステル達がアルゼイド子爵を呪いから解放するために戦闘を仕掛ける時のBGMはヴァルキリープロファイルの”Turn Over a New Leaf”だと思ってください♪ それとクロの軌跡ですが、それまでの行動によって中盤以降味方の勢力が変わるとの事ですが……マジでストーリーの展開もそうですがエンディングも変わるんでしょうかwwだったら、続編はどうなるんだww私の予想だとジンはロウルートで使用でき、創で登場した”姫”はカオスルートで使用できる気がします。なので、最初にカオスルートを選ぶ人達が多い気がww私も最初はどっちにすべきか本気で迷っています(オイッ!)
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