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労り

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第三章

「気分はどうだ」
「最高です」
 ラドンはすぐに答えた。
「これ以上はないまでに」
「そうか、最高か」
「はい」
 百の頭全てを笑顔にさせて答えた。
「本当に」
「それは何よりだ」
「ヘスペリアの乙女の方々がいつも一緒におられるので」
「そなただけでなくだな」
「いつも優しい声をかけてくれて」
 その彼女達がというのだ。
「そしてです」
「お喋りをして遊んでだな」
「毎日がとても楽しくて」
「そうだ、お主だけだとだ」
 ゼウスはラドンに優しい笑顔で話した。
「どうしても寂しくなる、孤独は辛いものだ」
「だからですか」
「乙女達も一緒にな」
「いてくれる様にしたのですか」
「そうだ、あの優しい乙女達と共にな」
「僕がいられる様にしてくれましたか」
「そういうことだ」
 こうラドンに言うのだった。
「孤独は誰でも辛い、そして癒しや遊びひいては楽しみがないとな」
「やはり辛いからですか」
「だからだ」
 そう考えてというのだ。
「そなた達を一緒にしたのだ」
「木と林檎を護る様にされたのですね」
「如何にそなたが強くともな」 
 それこそ神でも勝てないまでにというのだ。
「孤独は辛い」
「その孤独がない様にですか」
「あの者達もだ」
「私と一緒に置いてですか」
「そなたが寂しくない様にしたのだ」
「そうだったのですね」
「これでわしの考えがわかったな」
 ゼウスはラドンに笑って問うた。
「そうだな」
「よくわかりました」
 ラドンはゼウスに確かな声で答えた。
「お気遣い有り難うございます」
「礼には及ばない、ではな」
「これからもですね」
「あの者達と共に林檎と木を護ってもらう」
「わかりました」
 ラドンはゼウスに百の頭で応えた、そしてだった。
 ヘスペリアの乙女達と共に林檎とその木を護り続けた、優しい彼女達に囲まれて癒されて働く彼は常に幸せを感じてそこにいた。寂しさなぞ全く感じずに。


労り   完


               2020・10・12 
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