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Fate/WizarDragonknight

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ココアのお姉ちゃん

「妹のココアがお世話になってます。姉のモカです」

 不審者は、マスクも外し、可奈美とチノ、そしてたまたまそこにいる鈴音にお辞儀をした。

「あ、どうも」
「ココアさんのお姉さん……こちらこそ」

 可奈美とチノはそれぞれ礼を返す。
 すると、居心地悪そうに、鈴音が頬をかいた。

「すみません、私は今日初めてきただけなので……可奈美さん、私は先に……」
「お客さん? ごめんね、ビックリさせちゃって」

 不審者改めモカは、鈴音の手を握る。

「よかったら、貴女もココアやみんなのこと、よろしくね」
「は、はあ……」

 鈴音が困ったように頷いた。

「それで、ココアは?」

 ココアの姉こと、モカは、きょろきょろと店内を見渡した。

「休憩? それとも厨房にいるのかな?」
「あ、ココアちゃんなら……」

 可奈美は入口を見ながら答えた。
 するとモカは、可奈美の目線であらましを悟った。

「そっか。ココアは、私を探しに行ったの。大丈夫だから、ラビットハウスで待っててって手紙に書いたのに」
「どこかですれ違ったのでしょうか?」

 チノがぼそりと呟いた。

「相変わらずそそっかしいなあ」

 モカがクスリと笑う。すると、チノが遠慮なく頷いた。

「あはは……」
「あなたが可奈美ちゃんでしょ? そして、チノちゃんとティッピーね。話は聞いてるよ」
「そうですか……」
「あと、君はなんて名前なの?」

 次にモカは、鈴音に狙いを定めた。
 鈴音は少し目を細めながら、小さな声で答える。

「柏木鈴音(れいん)です」
「れいんちゃん?」

 モカがぐいぐいと鈴音に近づく。初対面の相手の接近に、鈴音は遠慮がちに頷いた。

「はい。鈴の音と書いて鈴音(れいん)です」
「そうなんだ。私、しばらくこっちにいるから、またよろしくね」
「は、はい……」

 鈴音が戸惑っている。
 始めて来た店でこんなこと言われても困るだろうなと思いながら、可奈美はリゲルへ視線を投げる。
 リゲルは、我関せずとばかりにコーヒーを啜っている。やがて席を立ち、鈴音のもとへ歩いてきた。

「マスター。そろそろ行くわよ。もともと長居するつもりもなかったし、お店にも迷惑じゃないかしら」
「いえいえ、どうぞどうぞごゆっくり」

 可奈美が笑顔で応対する。だが、早く帰りたいと顔に書いてあるリゲルは、鈴音の袖を引っ張る。

「マスター」
「もう少しいましょう。もしかしたら、ウィザードや、聖杯戦争の情報も得られるかもしれません」
「私が集める情報だけで十分でしょ?」

 だが、鈴音は首を振った。

「生き残る算段は多い方がいいです。リゲル、今回は彼女たちへ接触して、情報を集めましょう」
「……」
「あなたは、鈴音ちゃんのお姉さん?」

 二人の会話の内容を知ってか知らずか、モカが尋ねる。リゲルは「ええ」とばつの悪い顔で返事をした。

「そっかそっか。これからもよろしくね」

 明らかにリゲルは逃げようとしている。だが、モカは彼女を逃がさないとばかりに矢継ぎ早に会話を続けていた。

「確かに、ココアさんに似ています」

 チノの声に、可奈美はモカへ目線を戻した。

「や、近づかないで!」

 リゲルは何やら恐怖を抱いているようだった。手を振り払いながらも、近づくモカから距離を持とうとする。
 やがて、捕まってしまったリゲル。英霊なのに、モカを振り払うことなく、ただギュッと抱きしめられている。

「は、放しなさいよ……」
「君、自分で気づいていない?」

 モカの言葉に、リゲルの体から力が抜けていった。それを自覚してかしていないのか、やがてモカにもたれかかっていく。

「何なのよ……アンタ、いきなり現れて……」
「でもね。ちょっと、放っておけなかったから」

 モカが、リゲルの背中を撫でる。

「自分でも気づいていないのかな。とても疲れた顔してるよ?」
「疲れたって……」
「難しいことは私も分からないけど、全部一人で背負うことないと思うよ?」
「うるさい……」

 口では反抗的だが、明らかにリゲルは傾いている。少し安心したように、動きを少なくしている。

「すご……」

 英霊であるリゲルさえも手籠めてしまう彼女の包容力に感嘆しながら、可奈美は鈴音に尋ねる。

「ねえ、いいの? あれ」
「いいんじゃないですか?」

 鈴音は無関心そうにつぶやく。
 やがて話を切り出したのは、リゲルの巻き添えに頭を撫でられていたチノだった。

「モカさんには、休んでもらいましょうか」
「大丈夫。ココアが帰ってくるまで、お店のお手伝いするよ」
「え? いや、でも。そこまでしてもらうわけには……」

 可奈美が彼女を止めようとするよりも先に、モカは行動に移った。
 右袖を捲り、ガッツポーズをするモカ。
 そして。

「お姉ちゃんに、任せなさい!」

 あたかも後光があるように、モカの全身から光が放たれる。
 それは、まさに頼れる姉オーラというべきものだろうか。
 いつも姉を自称するココアが、茶番のようだった。



「っ!」

 美味しい。
 率直に、可奈美はそういう感想を漏らした。

「モカさん……これ……美味しすぎて、涙が出てきました」

 チノもまた、その味に感激している。言葉通り、チノの目はうるうるとうるんでいた。

「ねえ、本当においしい! 鈴音ちゃんもそう思うよね!」

 隣の客席で、モカが作ったドリュールを食べている鈴音にも尋ねる可奈美。背中を向かい合わせて座っている鈴音は、もぐもぐとたべながらこちらに顔を向けた。

「そうですね。おいしいです」
「ふふっ。ありがとう」

 鈴音の称賛に、モカは笑顔で答えた。
 鈴音のテーブル席には、向かいにリゲルも着席している。半分食したドリュールを、驚きの目で見つめていた。

「すごいわね……あの荷物にあった小麦粉をここまでにするなんて……これが、データでは説明できない、職人技だとでもいうの……?」
「リゲルちゃん、なかなか特徴的な感想だね」

 可奈美のツッコミは、リゲルには聞こえていないようだった。



「やっぱり来てた。迎えに行く必要なかったね」

 ラビットハウスの窓から中をのぞきながら、ハルトはそう言った。
 可奈美、チノ。そしてなぜかいるリゲルと、見知らぬ少女が、ココアに似た女性がふるまうパンを食べているところだった。

「あの人がココアちゃんのお姉さんか……確かに、大人になったココアちゃんって感じがするね」
「あ………」

 だが、ココアにはハルトの声は明らかに聞こえていない。目を大きく見開きながら、震えた口調で言った。

「お姉ちゃんが、あっという間に私のお姉ちゃんとしての立場を……!」
「こ、ココアちゃん!?」

 今にも泣きだしそうになったココアを必死になだめようと、ハルトは思案を巡らせた。

「ほ、ほら! 俺は君をお姉様だと思ってるから! ほら、泣かない泣かない!」
「は……ハルトさん……」

 涙目を浮かべながらハルトを見上げるココア。ハルトはそのまま、彼女の肩を掴む。

「さあ、お姉様? いざこれから、大お姉様の謁見に参りましょう!」
「ハルトさん、言ってる言葉が、意味わかんないよ……」

 涙をぬぐいながらも、ようやくココアが笑ってくれた。
 ハルトはクスリと吹きながら返す。

「いつもウェルカムかもーんとか言ってる君がそれを言う?」
「えへへ……」

 その後、不審者の恰好をしたココアが、当たり前のように可奈美たちにもモカにも見破られ、姉妹の暖かい再会の傍ら、リゲルとそのマスター、鈴音は帰っていった。 
 

 
後書き
ほむら「大変な問題が起こったわ。キャスター」
キャスター「?」
ほむら「私、四章の台本を受け取っていない……!」
キャスター「マスター、またそのキャラで行くんですね」
ほむら「二章といい四章といい、私の出番が少ないわ。そもそも、三章だって私の出番少ないのよ。このままでは、私がいたことなんて、読者に忘れ去られてしまうわ」
キャスター「……三章のあれはなかなか美味しい出番だったのでは?」
ほむら「キーアイテムに取り込まれて暴走した以外の出番がないのよ! それに、主人公の必死の献身で戻るならばともかく、ただの連続の力押しだったのよ」
キャスター「……ファイアダイナソーになれただけでも十分では?」
ほむら「よくない! これじゃ、ヒロインとしての立場がないわ!」
キャスター「……今日のアニメ」


___Let's go!! One more chance!! 変えてやろうこのscene 今何千何万回でも乗り越えてみせるだけ___


キャスター「ヘヴィーオブジェクト」
ほむら「何……このゴルフボールみたいな兵器は」
キャスター「オブジェクト。向こうの世界の主力兵器です」
ほむら「こんなものが役に立つの?」
キャスター「」コクッ
ほむら「ふうん……」
キャスター「放送期間は2015年の10月から翌年3月。この機械、オブジェクトによるクリーンな戦争が行われる世界です」
ほむら「メインキャラは日本人ではないのね」
キャスター「既存の国家は破綻し、それぞれが主義主張によって形成された、新しい国での戦争です。と、堅苦しい解説ですが、実際に鑑賞するときは、ポップコーンでも食べながら映画を見ている気分になるのがよろしいかと。そういうセリフも多いし」
ほむら「オブジェクト……作ってみる?」
キャスター「」本広げる
キャスター「少ない出番が……さらに減るだろう」
ほむら「前言撤回するわ」 
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