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X Dimensions SoldierS Re: Xros Rays

作者:ラフェル
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  第30話 『別れ』と『約束』……さらばファイル島!

 
前書き
やっと……やっと、最新話投稿できた(^◇^;)

前話の後書きでも言った通り、第1章のラストです。 

 
ダスクモンを救い出すことに成功し、仲間達の元へ帰還したツナとアインスは融合(ユニゾン)を解除する。

そしてツナはハイパー化を解き、大空のリングVer.Xと合体していた大地のシモンリングを分離させて炎真に返却すると……糸が切れた人形のように地面へと倒れ込む。


アインス「ツナ!?」


突然倒れたツナを心配したアインスが近寄ると……


ツナ「zzz……」

アインス「……はあ〜、なんだ眠っているだけか……」


ツナは規則正しい寝息をあげながら眠っていた。

そのことにアインスは安堵の溜息を吐きながら座り込み、ツナに膝枕をしてやる。


アインス「ダスクモン、そしてベルグモンと言う強敵相手の連戦を強いられたんだ。疲れて眠ってしまうのも無理は無いか……お疲れ様、ツナ♪」


アインスは柔らかな笑みを浮かべながら、眠るツナの頭を優しく撫でていた。

そんなアインスに……


マリア・フェイト・フェルト・アニュー・クリス・セレナ・アンジュ『じー……』

アインス「ん? 皆、どうしたんだ? 変な目で見て……」


マリア・フェイト・フェルト・アニュー・クリス・セレナ・アンジュの7人がジト目で見ていた。

何故なら……


アンジュ「アインス、あんたね……!///」

フェイト「いくらツナのユニゾンパートナーになったからって……!///」

マリア「なにどさくさ紛れにツナに膝枕してるのよ!?///」

アインス「え?」


ツナに膝枕しているアインスに嫉妬していたからだ(笑)


セレナ「アインスさん、ずるいです!///」

フェルト「私達もツナ君に膝枕したいです!///」

アインス「ふふふ……なるほど、そう言うことか。だが悪いね、これはツナのユニゾンパートナーである私の特権だ。えっへん♪///」

クリス「なにドヤ顔してんだ!? 調子コキンス(※)してんじゃねえぞ!///」
※調子こいているアインスの略(笑)

アニュー「アインスさん、そこを代わってください!///」

アインス「断る! ツナに膝枕する権利は誰にも渡さない!///」


ツナに好意を持つ女性達ーー通称ツナヒロインズは、ツナへの膝枕を巡って激しい口論をしていた。


翼「やれやれ、何を言い争っているのやら……」

ギンガ「止めなくて良いんですかね……?」

なのは「にゃはは……放って置いて大丈夫じゃないかな?」

はやて「アインスやフェイトちゃん達の心を盗んでまうなんて、ツナ君は罪作りな男やなぁ〜♪」


なのはや翼、はやて達は呆れた表情を浮かべたり、苦笑したり、面白そうなものを見ているかのようにニヤニヤしたりしながらツナヒロインズを見ていた。

そんな中……


奏「炎真も今回は頑張ったから、あたしが膝枕してやるよ♪」

炎真「え……ええええっ!?///」

切歌「奏さん、抜け駆けはズルいのデース!」

調「私達も炎真に膝枕したいです」

炎真「切歌さんと調さんまで!?///」

奏「あたしと張り合おうなんて良い度胸してるな。んじゃ、誰が炎真に膝枕するかじゃんけんで決めようじゃないか♪」

切歌「望むところデース!」

調「絶対に負けられない……!」

炎真「いや、ちょっ、僕の意見は無しですか!?///」

奏・調・切歌『最初はグー! じゃんけん、ぽん! あいこでしょ! あいこでしょ! しょ! しょ! しょ!』


奏・調・切歌の3人がスタミナ切れで疲労している炎真への膝枕を巡ってじゃんけんでの勝負をし、あいこの連続でデットヒートしていた。

奏は炎真を可愛い弟のように見ている面が強いが、なんだかんだ言いつつ最初から異性として意識しており、調と切歌もおもちゃの町でのもんざえモン戦をきっかけに炎真を異性として意識していた。


なのは「にゃはは、炎真君もモテモテだね♪」

はやて「ほんまになぁ〜♪」

翼「……以前奏をお姫様抱っこしただけで無く、奏に膝枕して貰おうなんて……炎真、許すまじ!」(←日本刀を取り出す)

ギンガ「ちょっ、翼さん!? その刀何処から持って来たんですか!? と言うか、落ち着いてください!」


なのは・はやて・ギンガは可愛い弟のような存在、翼は奏を巡ってのライバル(翼が一方的にそう思っているだけだが)としてしか炎真を見ていなかったが、後に炎真への意識が変わることになるのをこの時知る由も無かった。

一方、炎真と同じくスタミナ切れで疲労している勇真は……


勇真「zzz……」

響「あはは、勇真君ぐっすり眠ってるね♪」

未来「勇真君は昨日起きたばかりなのに、凄い頑張ってたからね。流石に疲れて眠っちゃうよ♪」


響と未来に介護されながら、ぐっすり眠っていた。

そして、ダスクモンはルナマリアに膝枕され、レオモンの監視の元ソーサリモンの治療を受けているが、ダスクモンの傷は一向に治る気配が無く、身体中から粒子のようなものが少しずつ溢れていた。


ダスクモン「……」

ルナマリア「ソーサリモン、どう?」

ソーサリモン「……命に別状は無いが、身体中の傷自体が回復魔法をかけても治る気配がまったく無い。寧ろ、身体中の構成データが分解されつつある」

ルナマリア「! それって……!」

レオモン「ダスクモンが消滅しかけていると言うことか? だが、先程命に別状は無いと……」

ソーサリモン「ああ、彼のデジコア自体は破損していないから命に別状が無いのは確かだ。だが、それでもダスクモンの肉体が消えかけているんだ。デジモンの死とは違う、肉体だけの消滅……こんな現象、私は初めて見る」


デジモンの心臓とも言って良いデジコアは無事なのに肉体だけが消滅しつつあると言うダスクモンの身に起きている現象に、ルナマリア達が困惑していると……


ダスクモン「……心配するようなことじゃ無い……本来あるべき形に戻るだけだ……」

『っ!』

ルナマリア「ダスクモン!」


ダスクモンが目を覚まし、眠っているツナと勇真以外の面々……特にパートナーデジモン達は、ダスクモンがルナマリアのパートナーデジモンで仲間であることは頭の中で理解しているのだが、一時的とは言え敵だったこともあり、思わずデジヴァイスから出てダスクモンを警戒してしまうのだった。


ダスクモン「フッ……警戒しなくても、今の俺には何もできない……ルナのパートナーデジモンである『こいつ』に取り憑いている俺の魂は……もうすぐ消滅するんだからな……」

『え……!?』


ダスクモンの言葉に一同は驚きの表情を浮かべる。


ルナマリア「そ、それはどう言う意味なの!? 私のパートナーデジモンに取り憑いていたって……!?」

炎真「君は人間からデジモンに転生した存在なんだろ!? それに、デジモンの心臓であるデジコアは無事なのに消滅するって……」

ダスクモン「……悪いな、それはデビモンによって俺自身が誤認識された『嘘』だ……俺は、人間からデジモンに転生した存在なんかじゃない……シン・アスカと言う亡霊の魂が、今生きているデジモンに取り憑き……暗黒の力でそのデジモンの存在を歪めただけ……ダスクモンなんてデジモンは初めから存在しない……俺自身の憎しみが生み出した、幻想(まぼろし)だ……その幻想も暗黒の力が浄化されたことで、もうじき終わる……」

アインス「! そんな、それでは……!」

フェイト「ルナマリアのパートナーデジモンは助かるけど、今の貴方……ダスクモンではいられなくなるってことなの……?」

ダスクモン「ああ、その通りだ……さっきも言っただろ? 本来あるべき形に戻るだけだと……ルナにパートナーデジモンを返すことができて、良かった……」


満足そうな様子でそう言うダスクモン。

そんなダスクモンの肉体として構成されていたデータの分解はさらに早くなって行く。


ルナマリア「駄目、そんなの! やっとデビモンから……復讐の生き方から解放されたのに、こんな終わり方なんて……!」

ダスクモン「……良いんだよ、ルナ……」

ルナマリア「でも……!」

ダスクモン「俺は、大切な人達を守れなかった過去に囚われ……自分の無力さを、目の前の現実を認めることができなくて……自身の不幸を理由に、何でもかんでも周りの所為にして……自分にとって都合の良い言葉にしか耳を傾けなくて……自分なりの意志も持たず、誰かの意のままに多くの命を奪って来た……救いようの無い、大馬鹿野郎だ……これは、そんな大馬鹿野郎にお似合いの最期だ……」

ルナマリア「ダスクモン……ごめんね……私、デジタルワールドに来たのに……貴方を救うことが……貴方に何もしてあげることが、できなくて……」


自虐的にそう言いながら最期の時を受け入れるダスクモンに、ルナマリアは涙を流していた。

ダスクモンが人間ーーシン・アスカだった頃にどんな過酷な人生を歩んで来たか等、ルナマリアには想像できない……だけど、ダスクモンがあまりに可哀想な存在であることを彼女は本能で感じていた。

だからこそ、ルナマリアはダスクモンを救えなかったことが悲しかった。

しかし、ダスクモンは……


ダスクモン「……なに言ってんだよ?……ルナは、俺を救ってくれたじゃないか……」

ルナマリア「え……?」

ダスクモン「ルナが来てくれなかったら、俺は死んでも憎しみから抜け出せなかった……こんな穏やかな最期を迎えることができなかった……ルナにまた会うことができて、本当に良かった……」

ルナマリア「ダスクモン……」


穏やかな笑みを浮かべながら、ルナマリアにそう伝える。

そして肉体のデータがほとんど分解され、いつ消滅してもおかしくない状態のダスクモンはルナマリアに最期の願いをする。


ダスクモン「ルナ……最期に……頼みたいことが、あるんだ……」

ルナマリア「なに……?」

ダスクモン「俺の……本当の名前……シンって……呼んで、くれないかな……?」


それは『シン』と言うダスクモンの本当の名で呼んで欲しいと言うものであった。

自分に対する記憶がまったく無いルナマリアにこんなことを頼むのは場違いだとダスクモン……いや、シン自身理解している。

だが、どうしてもルナマリアの口から自身の名前を呼んで欲しい想いから、最期の我儘を口にした。

そして、ルナマリアは……


ルナマリア「……シン……」


シンの我儘に応えるように、涙を浮かべながら優しくシンの名前を呼んだ。

それを聞いたシンは嬉しそうな笑みを浮かべ……


ダスクモン(シン)「……ありがとう、ルナ……大好き、だよ……」


ルナマリアに最期の感謝の言葉を伝えると、ダスクモンとして構成されていた肉体のデータは完全に分解され、シンの魂はあの世へと旅立つのだった。

それと同時に、胸・両肩・両肘に獅子の意匠をあしらい金の装飾を施された漆黒の鎧と、これまた獅子を象徴した目元のみを露出したフルメットの兜を身に纏った青年の姿をした1体のデジモンが眠りに付いた状態で姿を現す。

そのデジモンこそが、ルナマリアの真のパートナーデジモンなのだろう。

ルナマリアはそのデジモンを抱き締めると……


ルナマリア「シン……シン……シン……ううっ……うああああああああああああああああああああっ!!」


消えてしまったシンの名を呼びながら泣きじゃくるのだった。

こうして、ムゲンマウンテンでの戦いは悲しく終わりを迎えるのだった……
















勇真『あれ? ここは……何処?』


眠っていた勇真は気が付くと、周りが虹色の空間にいた。

ここはデジタルワールドでは無い、夢の中であることを勇真は何となく感じ取っていたが、何故自身がここにいるのか疑問に思っていると……


?『勇真で良かったかな? 悪いな、こんな所に呼んで』

勇真『え?』


何処からか声が聞こえ、勇真がその方へ視線を向けると、そこには赤い軍服のようなものを着用し、黒い髪と真紅の瞳をした青年が立っていた。


勇真『お兄ちゃん、誰?』

?→シン『俺はシン、シン・アスカだ。わかりやすく言うなら、ダスクモンが人間だった頃の姿って奴だ』

勇真『だ、ダスクモンの!?』


黒髪の青年の正体がダスクモンの人間だった頃の姿ーーシン・アスカであることに、勇真は驚く。


勇真『ええと……シン兄ちゃんで良いかな? シン兄ちゃんはどうして僕をここに呼んだの?』

シン『……俺はもうすぐ完全にあの世へ行く。だから、その前に君にどうしても伝えたいことがあるんだ』

勇真『僕に?』

シン『ああ、それはだな……』


シンは憑き物が落ちたような優しい笑みを浮かべながら勇真に近付き、勇真の視線を合わせるように屈むと……


シン『……ルナのことを守って欲しいんだ。俺の分まで』

勇真『え?』


シンは勇真に自分の分までルナマリアを守って欲しいと、まるで意志を託すかのように言うのだった。


勇真『そ、そりゃあ、ルナ姉ちゃんのことは守るけど……でも、どうして僕に?』

シン『俺自身が1番託したい人物だからだよ。だって、君は俺の……いや、これは君にとってはどうでも良い話だな』

勇真『え?』


シンの言葉の意味がわからず、勇真は首を傾げる。


シン『ごめん、何でも無いよ。兎に角、君にルナのことを任せたいんだ』

勇真『そ、それは良いけど……僕にルナ姉ちゃんを守り抜くことができるかな? 僕、ツナ兄ちゃんや炎真兄ちゃんみたいに強くないし……』

シン『大丈夫、君は俺なんかより強い人間だよ。それに……君には俺と同じ『能力(ちから)』があるしな』

勇真『シン兄ちゃんと同じ能力(ちから)?』

シン『うん。いずれその能力(ちから)が大事な時に君に力を貸してくれる筈だよ。だから、自分を信じろ』

勇真『……うん、わかった』


シンは勇真の頭を優しい手つきで撫でながらそう言い、勇真はシンのその言葉に不思議と勇気が湧いて来るのだった。


シン『さてと……俺はもうそろそろ行くよ。あの世で待ってる奴らがいるからな』

勇真『そっか……ルナ姉ちゃんのことは任せて。僕が絶対に守るから』

シン『ああ、頼んだぜ……あ、それとツナって子とアインスって人に伝えておいてくれ。俺のことを止めてくれてありがとなって……』

勇真『うん、必ず伝えるよ』

シン『よろしくな……それじゃあな、勇真』

勇真『うん……さようなら、シン兄ちゃん』


シンは優しい笑みを浮かべながら勇真に別れの言葉を言うと歩き出し、勇真は少し寂しそうな表情であの世へ旅立つシンの後ろ姿を見送るのだった。

そして勇真の目の前が光り、彼の意識はそこで途切れるのだった……
















勇真「ん……う〜ん……あれ? ここは……始まりの町?」


勇真は目を覚ますと、自身が始まりの町の救護施設の病室にいることに気付く。


響「あ! 勇真君!」

未来「良かった、目が覚めたんだね」


勇真が寝ているベッドの近くには、響と未来がいた。


勇真「響姉ちゃん、未来姉ちゃん……僕達、いつ始まりの町に戻って来たの?」

響「昨日の夜に皆で戻って来たんだよ」

勇真「昨日ってことは、1日経ってるんだ……っ! いたたたたっ!?」


勇真が起き上がろうとした瞬間、彼の全身に突如激痛が走り出す。


未来「あ、無理に起き上がらないで!」

響「今の勇真君、全身筋肉痛なんだから!」

勇真「き、筋肉痛……? 何で、そんなことに……?」

未来「ツナ君や炎真君が言うには超死ぬ気モードは体への負担が大きいから、あまり鍛えてない時になると今の勇真君みたいに全身筋肉痛になるんだって」

響「ツナ君も初めて超死ぬ気モードになった時、体中に気絶する程の痛みが走って、目が覚めてから2週間は全身筋肉痛で動けなかったらしいよ」

勇真「そ、そうなんだ……ってことは、僕は2週間このまま……?」

響・未来『うん、そうみたい……』

勇真「うう〜……」


全身筋肉痛で動けない勇真は、夢の中でシンにルナマリアを託された矢先にこんな状態になっているのだから、自分自身情けなく感じるのだった。


勇真「そう言えば、ルナ姉ちゃんは今どうしてるの?」

響「! ええと……」

未来「実はね……」


響と未来は勇真に昨日の出来事……ダスクモンーーシンが消滅したこと、そしてルナマリアはシンが消滅したことによる悲しみから始まりの町に戻った後も元気が無く、空き部屋に1人閉じ籠っていることを話す。


勇真「そうなんだ……(シン兄ちゃんは本当にあの世へ行っちゃったんだなぁ……)」


話を聞いた勇真はシンが本当にあの世へ旅立ったことを改めて実感するのだった。


響「本当ならすぐにでも元の世界に帰りたかったんだけど……」

未来「昨日の戦闘での怪我が治っていない人が多いし、ルナマリアさんの今の心境を考えると、すぐには帰れそうに無いね……」

勇真「ルナ姉ちゃん……」


勇真達がルナマリアのことを心配していると……


ルナマリア「私のことを心配してくれるのは嬉しいけど、いつまでもデジタルワールドにいる訳にいかないでしょ?」

響・未来『っ! る、ルナマリアさん!?』

勇真「ルナ姉ちゃん!」


ルナマリアが勇真達のいる病室へとやって来た。

そんなルナマリアの目は長時間泣いていたからか若干赤くなってはいるものの、何処かスッキリしたような表情であった。


ルナマリア「心配かけてごめんね。私はこの通り大丈夫よ」

未来「ほ、本当に大丈夫なんですか?」

ルナマリア「ええ。一晩思いっきり泣いてスッキリしたし、いつまで落ち込んでたらダスクモン……ううん、シンに笑われちゃうしね」

響「ルナマリアさん……」

勇真「ルナ姉ちゃん……」

ルナマリア「不思議ね……彼に対しての記憶は無いし、昨日初めて会った筈なのに、全然そんな感じがしなかった……きっと私の知らないところで会っていて、私にとって大切な人だったかもしれないわね……」


ルナマリアは少し寂しそうな表情でシンに対する印象を語る。

彼女自身生まれてからシンと出会った記憶が無い上、会ったのが昨日が初めてであるのは事実だ……だが、シンとはそんな理屈を超える程の強い『繋がり』があることを、ルナマリアは本能的に感じていた。

だからこそ、シンがこの世から消えてしまったことに深い悲しみを感じたルナマリアは、すぐに立ち直ることができなかったが、彼女の言う通り一晩泣いたことで精神が落ち着き、こうやって勇真達の前に現すことができたのだ。


ルナマリア「だからこそ、私はあの世へ行っちゃったシンに恥じない生き方をするつもりよ……彼が遺してくれた私のパートナーデジモンーー『レーベモン』と共にね」


ルナマリアは自身のデジヴァイスの中で眠るパートナーデジモンーー『レーベモン』を見ながらそう言う。

ルナマリアが何故レーベモンの名を知っているかと言うと、勇真達のいる病室へ来る前、一晩経っても目覚めないレーベモンが心配になった彼女は医者であるソーサリモンや、デジモンがデータで構成されていることから優れたプログラマーであるフェルトに診て貰い、その時に知ったのだ。

そしてフェルトとソーサリモンにレーベモンを診て貰った結果、生死に関わる危険性は無いのだが、シンの魂に暗黒の力と肉体に多大なる負荷を長いこと受け続けていたことから昏睡している状態で、今はレーベモンの意識が回復するのを待つ他無いので、ルナマリア はデジヴァイスのヒーリングスロット内でレーベモンを休ませていた。

いつレーベモンが目覚めるかはわからないし、もしかしたらこのまま目覚めないのかもしれない……それでもルナマリアは、いつかパートナーとしてレーベモンと共に戦う時が来るのを待ち続け、前に進むことを選ぶのだった。


ルナマリア「あ、そうだ。響、未来、元の世界に帰る前にやりたいことがあるんだけど、手伝ってくれる?」

響・未来『やりたいこと?』

ルナマリア「うん、それはね……」
















数時間後……


ルナマリア「よし、できた!」


ルナマリアは目の前にあるものを見て、満足そうな笑みを浮かべていた。

彼女の周りには響や未来、車椅子に乗る勇真、そして後から合流したツナや炎真達、パートナーデジモン達、さらにはレオモンらレジスタンス達、エレキモンも集まっており、ルナマリア同様満足そうな笑みを浮かべていた。

一同の前にあるのは……


ルナマリア「ありがとう皆、シンの『お墓』を作るのに協力してくれて。それにエレキモンやレオモン達も……」

ツナ「水臭いこと言わないでください」

響「私達仲間なんですから」

炎真「そうですよ」

レオモン「ダスクモン……シン・アスカは確かに我々の敵だったが、彼もまたデビモンに利用されていただけだったのも事実……そんな彼を弔う気持ちは皆同じだ」

エレキモン「お前らが元の世界に帰った後も綺麗に磨いとくぜ」

ルナマリア「うん、ありがとう」


シンの墓であり、その墓はルナマリアだけで無くシンの悲しい最期を見た者達は敵味方を越え、彼を弔いたい一心で作られたからか立派なもので、色鮮やかな花がたくさん添えられていた。


ツナ「……出来ることなら、シンって人を生きている形で助けたかったなぁ……」

アインス「そうだね……」

勇真(ツナ兄ちゃん、アインス姉ちゃん……シン兄ちゃんの言葉を伝えなきゃ……!)


デビモンにベルグモンにされて暴走していたシンと最後に戦ったツナとアインスは、墓を見ながらシンを生きている形で助けたかったと悔しさを露わにする。

特にツナは意識を失ってしまい、シンの最期に立ち会えなかっただけに、後悔の念が強かった。

そんなツナとアインスを見た勇真は、夢の中でシンに託された2人への感謝の言葉を伝えようとしたところ……


ルナマリア「ツナもアインスさんもそんなこと言わないで。シンはベルグモンにされて暴走していた自身を止めてくれた2人に凄く感謝してると思う……」

ツナ「ルナマリアさん……」

アインス「ルナマリア……」


先にルナマリアが亡きシンのツナとアインスへの感謝の想いを代弁するのだった。


勇真「……僕もルナ姉ちゃんの言う通りだと思う。シンって言うお兄ちゃんは、ツナ兄ちゃんとアインス姉ちゃんが救ってくれたことにありがとうって思っているよ、絶対に」

ツナ・アインス『勇真……』


ルナマリアに先を越されてしまったが、勇真は彼女の言葉に同意する形でツナとアインスにシンから託された言葉を何とか伝えるのだった。


ルナマリア「勇真の言う通りです。シンは最期は復讐に囚われずにあの世へ旅立つことができた……2人はシンを闇から解放したんです。 だから、いつまでもそんな後悔しているような顔をしないでください。あの世にいるシンに笑われますよ?」

アンジュ「ふふふ、一晩中泣き続けた娘の台詞とは思えないわね」

ルナマリア「ほ、放っといてください!///」

『あははははっ!♪』


アンジュの揶揄うような発言に赤くなるルナマリアを見て、一同は笑い声をあげていた。


ツナ「……アインスさん」

アインス「ルナマリアはシンを喪った悲しみから立ち上がり、前へ進もうとしている……私達も前へ進まないとね」

ツナ「そうですね……頑張りましょう」

アインス「うん、そうだね……」


ルナマリアに元気付けられたツナとアインスも柔らかな笑みを溢し、前へ進むことを決意するのだった。

その後、シンの墓に集まった面々は……


レオモン「敵ではあったが、己の信念に殉じた誇りある戦士ーーシン・アスカに敬意を表し、全員黙祷……」

『…………』


レオモンの号令により全員黙祷する……シンが安らかに眠れるように祈りながら……
















それからさらに数時間後、ツナや炎真達はムゲンマウンテンの山頂にやって来ていた。

ムゲンマウンテンへ来た目的は勿論新暦世界へ帰還する為で、新暦世界へ行く為のゲートは昨日の戦いが終わった後フェルトを始めとした何人かが探索し、既に発見済みである為問題は無い。

因みに新暦世界の住人ではあるが故人となっている奏とセレナ、違う世界の住人であるが現在のところ元の世界へ帰る手段が無いツナと炎真、研究施設の被験体であったことから帰る場所が無い勇真、そしてパートナーデジモン達も新暦世界へ一緒に行くことになっていた。


ハックモン「まさか人間の世界に行ける日が来るなんて思いもしなかったぜ♪」

フレイモン「だな。どんな世界なのか楽しみだぜ♪」

ストラビモン「まったく、呑気なものだな。未来に聞いたが、アルカ・ノイズやオートスコアラーと言う平和を脅かす脅威がいるらしいぞ。気を引き締めないと……」

ガオモン「そうだな、君の言いたいことはわかる……だが」

クロアグモン「他の奴らのほとんどはワクワクが強過ぎて、それどころじゃないみたいだぞ? ほら、あそこ」

ストラビモン「え?」

ブイモン「人間の世界にはどんな美味しい食べ物があるのかなぁ?♪」

ドルモン「きっと僕達の想像を超えた食べ物がいっぱいあるんだよ♪」

プロットモン「そうね、卵を使った料理でも凄いバリエーションがあるんだもの。期待できるわね♪」

アグモン「楽しみだねぇ♪」

ガブモン「ははは、そうだね♪」

ギルモン「ギルモン、楽しみ〜♪」

パタモン「僕も〜!♪」

アグモン(S)「俺もだぜ!♪」

ララモン「確かに人間の世界の料理は楽しみだけど、やっぱりアニューの料理が1番よ♪」

ロップモン「1番は調の料理に決まってるじゃない!」

ピコデビモン「いや、はやての料理が1番だと推させて貰おう」

ルナモン「何でそこで張り合ってるのよ……?」

ピヨモン「もう皆ったら、翼の世界では世界が滅ぶかもしれない危ない出来事が5回もあったって言うのに……」

ワームモン「今だって大変な敵がいるらしいのに、呑気過ぎるよ……」

テリアモン「無問題(モーマンタイ)〜、まあ何とかなるさ〜♪」

クロアグモン・ガオモン『……言った通りだろ?』

ストラビモン「はあ……そうだな。真面目になるのが馬鹿らしくなって来た」


パートナーデジモン達のほとんどが初めて行く人間の世界に胸を躍らせていた。

それから数分後、岩壁に大きく空けられた次元空間へ繋がる穴……新暦世界へのゲートの前にツナや炎真達はやって来た。

彼らだけで無く、今までの旅で出会ったファイル島のデジモン達も見送りで来ており、ツナと炎真達はそれぞれファイル島のデジモン達に別れの挨拶を済ませていた。


レオモン「君達がデビモンから取り戻してくれたファイル島の平和を、今度は私達が守ってみせる。選ばられし乙女達、そして小さな勇者達よ。心から感謝している、ありがとう」

響「私達の方こそ色々ありがとう!♪」

ツナ「レオモン達がサポートしてくれなかったら、ここまで生き抜くことはできなかったよ。本当にありがとう♪」

炎真「今度は平和で何も無い時にこのファイル島に遊びに来るよ♪」

レオモン「ああ、君達がまた来るのを楽しみにしている。また会おう」

ツナ「うん、またね」


ツナとレオモンが固い握手を交わしたのを最後に、ツナや炎真達はパートナーデジモン達をデジヴァイスに収納し、ゲートに向かい始める。

そして……


ツナ「本当に世話になりました! 皆のことは絶対に忘れないよ!」

響「皆に会えて、デジタルワールドに来て良かった!」

炎真「またいつか会おう!」

勇真「皆、元気でね!」

『さようなら〜!』

『じゃあな〜!』

『またね〜!』

『ありがとう〜!』


レオモンらファイル島のデジモン達に見送られながら、ツナや炎真達はゲートの中へ入って行った。

こうしてツナや炎真達のデジタルワールドでの最初の冒険は終わりを迎えたが、いつかまたデジタルワールドに来れると信じている。

新暦世界の脅威となっているオートスコアラーやアルカ・ノイズの件が片付き、落ち着いたらまたデジタルワールドへ行くと言う誓いを胸に、一同は新暦世界へ帰還して行くのだった……


第1章 邂逅編 完


To Be Continue…… 
 

 
後書き
漸く第1章が終わりました(^◇^;)

第2章はいつ更新できるかはわかりませんが、これからもXDSの応援よろしくお願いします^_^ 
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