歪んだ世界の中で
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第十五話 幸せの中でその一
第十五話 幸せの中で
プールで千春と一緒に泳いでから家に帰るとだ。おばちゃんとぽぽちゃんがこう言ってきた。
「おかえり」
「どやった?今日は」
「うん、今日も凄く楽しかったよ」
満面の笑みでだ。希望は二人に応えた。
「学校でもよく勉強できたし。それにね」
「プールでも楽しく泳いでんな」
「あの娘と一緒やったんやな」
「うん、凄く泳いできたよ」
二人でそうしたとだ。希望は一旦家のテーブルの席に座ってテレビを見ている二人のところに来て答えた。
「そのせいでさ。今ちょっとな」
「あっ、お腹空いたんやな」
「そうやねんな」
「うん、お腹空いたよ」
実際にそうだとだ。希望は明るい笑顔で答える。
「だから晩御飯楽しみにしてるよ」
「今日は海老やで」
「海老買ってきたで」
「海老?」
「今日は海老フライやで」
「今から揚げるから楽しみにしときや」
二人はにこにことして希望に言ってくる。
「それともずくもあるさかい」
「トマトも買うてきたさかいな」
「有り難う。じゃあ楽しみにしとくよ」
笑顔でだ。また返す希望だった。
「それじゃあ晩御飯まではね」
「勉強やな」
「それするんやな」
「うん、また小テストがあるしね」
だからだとだ。希望は二人に答えた。そうしてだ。
二階にあがりそれで勉強をはじめた。一時間程してだ。下から声がしてきた。
「希望、御飯やで」
「一緒に食べような」
「うん、今行くよ」
二人の言葉に笑顔で応えてだ。その勉強を中断してだ。
希望は下に降りておばちゃん達と一緒にその海老フライに野菜を食べた。その中で彼は幸せも口にしていた。彼は家でも幸せを手に入れていた。
彼は今何処にいても幸せだった。当然学校でもだ。
千春と一緒にいてだ。そうして話すのだった。
「ねえ。今度だけれど」
「今度って?」
「何か一緒に買いに行かない?」
千春は希望の席の前に立ってその両手をテーブルの上に置いてだ。こう言ってきたのだ。
「そうしない?」
「買い物?」
「うん。それに行かない?」
こう誘ってきたのだ。
「今度の日曜にね」
「そうだね。じゃあね」
「商店街に行かない?」
かつて二人が行って遊んだだ。そこでどうかというのだ。
「それでそこでね」
「買い物だね」
「希望は何か買いたいものある?」
千春は希望に具体的に問うてきた。
「今何かあるかな」
「ううん、言われてみると」
どうかとだ。彼は考える顔になってから答えた。
「あまりね」
「ないの?」
「特にないかな」
こう答えるのだった。
「今のところは」
「そうなの」
「けれど千春ちゃんはどうなのかな」
自分のことよりもだ。希望は彼女のことが気になって問い返した。
「何か買いたいものあるかな」
「アクセサリー。買いたいの」
「あくせさりー?」
「そう、それ」
買いたいものはあった。それだった。
「それを買いたいって思ってるの」
「アクセサリーなんだ。それだったらね」
「何処かいいお店知ってるの?」
「あの商店街だったらね」
希望もよく知っている商店街だ。だから言えた。
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