戦姫絶唱シンフォギアGX~騎士と学士と伴装者~
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第4節「世界を壊す、その前に──」
前書き
今回は黄色い派手派手お姉さんのターン。妹も出るよ!
最近じゃ某音柱さんと絶対仲良いでしょ、とかいわれてるらしいですねw
UFZのシーンもあるので、UFZ推しの皆さんもご期待ください!
「でも、どうしてキネクリ先輩の家の合鍵を?」
「えっ?そうだよね、どうしてだろう。前に響から預かったんだったかな?」
「何て???」
クリスの部屋を出た未来達は、そのまま帰路に着いていた。
やがて、大通りの十字路まで来た所で、切歌と調が別れる事となる。
「じゃあじゃあ先輩方ッ!アタシらはこっちなのデスッ!」
「誘ってくれてありがとうございました」
「姉さんの歌う姿を、あんなに大きなテレビで見られてよかったです!」
「おうおう、よきにはからえ~」
「いや、紅介何もしてないじゃん」
ニッコニコな笑顔で敬礼する切歌と、丁寧にペコリと頭を下げる調とセレナ。
そして何故か威張る紅介に、恭一郎がツッコミを入れる。
「送って行くよ」
「夜道に女の子だけじゃ、危ないからな」
と、ここで流星と飛鳥、兄弟が揃って見送りの名乗りを上げる。
全員特に異論はないようで、調は特にそれを望んでいたかのように微笑んだ。
「それじゃ飛鳥さん達のエスコートの元、失礼するデースッ!」
「こら暁、あんまり走るんじゃない!」
「行こう、調ちゃん」
「はい」
「それでは、また明日お会いしましょう!」
飛鳥の手を引いて走っていく切歌。二人並んで歩いていく流星と調。
そして二組に続くセレナ。
「気を付けてね~」
「ねえ、ひょっとして……」
「飛鳥さんはともかく、流星さんと月読さんはかなりナイスな感じだと思いますわ♪」
「アスはなんて言うか、お兄ちゃんだよね~」
一同は何かを感じたのか、温かい視線を向けながら彼らを見送った。
「さて、コンビニでおむすびでも買っておこうかな」
「あらあら」
「まあまあ」
「てっきり心配してるのかと思ったら」
響が翔と同棲し、自分も恭一郎と付き合い始めているが、未だに響に対する嫁さんっぷりが変わらない未来。
弓美と詩織は、以前ほど響を心配していない様子の未来に驚いていた。
「響の趣味の人助けだから平気だよ。翔くん達やクリスもいるし。むしろ、お腹空かせて帰る方が心配かもね。恭一郎くんも来るでしょ?」
「そうだね。翔と純に、スポドリでも用意しておこうかな」
さり気なく恭一郎を買い物に誘うその姿に、三人娘は感心の溜め息を吐く。
「いいな~……どいつもこいつもイチャイチャしてさぁ……」
「アンタはそんなんだから、彼女出来ないんじゃないの?」
「俺には奏さんがいるッ!」
「ブレないわねぇ」
と、一人だけ未だにそのテの話が出ていない紅介のドルヲタっぷりに、弓美は呆れて苦笑するのであった。
ff
数分前
『火災マンションの救助活動は、響ちゃんと翔くんのお陰で順調よ』
僕とクリスちゃんは、被害が広がった四時方向の最先端に降り立った。
「ヘヘッ、あいつらばっかにイイ格好させるかよッ!」
「そうだねッ!僕達も頑張ろう」
早速探索を開始しようとした、その時。
ピィィィンッ、と金属を弾く音が響いた。
「──ッ!?」
そして次の瞬間、金属がぶつかる音が二連続。
直後、頭上でヘリが爆発した。
「ヘリが……ッ!!」
振り返り頭上を見上げると、アーチの上に人影が。
やたら派手な決めポーズで佇み、こちらを見下ろす女性の姿。
黄色いジャズダンサーのような出で立ちに、黒髪の内側も黄色。アイシャドウも黄色。
間違いない。撃ったのは彼女だ。
「この仕業は──お前かッ!」
襲撃者は、ただ黙ってこちらを見下ろしていた。
ff
「装者輸送ヘリ、沈黙ッ!」
「どうなっているッ!?」
「何者からかの襲撃を受けている模様ッ!」
「ロンドンからも、翼さんが交戦しているとの報せですッ!」
その頃、本部には緊張と衝撃が走っていた。
ただの大規模火災だと思っていた事件が、予想外の事態へと変わっている状況。
新たな敵の襲来。そう結論づけるに充分な情報が、この場に出揃っていた。
(同時多発……こちらの混乱を誘っているのか?だがしかし──)
弦十郎はロンドンへと通信を繋ぐ。
「緒川ッ!」
『はい』
「このままでは情報が不足して相手の狙いが絞り込めないッ!」
『了解です。ヤードとMI5に協力を仰ぎつつ、状況把握に努めます』
通信を受けた緒川は眼鏡を外し、地下階での爆発を受けて避難誘導が始まりつつあるライブ会場から駆け出した。
ff
続けざまに三発、弾丸が放たれる。
二発は足元、一発はクリスちゃんの髪をギリギリ掠めていった。
挑発していやがるな。かかってこい、って。
「こちらの準備は出来ている」
黄色い衣装の女性は五本の指に金貨を挟み、構えている。
弾丸の正体は金貨だったってわけだ。
「……抜いたな?だったら貸し借りなしでやらせてもらう。後で吠え面かくんじゃねぇぞッ!」
「お前、クリスちゃんを狙ったな?……いいぜ、手加減は抜きだ」
好戦的な笑みを浮かべ、首元に下げていたペンダントをかざすクリスちゃん。
僕も眼鏡を外すと、トランクをプロテクターへと展開させ、左腕に嵌めたブレスレットに触れる。
「──Killter Ichaival tron──」
「転調ッ!コード・アキレウスッ!」
瞬きの間に、赤き閃光に包まれたクリスの体を、櫟の弓の装束が包み込む。
俺の無骨なプロテクターも形状が変わり、エネルギーが通ったインナーに色彩が走る。
闇夜を引き裂く光の中より、赤き銃姫と蒼銀の彗星、2人の装者が並び立った。
「鉛玉の大バーゲン バカに付けるナンチャラはねえ──」
ギアの前腕部を愛銃であるボウガンへと変え、早速光矢を乱れ撃つクリス。
しかし、黄色い女はストリートダンスを踊るようなド派手な動きで……それも、人間離れしたアクロバティックな俊敏性で全弾躱して宙を舞う。
(この動き、人間離れどころじゃねぇッ!つまりこの女、人外そのものってわけか……)
「ロデオの時間さBaby──つまり、やりやすいッ!」
クリスの言う通りだ。
相手が人間じゃねぇなら、手加減する必要はねぇッ!
現にあの女、両手で掴んだ光矢をへし折ってるしなッ!
「はああああッ!」
「ッ!」
アーチの上まで跳躍し、右腕にRN式アキレウスのアームドギアであるシールドを装着してブン殴るッ!
黄色い女はコインを重ねてトンファーにすると、そいつで素早くガードの構えを取る。
残念だったな、そいつはフェイントだッ!
前腕に防がれた右腕を軸に空中で身体を捻り、かかと落としを繰り出す。
体勢を崩した所で、更に追い討ちで連続パンチ。
そして回り蹴りッ!
後方へと吹っ飛ぶ黄色い女。
なんか何処に当てても硬かったな……今ので何処までダメージ通った?
「私に地味は似合わない……やるからには派手にやるッ!」
全然効いてねぇッ!?
ただ硬いだけじゃない。恐らく痛覚がないからダウンを取れない、って所だな。
対人を想定した武術じゃ有効打にはならねぇか。
「だったらあたしがッ!」
クリスがボウガンを構えたのを見て、俺は後退する。
黄色い女の方も気付いたらしい。
トンファーを両手いっぱいに握れる量のコインに戻すと、それを指で弾いて弾丸のように撃ち出す。
「傷ごとエグって涙を誤魔化して 生きた背中でも──」
クリスが連射するボウガンの矢が、雨あられと向かっていく。
一方、コイン女のコインも機関銃みてぇな勢いで連射され、しかも光矢とぶつかり合って相殺されてやがる。
2人の力は互角、いや、もしかしたら向こうの方が上の可能性だってある。
「それでも……負けるかぁぁぁッ!」
シールドを円盾型へと変形させ、フリスビーを投げるような構えを取る。
示し合わせなんかしていない。だが、クリスならきっと──
「今だッ!」
「くらえッ!!」
〈Slugger×Shield〉
クリスとの銃撃戦に気を取られた隙を狙い、全力を込めて盾を投擲する。
高速で回転しながら飛来する、超頑強な円盤盾。
硬い、早い、加えて丸鋸みたいな状態だから、標的の切断も可能。
まともに当たれば、たとえあの硬さでも無傷では済ませねぇッ!
「なるほど、悪くない。だが──ッ!」
「なッ!?」
真っ直ぐ進んでいたシールドが突然方向を変え、全く別の方向へとすっ飛んでいく。
シールドの向きが変わる直前、シールドの裏に何かがぶつかった音が聞こえた。
まさか……クリスと銃撃戦をしながら、こちらの方へ一枚だけコインを射出。そのコインをあちこちに反射させて、あの速度で飛来しているシールドの真下を狙い撃った!?
「味な真似しやがるじゃねぇか……ッ!」
だが、負けていられねぇ。
遠近両方に対応した敵だとすれば、近距離戦を苦手とするクリスに近付けるわけにはいかねッ!
「ここからが本番だッ!うおおおおおーーーッ!!」
更に激しさを増すクリスと純、そして黄色い女の戦い。
クリスと互角に撃ち合いながら、純の接近戦にも対応する黄色い女。
純は銃撃の合間、クリスが武装を切り替える間に攻撃し、黄色い女がクリスに接近するのを妨害し続けている。
拮抗する戦線。その状況を物陰から見つめる、小さな影。
(装者屈指の戦闘力とフォニックゲイン……。それでもレイアに通じないッ!やはり、『ドヴェルグ=ダインの遺産』を届けないと……ッ!)
黒いローブの小さな影、〈廃棄物11号〉は箱を握りながら焦燥していた。
「うおおおおおッ──らあああッ!!」
空中で純とぶつかり合い、ビルの壁へと飛ばされる黄色い女。
ビルの壁面を走って2人の方へ迫る彼女は、クリスのガトリングを避けながら大地を蹴り、高く飛び上がる。
クリスはそれを見てニヤッと笑うと、腰部のアーマーからミサイルを展開した。
「繋いだ手だけが紡いだ 笑顔達を守る強さを教えろ──ッ!!」
〈MEGA DETH PARTY〉
「ッ!?」
遮蔽物も足場もない空中では、ミサイルの直撃を避ける手段はない。
大量のミサイルが、黄色い女をホーミングしていき、大爆発した。
「やったか……!?」
思わず呟く純。
だが、クリスはもくもくと昇っていく爆煙を睨み付け、口を開いた。
「勿体ぶらねぇでさっさと出て来やがれッ!」
爆煙が晴れるとそこには、前方に盾のような形をした黄色い陣を展開した、黄色い女の姿があった。
「結界ッ!?」
陣が消えると、数枚のコインが地面に落ちる。
直後、女は再びコインを撃ち出し、2人を狙う。
クリスと純はその場を移動し、射出されるコインを掻い潜る。
『何があったの、クリスちゃんッ!純くんッ!』
「敵だッ!敵の襲撃だッ!そっちはどうなってる──「危ないッ!」あぁッ!?」
突然聞こえた誰かの声に、空を見上げるクリス。
「……クルーザーが、降ってくるだとぉッ!?」
団地のすぐ近くには港がある。
しかし、クルーザーの出処が分かっても、そんなものが降ってくる理由など想像もつくはずがない。
純の両脚を覆うプロテクターが展開し、瞬間的に超加速する。
RN式アキレウスの特性は、高い防御性能と、瞬間的な超加速能力。
助走無しで一気に加速し、超スピードで戦場を駆ける。
クリスを抱えて身を投げ出した直後、轟音と共に四隻のクルーザーは爆発した。
気付いていなければ、2人はほぼ確実に押し潰され、爆発に巻き込まれていた事だろう。
「私に地味は似合わない。……だけど、これは少し派手すぎる」
黄色い女は、港の方を見ながら呟く。
視線の先には黄色く光る大きな目と、クルーザーを両手に掴んで佇む巨人の影があった。
「あとは私が地味にやる……」
黄色い女がそう言うと、巨人は闇に溶けるように姿を消し、同時にクルーザーも海面へと落下した。
「クリス、大丈夫かッ!?」
「はちゃめちゃしやがる……」
少し離れた草陰に身を隠しながら、敵方の様子を窺う2人。
そこへ、物陰から小さな影が駆け寄った。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「ああ……ってッ!?おまッ、その格好──ッ!純くんッ!目ぇ閉じろッ!」
「痛ったぁ!?」
それは、小学生ほどの背丈の子供だった。
目深にかぶったフードから覗く、少年とも少女ともつかない、幼い顔立ちと体つき。
クリスが純の目を覆った理由は、その格好だ。
なんと、フード付きの黒いローブの下には、同じく黒いブーツと丈がギリギリのパンツ一枚のみである。
年端もいかない子供とはいえ、流石にこの格好は際ど過ぎる。恋人として、彼氏の目を覆いたくなるのも当然だ。
「あなた達は……」
「あ、あたしは快傑☆うたずきん!国連とも日本政府とも全然関係なく日夜無償で世直しに奔走する──」
「イチイバルのシンフォギア装者、雪音クリスさん。そちらはアキレウスの伴装者、爽々波純さんですよね?」
「……へ……?」
「その声、さっきの……?」
声の主はかぶっていたフードを取り、その素顔を露にする。
その外見は同じ頃に響と対面しているキャロルと瓜二つであった。
彼女との差異は黄緑色の髪色と髪型、そして左目の下の泣きボクロくらいである。
「ボクの名前はエルフナイン。キャロルの錬金術から世界を守るため、皆さんを探していました」
「「……錬金術、だと?」」
クリスと純は顔を見合せ、唐突に飛び出してきた予想だにしなかった単語に驚愕した。
ff
「世界を……壊す?」
「俺が奇跡を殺すと言っているッ!」
八陣の竜巻が響へと向けて放たれた。
空斬り渦巻く真空刃、地面を抉って迫り来る。
身を庇う構えを取る響だが、その風速は人間一人吹き飛ばす事など容易い。
「──ッ!?」
抉れる地面と共に、宙へと巻き上げられる響の身体。
──と、そこへ駆けつけた銀色の影が、響をだき抱える。
竜巻が消え、土煙が晴れた時、先程より更に深く抉れ、クレーターとなった場所に降り立ったのは、RN式生弓矢を纏った翔だった。
「だから言ったろ。怪しいって」
「翔くん……」
響を降ろし、俺は頭上に架かった渡り廊下の手すりに立つ少女を見上げる。
明らかに不振な出で立ちと、今目の前で行使していた謎の現象。
魔法陣のようなものを描き、超常現象を引き起こす。加えてこのあからさまな格好。
まさかとは思うが……魔女か?
常識的に考えれば、まず有り得ない存在だ。
しかし、この世には聖遺物やら異端技術といった、常軌を逸した現象を引き起こす存在が幾つも存在している。
ならば、或いは──という事もあるのではないだらうか?
などと考察しながら、俺はキャロルと名乗った少女の挙動を観察する。
「ほう、伴装者まで現れるとは好都合。だが……何故シンフォギアを纏おうとしない?歌おうとしない」
俺と響を見下ろして……いや、あいつの興味は響の方か?
しかもシンフォギアの事を知っている。
知った上で喧嘩を売りに来た、といった言動だ。
つまりこれは計画犯。敵は複数犯って所だな。
「戦うよりも、世界を壊したい理由を聞かせてよッ!」
「おい響、初対面の相手に動機を喋る正犯が居るわけ──」
響らしい問いかけだ。いつだって戦うよりも、話し合いたいというのが彼女の変わらぬ根幹だ。
相手が危険な輩だからと、先に手を出す事はしない。
話し合い、出来れば戦わずに手を繋ぎ合いたい。それが彼女の願いで、信念なのだ。
しかし、流石に初対面の敵対者に、動機を聞かれて「実はこれこれこうで」と説明してくれる奴なんざ、漫画に出てくる悪党でもそうそういないぞ。
「ッ………………」
キャロルは手すりを飛び降りると、緑の魔法陣でふわりと浮遊して瓦礫の上に着地する。
あの緑色の魔法陣は、どうやら風を操るものらしい。
「理由を言えば受け入れるのか?」
……語ってくれるのかよ。
とは言え語られたところで、それを受け入れる理由はない。
異端技術を行使して、世界を壊すなどと豪語しているのだ。冗談ではないのだろう。
「……わたしは、戦いたくないッ!」
「お前と違い、戦ってでも欲しい真実がオレにはあるッ!」
真実の探求?
話が読めん……どういう事だ……?
俺の困惑を他所に、キャロルは続ける。
その時、耳朶を打った響の言葉が、俺の困惑を遥か彼方へと吹き飛ばし、心を震わせた。
「戦ってでも欲しい真実……?」
「そうだ。お前達にだってあるだろう?だからその歌で月の破壊を食い止めてみせた。その歌でッ!シンフォギアでッ!戦ってみせたッ!」
「違うッ!そうするしかなかっただけで…………そうしたかったわけじゃない」
俯く響。
一見綺麗事に聞こえるその言葉。だが、それは紛れもない、立花響の本音でもあった。
防人としての覚悟を決め、剣として、自らを鍛え続けてきた翼。
歌で世界から争いを無くすため、力を手にしたクリス。
第二種適合者である奏でさえ、全てのノイズを滅するために戦士となる覚悟があった。
だが、立花響という少女は、元を辿れば戦う立場の人間ではない。彼女の根本は、世界を救った英雄でも、人類守護の使命を担う防人でもない。
天羽奏に生命を救われただけの、ただの少女。
何処にでもいる、普通の女の子なのだ。
これまで彼女が戦ってこられたのは、「誰かを助けたい」という思いが、胸の奥で叫んでいたからだ。
それ故に今、響にキャロルと戦うだけの理由はない。
「わたしは戦いたかったんじゃない。シンフォギアで……守りたかったんだッ!」
キャロルを見上げ、響は絞り出すように叫んだ。
しかし、彼女はそれを認めない。
自身の周囲を囲うように、琥珀色の魔法陣を展開する。
「……それでも戦え。お前にできる事をやってみせろッ!」
「人助けの力で、戦うのは嫌だよ……」
ルナアタックの時は、偶然巻き込まれたのが始まりだった。
フロンティア事変の時は、人助けの力で誰かを傷付けようとしていたF.I.S.の装者達が相手だったから、戦うしか無かった。
ガングニールの力を、人助けの為に振るってきた響にとって、その力で自分と戦う事を求めるキャロルの要求は受け入れ難いものだったのだ。
だが……響のその一言が、彼女に火をつけてしまった。
「く……ッ!お前も人助けして殺されるクチなのかッ!!」
キャロルは両掌を空へと掲げ、もう一つ魔法陣を展開する。
足元と頭上、二つの琥珀陣はそれぞれ対極の方向へと輪転し、大地のエネルギーを昂らせていく。
翔の背後で響はただへたり込み、その様子を見上げていた。
後書き
今回一番苦労したのは、響の心情をどう描写するか。
響ってイケメンでヒーローな面が目立ちすぎて、「立花響は普通の女の子である」って部分を無意識の内に忘れてしまっている人って多いんじゃないでしょうか?
キャロルの地雷を踏み抜いたあのシーンでは、それが顕著に出ていたなぁと思いまして、今回ああいう地の文になりました。
戦う理由を持たないと言う響に、翔くんはどう向き合っていくのか。
次回もお楽しみに。
奏さんの誕生日回のネタをプリーズ……←
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