イベリス
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第十話 アルバイトその八
「落ち込まないことよ。告白は自分でよく考えてね」
「自分でなのね」
「誰にけしかけられてもね」
「自分でなのね」
「考えてね。けしかけて自分が都合が悪くなったら逃げる奴もいるから」
「自分がけしかけても」
「お前が決めたこととか言ってね」
そうしてというのだ。
「逃げて昨日まで友達面していて」
「手の平返しとか」
「そんなことする奴もいるから」
「酷い奴ね」
「告白は考えてね、迂闊にしない。そして失恋しても」
振られてもというのだ。
「そうしてもね」
「落ち込まないことね」
「そのことを色々言われても」
告白と失恋、それをというのだ。
「気にしないことよ、落ち込んだら私に言って」
「聞いてくれるの」
「それで絶対に先ちゃんに悪いことしないから」
「そうしてくれるの」
「私だって失恋したことあるのよ」
従妹に笑って話した、その笑いには過去が存在していた。
「それもかなりのダメージだったわ」
「お姉ちゃんも失恋したことあるの」
「そう、それで落ち込んだこともあるから」
「私が失恋してもなの」
「囃したりからかったりしないし」
そうしたことはしないで、というのだ。
「悪くも言わないわ」
「そうしてくれるの」
「お話も聞くから。聞いてから厳しいことを言うかも知れないけれど」
それでもというのだ。
「悪いことはしないから」
「そうしてくれるのね」
「だから安心して。それとね」
「それと?」
「失恋でどれだけ傷付いてもそれを囃す人のことは信じないことよ」
そうすることが大事だとだ、愛は咲に話した。
「人の痛みをわからない人だから、だから咲ちゃんもね」
「私もなの」
「そんなことはしないでね」
「失恋した人を囃すことは」
「ええ。そしてけしかけておいて自分がそのことで言われてもね」
「裏切らないことね」
「どれも人としてやられたら嫌でしょ」
咲に真剣な声で言った。
「先ちゃんにしても」
「自分がやられて嫌なら」
「人にはしないことよ」
「人を傷付けるし」
「しかもこうしたことは一生恨まれるから」
「一生なの」
「ええ、軽い気持ちで言ってもね」
自分では例えそうだとしてもというのだ。
「相手の人は物凄く傷付いて当然怨んで」
「それが一生だから」
「もう絶対にね」
それこそというのだ。
「言わないことよ」
「そうした方がいいのね」
「絶対にね。一生恨まれるのも嫌でしょ」
「誰からもね」
「その時取るに足らない相手と思っていても」
自分を恨む人がというのだ。
「後でどうなるかわからないし自分に言わなくてもね」
「自分に?」
「自分の家族やお友達に言うこともあるのよ」
「自分がそうしたことを」
「それも嫌でしょ」
「確かにね」
咲はまた言葉で頷いて応えた。
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