大学に来る猫
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第二章
バダンが大学まで来たのはこの日だけだった、だがユンファはシャオリンに大学でいつも聞く様になった。
「バダン元気?」
「元気よ、相変わらずね」
「それは何よりね」
「ええ、大学に来た時と同じで甘えん坊よ」
聞いて聞かれてそうやり取りする様になった、そのうえで二人でバダンのことを何かと話す様になった。
そしてシャオリンは短期だがイギリスのチェスター大学に留学した、すると。
大学のキャンバス内を一匹の雌の三毛猫が堂々と闊歩していた、首輪もあったのでシャオリンはすぐに自分を受け持ってくれている教授に尋ねた。
「あの、猫が」
「ああ、ミリーだね」
スーツで決めた恰幅のいい体格とセットした髪の教授が応えた。
「ご近所の飼い猫なんだ」
「大学に遊びに来てるんですか、いつも」
「いや、うちの職員で教授だよ」
「教授ですか」
「名誉のね、いつも大学に来ているから」
それでというのだ。
「もう大学公認でなんだ」
「職員になってですか」
「教授なんだよ」
「そうですか」
「大学の中をパトロールして講義中に教壇に来たりするから」
だからだというのだ。
「今ではだよ」
「大学公認の存在ですね」
「そうだよ、だから安心してね」
「観ていていいですか」
「君もね、面白いだろ」
教授は笑ってこうも言った。
「猫が大学にいても」
「私にしても」
シャオリンは自分のこともここで話した、彼女とバダンのことを。そのうえで教授に対して話した。
「私のケースとは違いますが」
「だから大学に猫がいてもだね」
「別に、です」
「そうなんだね、じゃあね」
「はい、この大学にいる間は」
「ミリーとも仲良くしてくれ給え」
「そうさせてもらいます」
シャオリンは教授に笑顔で応えた、そして。
構内を歩いている時にミリーに会うといつも彼女に挨拶をした。
「こんにちは、ミリー」
「ニャア」
ミリーはシャオリンにいつも鳴いて応えた、シャオリンはその返事を聞いていつも笑顔になった。そうしたことも楽しみつつ留学を楽しみ。
家に帰るとユンファを家に呼んで留学のことを話した、特にミリーのことを。そうしてこう言うのだった。
「大学に猫がいてもね」
「いいのね」
「そう思ったわ、バダンを連れて行くのはあの時だけだけれど」
テーブルの上にいる彼の背中を撫でながら話した。
「大学に猫がいるとね」
「それだけでなのね」
「違うわ、出来れば我が国でもね」
中国でもというのだ。
「それが普通になって欲しいわね」
「そうね、将来はね」
「今は無理でもね」
「ニャア」
ここでバダンは鳴いた、それはまるで二人の会話にその通りと頷いているかの様だった。二人はそんな彼を見て自然と笑顔になった。
大学に来る猫 完
2021・6・24
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