狼犬の幸せな出会い

「一緒にしましょう」
「ああ、じゃあライオットですね」
「あの娘と一緒にいてもらいますね」
「そうしてもらいますね」
「そうしましょう」　
　こうしてだった。
　シンダーはライオットという雌の白い毛のオオカミ犬と一緒になった。すると。
「ワン」
「ワンワン」
　二匹はすぐに打ち解けた、そうしてだった。
　いつも一緒にいて仲良くなった、それはまるでつがいの様で。
　施設からシンダーの話を聞いてアリゾナから来たハイマーも彼とライオットを見て思わずこう言った。
「まさにカップルだな」
「そうですよね」
　獣医が笑顔で応えた。
「どう見ても」
「ああ、捨てられて街を彷徨っていた子がな」
「こうしてここで幸せになれました」
「よかったよ」
「実はライオットも悲しい過去がありまして」
　獣医はシンダーと一緒に、施設の広場の中でそうしている彼女を見つつ話した。
「元は繁殖目的で飼われていました」
「おい、それまずいだろ」
　ハイマーは獣医のその話を聞いて眉を顰めさせた。
「生きものは命でな」
「商品じゃないですね」
「その為に飼うとかな」
「世の中そんな人もいまして」
　獣医も悲しい顔で話した。
「それで、です」
「その為に飼われていてか」
「大きくなり過ぎてこちらに預けられました」
「そうなんだな」
「そうした過去がありました」
「どっちもそうした過去があったんだな」
「ですが」
　それでもとだ、獣医はハイマーに話した。
「今はこうしてです」
「幸せになったんだな」
「はい、私達はこれからも」
「幸せに過ごすんだな」
「そうなります、私達が保証します」
「頼むな、人間も生きものも命なんだ」
　ハイマーはこのことを強い声で言った。
「だからな」
「大事にされないといけないですね」
「ああ、俺もこの立場で頑張っていくしな」
　動物保安官としてというのだ。
「そっちもな」
「はい、頑張っていきます」
「そうしていこうな」
「お互いに」
　笑顔で誓い合った、そうしてシンダーとライオットを見ると。
　二匹は今も楽しく一緒に遊んでいた、そこには幸せが見えた。それぞれの悲しい過去はもう何処にもなかった。


狼犬の幸せな出会い　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２１・６・２０