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盲導犬の抵抗

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第一章

               盲導犬の抵抗
 白い雌のラブラドール=レッドリバーのサリーは盲導犬だ。もう十歳になるがずっと飼い主の沖田剛の目となってきた。
 沖田は目が見えない、その為何かと不自由しているが。
「サリーがいてくれるから」
「その分ですね」
「僕は楽が出来ているよ」
 サングラスをかけた面長の皺の多い顔で介護の人に話していた、黒髪を短くしていて中肉中背である。穏やかな物腰で言うのだった。
「本当に。ただ」
「はい、もうサリーは十歳ですから」
 介護の人は沖田に話した。
「そろそろ」
「引退ですね」
「その時に新しい子が来ます」
 介護の人は沖田に話した。
「そしてサリーは」
「盲導犬が引退した後に入る施設で、ですね」
「余生を過ごします」
「そうですか」
「そこから平均して二年位です」 
「そこで過ごすんですね」
「寿命まで。ずっと働いてくれましたから」
 盲導犬としてというのだ。
「その後は」
「穏やかな余生を過ごしますか」
「そうなります」
「わかりました、サリーその時まで宜しくね」 
 沖田は自分の傍に礼儀正しく座っている彼女に声をかけた。
「それでずっと有り難うね」
「クゥ~~~ン・・・・・・」
「いい子です」
 沖田は目が見えない、だがサリーを確かに感じて介護の人に話した。
「盲動犬はそうなる様に訓練を受けているそうですが」
「それでもですか」
「いつも言うことを聞いてくれて大人しくて優しくて」
 そうした娘だというのだ。
「本当にです」
「いい娘ですか」
「ですから引退したら」
「幸せにですね」
「過ごして欲しいです」
 サリーのことを想って言った、そして。
 引退の日が来ると彼女を施設に送った、施設の入り口に来ると。
 沖田はサリーに優しい声で言った。
「サリー今まで有り難う、後は自分の好きな様に生きるんだ」
「もうここでずっと暮らせるからね」
 介護の人も優しい声でサリーに言った。 
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