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それから 本町絢と水島基は  結末

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6-⑶

 日曜日、僕は休みだったので、駅に向かった。慎二がしつこく聞いてきた

「どこ行くの 今日、晩飯、川村先輩のとこで食うから来いよなぁ どこ行くんだよ」

 でも、バイク貸してくれというと、直ぐに鍵を渡してくれた。慎二は去年の夏に免許を取って、直ぐに、中古の原付を手に入れていたのだ。

 駅の構内を探すと、あった。絢のポスターだ。みどりの窓口の入り口に、あふれおちる滝の前で、透き通った青い水に足を入れて、赤いワンピース姿の絢が天を仰いでいる。かつらなんだろうか、髪の毛が短い。絢の横顔が妖精のように透き通っている。下の方に「海産物は 藤や商店」の文字が書かれていて、絢の姿を邪魔していない。

 観光案内所の前にも貼ってあった。観光協会のポスターに並んで、こちらは「藤や商店」のが2枚並べてあった。お城をバックにお店の着物らしきものを着て、頭巾で微笑んでいる。爽やかだ。確かに、瞬間は絢とは思えない、目元もくっきりして、眉も書いていて、化粧のせいか、美人だ。隣に並んで、桂川音海の観光協会のもあるが、好みかも知れない。どっちが美人かと聞かれても・・。 

 もう1枚も、夕焼けを背に砂浜で、裸足の白いフレァーのワンピース姿が胸を反らすようにして、片足を後ろに振り上げるようにして飛び跳ねている。後ろに風になびく長い髪の毛、ツンと上を向いた乳房、スカートから夕陽に透けて見えるような、細い腰、まあるいお尻から伸びた細い脚。見事なシルエットで幻想的だ。でも、逆光なので絢とはわからない。下の方に、こんどは、小さく「海産物は 藤や商店」と書かれているだけのものだ。衝撃的なポスターなんだろう。

 僕は、感動というか、ショックだった。絢という人間を知らなかったとしても、あのポスターを見て、ひとめぼれしてしまっているかも・・。昨日、僕が、確かに、抱きしめていた娘は妖精のようだったのかも。それに、あのキャンプの時に見た絢の裸像と砂浜でのシルエットが重なって、妙な妄想が湧き上がってきていた。

 ぼくは、絢の顔を見たくなって、お店の方に行ってみた。離れて見ていると、丁度、絢は試食の何かを持って、老夫婦に勧めていた。笑顔が可愛い。何か、ストーカーって、こんなんかなって思って、その場を離れた。

 寮に戻ると、まだ、慎二は居て、洗濯をしていた。

「おぉ そろそろ、出る頃だつたんだ。買い物をしようと思ってな 付き合えよ」

「バイクありがとう 助かったよ」

「うん 絢ちやんにでも会いに行ってたのかー 今日は、焼きそばとコロッケにしようと思ってな もう洗濯終わるから、待ってな」

 先輩のアパートはキャンパスから歩いて10分位だけど、スーパーに寄って行くと20分位かかった。慎二は飲むからとバイクを置いてきている。2階建ての古い建物で、その1階で、小さな炊事場とベッドと勉強机を置いたら、座るスペースも4人が精一杯の部屋だった。窓の外は畑が広がるので、陽当たりは悪くない。

 それでも、慎二は早速焼きそばの準備を始め、先輩2人と僕は、コロッケで飲み始めた。慎二もコロッケをかじりなから、鼻歌交じりに、野菜を切ったりしている。本当に何でも、器用にこなす奴だ。おまけに、その焼きそばも、みんながうまいと言っていたから、不思議だ。

 最初は講義の話だったけど、結局、女の子の話になって、このキャンパスには海洋学部の生徒しかいないので、先輩連中は他の女子大の女の子と合コンをよくしているらしい。うちの海洋にはブスばっかで、かわいいのは居ないと言っていた。

 あっちの学祭なんかに行くと、結構もてはやされ、実際、付き合い始めた先輩もいるらしい。僕と、慎二も興味なくて、適当に相槌をうって、食べて、飲んでいるだけだった。慎二も、興味ないのか・・ 不思議な男だ。

  
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